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BL小説・風のゆくえには~続々・ニつの円の位置関係〜眼鏡の話

2024年04月09日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 続々・2つの円の位置関係
登場人物

村上哲成(むらかみてつなり)
色白、眼鏡、身長159cm、某電機メーカー子会社勤務。
中学からの同級生・村上享吾と長い長い回り道した末に、ようやく一緒に住むことになったのが2019年夏のこと。

村上享吾(むらかみきょうご)
容姿端麗。人目を引くイケメン。身長178cm。会計事務所を個人経営している。
『風のゆくえには〜二つの円の位置関係』主人公2。


先週、上記二人が主人公の『二つの円の位置関係』3部作を延々と読んでいたら(自分で書いたものを自分で楽しむ地産地消)、今の哲成と享吾にどうしても会いたくなりまして。ということで久しぶりの哲成視点です。

享吾が哲成を見てため息をついている理由は、哲成が眼鏡を外さなくなったせい!と、桜井浩介に力説された哲成君。(2024年1月26日投稿『~眼鏡の話前編・後編』
試しに、眼鏡外してみることにしました。2024年1月のお話です。



【哲成視点】

『今日帰ったら、是非、眼鏡こうやって外してみて。絶対喜ぶよ!』

と、高校の同級生・桜井浩介に自信たっぷりに言われて、その恋人の渋谷慶(こいつとは小中高の同級生だ)にも、『やるだけやってみろよ?』と、言われたため、

(…………やってみるか)

 やるのはタダだし。何も損しないし。違っても桜井に文句言うだけだし。と、色々と頭に言い訳を並べながら帰宅した。

「ただいまー」
「おかえり」

 今日も仕事だった享吾は、遅い夕飯の最中だった。ダイニングテーブルで、タブレットを見ながら、駅前スーパーの値引きシールがついた弁当を食べている。

「渋谷と桜井、元気だったか?」
「うん。あいかわらずだった」

 カバンを置いて、手を洗って……

(いつも通りいつも通り……)

 なんとなく緊張してしまっているので、いつも通り、を心掛けながら、ソファに座る。
 チラリと見ると、享吾は仕事中なのか、タブレットから目を離す様子がないので、ちょっとホッとする。

(……で? スマホでもみるか)

 いつもしているように、ソファの肘掛けに頭を預けて寝っころがり、スマホを取り出した。
 遠近眼鏡のため、顔の前まで持ってくるとぼやける。腹にスマホを立てて置くとちょうどピントが合う。この体勢、腕が疲れなくて気に入ってるんだけど……

(で、眼鏡を外す、と)

 桜井の言っていた通りに、頭まで眼鏡を押しあげる。途端に視界がぼやけて何も見えなくなったので、スマホを顔の前まで持ってきた。

(こうすると良くみえるんだよな〜。老眼って不思議だよな〜)

 老眼になる前は、眼鏡をかけたままでも普通に見えていたのに、なんでこうなるんだろう?

(…………なんてことは置いておいて)

 これで享吾が喜ぶって?

 ふいっと、ダイニングテーブルにいる享吾を見たけれど……

 …………。

(しまった。なんも見えねー……)

 裸眼0.03なので、享吾の表情がまったく見えない……。というか、たぶん、タブレット見てて、オレが眼鏡外したことに気がついていないと思う。

(これじゃ、喜んでんだか何だかなんも分かんねーな)

 ま、いっか。と思って、スマホをみると、妹の梨華からLINEが入っていることに気がついた。

(えーと? 今度の日曜日、花梨を預かれって?)

 妹はうちを託児所扱いしている……。姪の花梨はもう小学生だからそんなに手はかからないけれど……。

(日曜……、キョウ、空いてるかな……)

 花梨は享吾にも懐いているので、三人で出かけることが多いのだ。そうすると、なぜか享吾が父親に間違えられる率が高い。

(キョウが父親だとしたら、オレは?)

 母親? なんてな……

(でも、同性カップルで子ども育ててる人たちもいるわけで……)

 そうしたら……

(二人とも父親ってことになるのかな?)

 いや、父親母親って括りもナンセンスだな。保護者ってことだな。

(実際、オレは梨華の保護者として……、ん?)

 ふ、と視線を感じて、スマホからダイニングに目線をうつす。と……

(…………)

 享吾がこっちを見てる……のは分かるけど、表情までは分からない。でも、なんか……ジッと見てる……よな。

「……何?」
「…………いや」

 立ち上がり、弁当の容器を持った享吾。食べ終わったらしい。

 キッチンに向かった享吾の後ろ姿に問いかける。

「なー、日曜日、花梨を預かれって梨華が言ってきてるんだけど、いいかー?」
「もちろん」

 カウンターキッチンの向こうから、声が聞こえてくる。

こないだ約束したケーキの食べ放題に行こう」
「おー、いいな」

 先日花梨が行きたいと言っていたのだ。中年男二人だとちょっと敷居が高いケーキの食べ放題も、子ども連れだと行きやすくていい。享吾も花梨と出かけることを楽しんでくれていることが嬉しい。

「じゃー、そう言っとくー」

 梨華あてに、了解の旨と、ケーキの食べ放題に連れていくことを返信し、腕を下ろしたところで、

「?」

 真横に享吾が立っていることに気がついた。ジッとこちらを見下ろしている。

「どうし……、っ」

 言いかけて、止めた。目尻のあたりに口唇が落ちてきたからだ。

「キョウ?」
「……哲成」

 今度は、おでこにキス。頭の上にのせていた眼鏡を勝手に取ってテーブルに置き、頭を撫でてきた。

「…………なんだよ?」

 享吾は膝立ちをしているので、眼鏡をしていなくても表情が分かる距離に顔がある。これは……

(嬉しそう……)

 普段はポーカーフェイスだが、時々こうして崩れる。これは……嬉しいの顔だ。

「いや……」

 享吾は『愛おしい』のこもった瞳で微笑むと、

「やっぱり可愛いな、と思って」
「…………え。何が」

 お、これは桜井説正解で、眼鏡してないことが可愛いってことか?
 と、思いつつ聞いてみると、享吾は意外なことを言った。

「哲成、眼鏡しないでスマホ見てるとき、ちょっと口尖らせるんだよな。それが可愛い」
「え」

 意識してなかった……

「画面を近づけるせいかもな。眼鏡の時はならないから」
「えー……知らなかった……」

 すーすー、と髪を撫でられるのが気持ちよくて思わず目をつむると、今度は口唇にキスがおりてきた。

「遠近にしてから、眼鏡外さなくなって、ちょっと残念だったから……」
「嬉しい?」

 答えの代わりに、もう一度キスされる。ふつふつと胸のあたりが温かくなってくる。

「じゃあ、時々は眼鏡外そうかな?」
「是非」
「…………ん」

 3度目のキスが深いものになってきたので、スマホを置いて、その大きな背中に手を回す。

「……キョウ」

 大好きだよ、の気持ちをこめて腕に力を入れると、

 愛してるよ

と、耳元で囁かれて、腰が砕けそうになる。

(あー、あとで二人に報告しないとだ……)

 快楽の波に飲まれる前に、チラリとそんなことを思った。

 若干の違いはあるものの、概ね桜井の説は正解だ。すげー。



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お読みくださりありがとうございました!
えー、ラブラブや〜ん💕と嬉しくなっちゃいました✨
そんな感じで。哲成と享吾、幸せに暮らしてて安心しました✨

読みに来てくださった方、ランキングクリックしてくださった方、本当に本当にありがとうございます!また今度!!


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「風のゆくえには」シリーズ目次1(1989年~2014年) → こちら
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コメント (2)
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