ポワロ探偵といえば、デヴィッド・スーシェさんの映じるポワロ探偵が頭にこびりついているので、めっちゃ違和感あるけど、2作目ということもありかなり見る方も慣れてきた。
1978年の映画版も確かに見ているはずだし、原作なんか絶対に読んでいるはずだけど、もう年なので、あんまり覚えていない。
覚えているのは、ミステリーの基本「一番怪しくない人が犯人」という鉄則を、たたき込まれたのは、たしかこの作品だったんじゃなかったかなあ、ということかしら。
まあ、もちろん基本的に探偵は除くし、主人公というか、語り手も除く、のだが、それすら絶対ではないところがオソロシイ。
で、もともとの本のタイトルは「ナイルに死す」という、めっちゃかっこいいのに、なんで、いつから「ナイル殺人事件」という、愛想のないタイトルになったのかな。
まあ1978年の映画がすでにそのタイトルだけど。
ワタクシのかろうじてなんとなく、頼りない記憶によると、原作、そして映画も? かなりクールなイメージだったような気がするけど、この2022年の作品は、良くいうとドラマチック、まあ、煽情的な感じで、見るのに気合が要る。
そもそもオリエント急行殺人事件を書いたのは、去年の8月で、この作品も同時期に録画していたはずなのに、見たのは、昨日である。というか、途中まで見ては断念、を繰り返していて、ようやく見たのでありました。
殺人事件、ミステリーものは、共犯者が居ると、とたんに難しくなるイメージがあるけど、って、あっ、今めっちゃネタバレしてもたっっ。笑
い、いや、だれもこの作品のことだって言ってないから。
この映画の中でとてもいい言葉だと思ったのは、
聖書に書いてある「愛」の言葉なんて大嘘で、愛は偏狭で冷たくて狡賢くて最悪で醜悪で見にくくて汚くて裏切り者で死んでまえってセリフ。(そんなセリフはない)
そして、愛する人のために、人は殺人を犯すって言葉かなあ。
ワタクシは、人畜無害の平和主義者で、争いごとは大嫌いで、できるだけ穏便に済ませたい、少々の鬱憤はこうしてブログで晴らすのが関の山、という小心者ですが、好きな人に、あの人いや~ん、消して~、とか言われたら、はいはいって言うこと聞きそう。
せめてもの対応策として、そういう人は好きにならないと決めていて、今までは無事に過ごせてきたんだけど、いつどうなるか分からず、そして、実は人って、人のため、という大義名分があれば、ある程度のことはやってしまうのではないか、と思ったりしてます。
戦争中の日本も、そういう雰囲気だったんじゃないのかなあ、と思ったりしますね。恋愛とは全く違うけど、だからこそ、と思ったりもします。
アメリカが、天皇制を残した理由も、そのあたりにあったんじゃないかな。もし廃止するなんてことになったら、それこそ、一億総決起になってたんじゃって、自分が生まれる前のことを思ったりします。
閑話休題。
ポワロ探偵といえば、デヴィッド・スーシェさん、というこれはもう世界的な定番だと思うんだけど、そこに切り込んだ、ケネス・ブラナーさんのポワロ探偵は、よりドラマチックで、より「愛」を求める、まあ、現代と実に親和性の高いポワロさんを見事に演じたと思います。
とにかく、上流階級の人たちの話だし、出てくる人、みんな美男美女だしで、そこは見応えがありました。
やばた人間お金に狂うんだなっていうのも良くわかります。ワタクシは、お金がないからこそ、テキトーなことを言ってますが、お金が絡むと、いろいろと大変ですよね。
最後に、ちょっと真面目に感想書いて終わります。
本作は原作を現代的にアレンジし、特に人種やジェンダーの多様性を意識したキャスティングやそさに引きずられて、良くいえば物語の現代化がされ、むしろそこに現代の複雑さや困難さを見る思いでした。
物語自体も、これは原作も若干そんな感じがあんたかと思いますし、ミステリーの避けてはと、通れない部分なのですが、前半、テンポが緩慢な場面が多く、物語の展開に冗長さを感じる部分がありました。特にキャラクター紹介に時間をかけすぎており、ミステリーの核心に入るまでの間に緊張感がやや失われてしまいます。
ワタクシが何度も途中で挫折したのも致し方ないところでありましょう。笑
むしろ、この辺りに手を入れることが出来れば、古典の現代訳、映像化するときの大きなヒントになったかと思います。
アガサ・クリスティの作品らしい複雑な人間関係と意外な犯人像は相変わらず素晴らしく、ワシクがミステリ好きになった原点でもあります。
クライマックスの種明かしは見応えがあります。現代的といえばそうなんですが、しかし、前作「オリエント急行殺人事件」に引き続き、派手な演出に頼りすぎた感があり、繊細な心理描写や伏線の巧妙さがやや希薄に感じられました。これが現代的というものかもしれませんし、原作に触れているからこその感想かもしれません。
2022年版「ナイル殺人事件」は、映像美と豪華キャストを楽しむには十分なエンターテインメントですが、ミステリーとしての緊張感や原作の持つ独特の深み、そして、ドラマチックに盛り上がるほど感じる、一種の静穏さ、には一歩及ばない印象を受けました。
とはいえ、逆にアガサ・クリスティ原作にもの足りず、派手な演出や華やかなビジュアルを堪能したい方にはおすすめですね。
真面目に書くとそれなりなんだけど、生き生きしてるのは、テキトーな方だよな~。