不適合者しとしと。 | け?

け?

「こんなに馬鹿だと思わなかったからさ」

 

 

「あの担当さんのお名前、何て言いましたっけ?」

 
(それ俺に聞いちゃうんだ)
た、たかはしさん?
 
「女性じゃなくて男性の方」

(え? 当った?)
すみません。俺、人の名前が覚えられないんです。
名刺戴いても3分で忘れちゃうんです。
 
「え?」
 
すみません。ここ(左の人差し指で頭をコツコツ)のどこかが壊れちゃってるみたいで。あ、いえ、冗談ではなくてほんとに。
 
「Kenさんもなんだ?」
 
(も?)
 
「あたしが良くお世話になるデザイナーさんもそうなんですよ」
「まったく覚えられない」
 
はぁ。(類似例を話されてもねぇ)
 
「その人、自分は発達障害だから。て言ってました。社会不適合者だ。て」
 
あー・・
うー・・
 
「だからフリーにしかなれないんだ。他の事は出来ないんだ。て」
 
そうかな?
 
「?」
 
その人のことは良く解ります。苦労してらっしゃるんだろうな。生き難いんだろうなって。
でもね、
世の中の全ての人は、何らかの才能を持ってるはずなんですよ。それに気付かないだけで。
殆どの人が気付かないまま死んでしまうんだけど。
だから俺にしたって、ほんとはこの仕事じゃないのかも知れない。刀鍛冶だったかも知れないし、世界屈指のパティシエなのかも。トラクターの営業やったら日本一だったかも。
だから「この仕事しか」てのは違うかも知れないですよね。

「Kenさんも?」

発達で学習であすぺで、サヴァンの気もあるみたいです。

「クリエーターって多いですよね」

まぁ、
向いてるちゃあ、向いてるんでしょうね。


雨がしとしとしと。
撮影はまだ始まらない。