ワタクシ、今、大分悩んどりますねん。どこまでのネタバレするか、めっちゃ悩んでますねん。
かなり突っ込んで「面白くなかった」って書こうと思うんですが、じゃあ、なんで面白くなかってんって理由書かないとアカンでっしゃろ。
でも、本来、何の前知識もない方がええんで、読むかもなあって人は以下の文章は読まない方がよろしいで。出版社からの煽りも、ネタバレの一種ですもん。
こんな感じ。
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夕木春央による小説「方舟」が、全国のミステリー通と書店員が選んだ「週刊文春ミステリーベスト10」2022国内部門と、ミステリー感度の高い読者の投票で決定した「MRC大賞2022」で第1位を獲得した。
さらに、本作は「2023本格ミステリ・ベスト10」国内ランキング(原書房)第2位、「このミステリーがすごい! 2023年版」国内編(宝島社)第4位、「ミステリが読みたい!2023年版」国内編(「ミステリマガジン2023年1月号」)第6位、「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2022」小説部門で第7位と、ミステリー賞に続々ランクインしている。(こちら)
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という偉大な作品ですねん。だからまあ、ワタクシがこんな場末のブログでいくら管巻いても なんの影響もおまへんわな。
けどまあ、ミステリーの感想の基本として、できるだけネタバレは控えたいとは思っております。
出版社からの宣伝文句はこうなっとります。
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極限状況での謎解きを楽しんだ読者に驚きの〈真相〉が襲いかかる。
友人と従兄と山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った家族と地下建築「方舟」で夜を過ごすことになった。翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれ、水が流入しはじめた。
いずれ「方舟」は水没する。そんな矢先に殺人が起こった。だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。タイムリミットまでおよそ1週間。
生贄には、その犯人がなるべきだ。――犯人以外の全員が、そう思った。 (講談社BOOK倶楽部)
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ワタクシ、共感オバケですねん。もうすぐに誰にでも共感しますねん。だから、凄惨な事件を聞きますと、もう、辛くて辛くて。
死にたくならんように、ご飯いっぱい食べないとあきませんねん。
そんなワタクシが、物語に、特にミステリー、推理小説に求めるものって、第一には犯人の動機への共感ですねん。やっぱりそれが納得できんかったら、こうしたら良かったやんって思いがずっと残りますねん。
その思いは、めちゃくちゃ面白かった「爆弾」でもやっぱり残りましたわ。
この小説は、もう舞台装置から納得できへんもんでしたわ。アガサ・クリスティー大先生の名作「そして誰もいなくなった」的に、閉じ込められた空間に残された集団が、その中の誰かに殺されていく話なんですけどな。
一個だけ、ラストやないんで、堪忍して、やけど、密室に閉じ込められて、タイムリミットがあって、その中の一人が犠牲になれば、助かる、という状況ですねん。
で、その集団の中に、3人家族が紛れてますねん。
あんね。しかも一人は15歳の子供ですねん。この作者、子供おらんのでっしゃろか?
ワタクシなら、率先して残りますわ。子供のためなら、死ねますわ。親って、そんなもんやおませんの?
しかも、一刻も早い決断が、結局、自分の命を左右すると言う状況ですねん。迷いまっか?
一切迷いませんわ。今なら、ワタクシ、想像の孫でも、守るためなら死ねますわ。あ、これは言い過ぎか。リアルでの孫はやっぱり見たいですもんね。うむ~。
だから、この設定の時点で、もうあきませんわ。心醒めましたわ。
そもそもがこのミステリー、アンフェアミステリー言いますの?
実際には起こり得ないような設定での話で、マンガでは「金田一少年の事件簿」みたいなもんですけど、こっちもまあ、全くストーリーは面白いと思ったことはありませんけど、登場人物の関わりとかは面白かったですけどな。
でもまあ、やっぱり犯人は知りたかったし、というか、推理の答え合わせしたかったしで、途中で放り投げるほどではなくて、最後まで付き合う程度には興味ありましたわ。
で、ワタクシ、犯人はすぐにわかりましたわ。ミステリーの基本ですわ。一番怪しくない人が犯人なんですわ。ただ、一応探偵役がおりまして、その探偵役と友人が犯人である可能性が高いんで、この二人はどうなんか、慎重に吟味したら、あとは簡単でしたわ。
そんでですな、これを書くと、あかんのですけど、ドンデン返しがあるって書いたら、ああ、どんでん返しがあるねんなって思って映画も小説も読みますやん。
で、残念ながら、その最後の展開はやっぱり驚きましたわ。でも、探偵役が優秀な人間である、という設定なら、絶対にもう一回ひっくり返るって思ってましたけど、それはなかったですわ。
興味沸いたでしょ?
それと、この作者が人間分かってない、単に理詰めで人間は動かんねんってことがまったく理解できてないって思ったんは、このラストでもそうですねん。
まず、残す一人は、犯人で、その犯人を残して、頼んで残り全員を助けてもらう、という設定ですけど、人を殺すような人が、わざわざ自分が犠牲になって、残ってる人を助けると思いますか? ワタクシが犯人なら、絶対に全員道連れにしようと思いますわ。
犠牲になって人を助けるような人は、最初から人殺しませんわ。
そういう意味では、最初からこの話、破綻してますねん。
さらに言うなら、ワタクシ個人的には、そんなに命大事か? 役に立てて死ねるんなら、すぐ死にたいわ。それなら神様も許してくれそうやん。嫁さんにも会えるし。
ま、かように私、すぐ自分に置き換えますねん。
それで、ですよ。ワタクシなら、いったん好きになったら、それがどんな悪人であっても、一緒におりますわ。なぜなら、アホやから。もちろん、自分に刃向けてきたら別ですけど、それが無い限り、辞めろとか考え直せとか説得はするでしょうけど、気持ちが離れることはあり地ませんわ。
まぁ確かにこの小説の中では、時間の積み重ねはありませんでしたけど。でも、もし2人で残るとなれば、ごにょごにょごにょ。
ということで、人の気持ちを、時に理不尽なことをしてしまう気持ち、それはまあ恋愛でもええんですが、それが全く分らない、単純に作者に都合のいい舞台装置で、作者に都合のいい理詰めで進む、数学的には正しいけど、的な話でしたな。
そういう意味で、ワタクシとはかなり遠い距離にあるんですなあ。
基本的にはやられたラストも、なんとなく、なにかありそう、それはつまり回収していない伏線があったので、この作者は、完璧な構成目指すやろから、数学的に全部解決するやろな、とは思ってました。きっちりと作るタイプの物語は、こうしたことからも、ストーリーばれますわ。
面白いのは、恐いのは、背も低い、全然イケメンちゃう、金もない、でも好きになる、人間の愚かさやと思いますわ。好きにさせる魔力ですわ。ワタクシ、すごい魔力の持ち主やったなあって今更思いますねん。
同じように、伏線も、回収しない方がいいってこともあるんやないやろか。ある意味どんでん返しより読者騙せる気がしますな。読者はもやもやしますが。
時間の無駄や、と、そこまでは思いませんが、
人に勧める時は、読み終わったら、一緒に文句言おうって言いますわ。
さ、一緒に文句言いましょ~。
文句いうのが好きって、人間歪んでんで。しかも、結構ネタバレもしてんで。