「小説現代」掲載作品の単行本化。
この上ない直球なタイトルで臨む野崎まどの新作は、ライトノベル流のカバーやイラストや文庫サイズも排除した、無骨なハードカバーの形となった。そして残ったのはリーダビリティと骨太なテーマ。題名そのまま、「小説」というものにとらわれた二人を描いた小説である。
序盤から中盤で主人公たちにとっての「小説」を非常に丁寧に描いていく一方で、終盤の展開には一癖ある。が、野崎まど流に芯を食わすというか齧らせた上で、魅せる真相と最終盤の風景には納得させられるものは、何処かある。
初回封入特典は森鴎外を主人公とした掌編。「舞姫」成立過程を描いた作品であるが、本編とのリンクは本編読後に読み解けるものとなる。