分野:電気回路

フェーザ表示のおさらい

前回はフェーザ表示について説明しました。
フェーザ表示とは、三角関数で表される扱いにくい交流の電圧や電流を、計算が容易で扱いやすい複素数で表す方法でした。
その中で、直流と同様に扱えるようにするために、最大値ではなくて実効値を用いる、という話をしました。

今回の記事では「直流と同様に扱えるようにする」とはどういう意味か?ということについて、詳細に解説したいと思います。


抵抗での消費電力

図A
上の図のように、抵抗値Rの抵抗に、i = Im sinωtの交流電流が流れているとき、抵抗で消費される瞬時の電力pは、
図1
と表されますが、これは時間的に変動しますので、その平均値消費電力Pとなり、
図2
となります。

この第1項第2項について、グラフにするとそれぞれ下の図のようになります。
図B
図のピンクの部分各項の積分の結果を表しているので、各項の値はそれをTで割った値となります。
これを計算すると、第1項RIm^2/2第2項0となることが分かります。
したがって、
図3
となります。

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実効値を導入しよう!      


一方、同じ抵抗に直流電流I0が流れている場合の消費電力P0は、
図4
となります。

つまり、交流と直流で、消費電力を表す式の形が異なってしまい、交流には余計な「1/2」がついてきます。
そうすると、交流の場合と直流の場合で、異なる式を覚えねばならず、労力が2倍必要となってしまいます。

これはちょっと都合が悪いですね。

なんとかして、直流と交流の消費電力を表す式を同じような形に統一できないでしょうか?

ここで、I = Im/√2という、電流を表す新たなパラメータを導入しましょう。
そうすれば、交流における消費電力を表す式は、
図5
となって、余計な「1/2」が消え、直流の場合と同様の式の形で消費電力を表すことができるようになります!

この最大値を√2で割ったIを実効値といいます。

√2で割るのは「正弦波」の場合だけ!       


電圧についても、詳細はここでは省略しますが、全く同じ考え方に基づいて計算を進めると、やはり交流の場合には、余計な「1/2」が登場します。
したがって、電圧についても、実効値をE = Em/√2とすることで、余計な「1/2」を消せます
つまり、電圧も電流も「実効値は最大値を√2で割る」と覚えておけば、あとは直流と同様に計算できるようになります!


しかし、注意すべきことがあります。
それは、√2で割って実効値が求められるのは、「正弦波」の場合に限る、ということです。


交流と言えば、正弦波以外にも、例えば三角波のこぎり波矩形波など、様々な種類が存在します。
それらの実効値は、それぞれ基本に立ち返って、
図6
の式を計算して求める必要があります。

実効値は、EやIなどと表すほかにも、ErmsIrmsなどと書かれる場合もあります。
このrmsとはroot-mean-squareの略で、「2乗(square)したものの平均値(mean)の平方根(root)」という意味です。

これさえ覚えておけば、定義式は暗記する必要ありませんね!

まとめ

「交流回路でも、直流回路と同じように電力の計算をしたい!」というモチベーションから、実効値という概念が生まれました。
最大値の代わりに実効値を用いることによって、直流の場合と同様の式で、電力を計算できる!

・・・はずだったのですが。


実は、それだけではまだ足りないのです。
次回はそのあたりについて、詳しく解説します。


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