偉人たちがよく散歩していたワケ

投稿者: | 2021年4月2日

 

「歩く」は半自動的な運動

「歩く」という行動の興味深い一面は、半自動的な運動であることです。

半自動的な運動というのは、意識しなくてもできるし、意識的に変えることもできる運動のこと。

心臓の拍動や、胃や腸の消化運動などは、自律神経が支配していて意識的に変えられないので、半自動的とは言えません。

半自動的な運動には、食事のときにモグモグと噛む咀嚼(そしゃく)や、息を吸ったり吐いたりする呼吸があります。

会話をしながら無意識にモグモグできますが、モグモグのリズムを意図的に変えることもできます。

呼吸もそうですね。

「歩く」という行動も、いちいち「右足出して、左足出して」なんて考えたりしません。

歩く動作を分解して、個々の動作を意識して考えながら歩こうとするとスピードがかなり遅くなってしまいますね。

半自動的であるからこそ、歩くことに意識を向けなくても歩けますし、意識的に急いだり遅くしたりもできるわけです。

 

「同じルート」の散歩は思考を深める

歴史的な偉人に、散歩を習慣としていた人が少なくありません。

ベートーヴェン、アインシュタイン、スティーブ・ジョブズ、などなど。

偉人たちの散歩は、単に気分転換という側面もあったかとは思いますが、考えるための散歩という意味合いが強かったのではないでしょうか。

偉人の散歩を考える際のキーポイントは、「同じルート」。

哲学者のカントに至っては、毎日、同じ時刻、同じルートを散歩するという徹底ぶり。

町の人はカントが散歩しているのを見て、「あ、◯時だ」とわかったのだとか。

知らないルートだと、ルート選択やいろいろなモノに意識を向けないといけませんし、意識が向いてしまいます。

歩くこと自体は半自動的ですが、よく知ったルートならルート自体もほぼ無意識に選べてしまいます。

いつものルートから外れた所に寄ろうと思っていても、気付いたらいつものルートで寄ることを忘れてしまった。

そんなこと、ありませんか?

用事を忘れてボーッとしていても無事に着ける。

いつものルートをほぼ無意識に選べている証拠と言えるでしょう。

「同じルート」の散歩によって、ルートを無意識に選べるおかげで、考えることに集中できて思考を深められるのです。

 

散歩は座って考えるより集中しやすい

考えることに集中するなら、歩かずに座ったらよいのでは?

確かに、それもありえます。

人によって集中しやすい環境も違うでしょう。

では、座るとして、どこに座りますか?

職場や家だと周りに自分の意識が染み付いた邪魔モノがたくさんありますね。

そちらに意識が向いて気が散りやすく、意外と集中しにくいものです。

逆に、まったく邪魔がない状況を考えてみましょう。

それは感覚刺激がまったくない状況です。

ヒトはそんな状況に置かれると、精神的におかしくなってしまうことがわかっています。

ヒトには適度な刺激が必要なのですね。

散歩すると、そこそこの刺激で思考に集中しやすくなります。

 

煮つまりを適度に回避してくれる

思考は集中を研ぎすませたらよいというものでもありません。

考えに考えを重ねていると、煮つまってしまうのもよくあること。

偉人たちの散歩は、単に気分転換という側面もあったかかもしれない、と書きました。

煮つまった思考から抜け出すには気分転換が効果的です。

日の光や風を体に受け、靴の底から力も感じます。

何か匂ってくることもあるでしょう。

そんなそこそこの刺激があるおかげで煮つまった思考から抜け出しやすくなります。

 

いつものルートでの散歩が考えるのによい理由のまとめ

つまり、いつものルートの散歩は以下の4点から考えるのによい環境であると言えます。

 1) 「歩き」は半自動的なので思考に集中できる

 2) 同じルートの散歩だと思考に集中できる

 3) 散歩は自分の意識が染み付いた邪魔モノがなくて思考に集中できる

 4) 散歩はそこそこの刺激があるので煮つまった考えから抜け出しやすい

 

新たなアイデアが欲しいときは違うルートで散歩する

思考にもいろいろあります。

新たなアイデアが欲しいときは、予期しないたくさんの刺激があった方がよいでしょう。

そんなときは、同じルートではなく、知らないところを散歩するとよいです。

予期しない刺激をたくさん受けられて、脳内でたくさんのネットワークが活性化します。

そして、ネットワーク同士のコネクションも随時切り替わっていきます。

その結果として、新たなアイデアが湧いてくることでしょう。

 
無意識に歩ける心地よいペースで散歩してみませんか。

 
脳科学で生活にうるおいを!

では、また!

 

(了)

 

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