脳を外から磁気で直接刺激する方法(TMS)

投稿者: | 2019年10月26日

 

脳を刺激するには、、

これ、何だろう?

と思ったら、ただ見るだけではなく、つついてみたり刺激しますね。

脳を調べるときも、刺激する方法が有効です。

脳を刺激するなんて難しそうですが、意外と簡単な手があります。

脳に情報を入れてあげればよいのです。

外界の情報は、目・耳・鼻・舌・皮膚などの感覚器で受け取られると、電気信号に変えられます。

脳には電気信号が流れていると聞いたことがありませんか?

電気信号といっても、実際には電線の中を電子が流れるような感じではありません。

電気信号の正体は、ニューロンの活性化です。

ニューロンの活性化は、ニューロン(神経細胞)に Na(ナトリウム)イオンが流れ込むということです。

ですから、逆に、ニューロンにNaイオンを流し込めたら、ニューロンを活性化できることになります。

 

脳を微弱電流で直接刺激したペンフィールド

昔(1930年代)、カナダの神経外科医ワイルダー・ペンフィールドは、てんかんの治療の際に、頭蓋骨を開けて脳に微弱電流を流すことで刺激を与えて脳の機能を調べました。

 
なぜ、電流を流すと脳が刺激されるのか。

先ほど、ニューロン(神経細胞)に Na(ナトリウム)イオンが流れ込むと書きました。

ニューロンにはイオンが流れ込むためのチャネルという穴がたくさん設置されています。

チャネルにもいろいろありますが、大抵、普段は閉じていて、必要なときに開いてイオンを通します。

電位の変化を感じると開くようになっているチャネルが連鎖的に反応することで、ニューロン内にNaイオンが流れ込んでニューロンが活性化されます。

接続するニューロンもどんどん活性化させられていって、情報処理が進められます。

なので、ニューロンの近くに微弱電流を流すと、チャネルの近くで電位の変化が起きて、チャネルが開いてNaイオンが流れ込んで、結果的にニューロンが活性化するのです。

 
脳は機能局在といって、脳領域によって情報処理の役割分担をしています。

ここは、手を動かすところ、

そこは、見た情報を処理するところ、

あそこは、音楽を覚えておくところ、

といった具合に。

ペンフィールドはいろいろな脳領域に微弱電流を流して、その脳領域の機能を調べました。

現在、このような骨を開ける実験は、ヒトでは基本的に許されていません。

ワイルダー・ペンフィールド(Wikipedia)

 

脳を磁気で刺激する、経頭蓋磁気刺激(TMS)

近年、頭蓋骨を開けずに、頭皮上から脳に刺激を与えることもできるようになりました。

その一つが、磁気を使う、経頭蓋磁気刺激(TMS、Transcranial Magnetic Stimulation)。

経頭蓋磁気刺激法

磁気というのは、磁石から磁力線が出ているという、アレです。

物理現象に電磁誘導というのがあって、磁気を時間的に変化させると電流が流れます。

磁気を使えば離れたところに電流を流すことができます。

つまり、脳に電流を流すのとほぼ同じことができるのです。

例えば、脳の一次運動野の手領域にTMSで磁気刺激をすると、手がピクッと動きます。

TMSでよく使われるのは、8の字コイルで、直径7cmの輪が2個くっついて8の字に見える装置です。

輪の中身は「コイル」と名が付いていることかも分かるように、電線の束。

コイルに流す電流を時間的に変化させることで磁場を発生させます。

ペンフィールドがやったような、頭蓋骨を開けて直接脳を電気で刺激するのに比べると、刺激される脳領域はずっと広くはなりますが、頭蓋骨を開けずにできるのは大きな利点です。

うつ病の治療として、TMSを使って前頭葉を刺激する方法も試みられています。

TMSの利用は今後ますます増えてくると思います。

 

脳科学で生活にうるおいを!

では、また!

 

(了)

 

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