書は言を尽くさず、

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浅倉秋成 『六人の嘘つきな大学生』

六人の嘘つきな大学生 (角川書店単行本)
ベンチャー企業の新卒採用選考で集まった6人。最終選考としてグループディスカッションの実施を予告されるが、その準備の途上で告げられた前提の変更により、採用選考は妙な風向きを見せていく。
視点人物の語りがメインだが、インタビュー形式のエピソードが数々挿入されていく。心理ゲーム的な緊張感と、大々的な場面転換、推理のどんでん返しの連続等で、なかなかに読者を飽きさせない。エンターテイメントとして秀逸なつくり。
印象的なのは、物語のそこかしこに見られるのはSNS・インターネットという要素。手段・仕組みとしての利用の面はもちろん、人間の多面性という本書のテーマの一つを描くのに有効な手段として活用されている。
いかにも現代的な感性に溢れた作品で、世相を反映した、というのが妥当なのか分からないが、若い頃からSNSと親しんできた世代による、その世代のための小説とも言える気がする。