書は言を尽くさず、

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貫井徳郎 『紙の梟 ハーシュソサエティ』

紙の梟 ハーシュソサエティ (文春e-book)
同一世界設定の雑誌掲載作品をまとめた連作短編集。
人を一人殺めると死刑、という量刑と国民感情の部分についての特殊設定が施された作品。
こうした設定下での様々な犯罪が描かれるが、おそらく紙幅の都合で心理描写が駆け足な作品や、動機や行動理由のリアリティに疑問符を残す作品がある(そうでない作品もある)。ミステリのバラエティーの豊かさを目指したのだろうが、それが阻害しているものがあるというか……。特殊設定があるがゆえに、かえって人間の心理や行動面では丁寧さ、現実味を求めたくなってしまう。
批判的な国民感情の極致という意味で面白みはあるため、この設定で一本集中の長編が読みたかったように思う。