<馬車道の不思議少年・翔:第3話>7 | 馬車道物語

<馬車道の不思議少年・翔:第3話>7

進はごく自然に真理の両肩に手を当て、
さらに彼女を両手で引き寄せた。
形の上では風船を下ろせたことの祝福だったが、
実際にはそれ以上に絆のようなものが生まれ始めていた。

洋子が店から戻って二人の予期せぬ光景を見てしまった。
「あらあら、お早いこと。私も役目を果たせてうれしい。」
洋子の声に二人は我に返り、すぐ離れた。

「それじゃ私はここでさよならします。進、真理をよろしくね。」
二人は喉元まで不思議な少年の話がでていたが、
洋子に説明する難しさも感じていた。
やはり話しはしないほうがいい、それが暗黙の了解になった。
二人は洋子に深々と頭を下げ、
JR関内駅に足早に向かう彼女を見送った。

完