10月3日(月)
あなたがケガをした。
その報せをわたしは仕事中に聞いた。
あなたの母から何度も着信が残っていたので、これは何かあったなと思いながらかけ直すと、コーフン気味の声で
「ユウちゃんがケガした! 血が止まらんのよ! どうすればいい!?」
とわめいている。
訊くと、散歩中に転び、ちょうど眉間のあたりをぶつけ、出血している、ということだった。(後から知ったのだが、赤ちゃんは皮膚が薄いから、出血しやすいらしい)
わたしは、とりあえず絆創膏でも何でもいいから貼って病院に行くように指示した。上司に報告すると、心配だから早退してようすを見てきて良いよ、といわれたので、すぐに病院に向かった。
あなたは当初、小児科に診てもらった。
が、脳に損傷があるかもしれないから、ということで脳神経外科に回された。脳神経外科の待合室であなたたちと合流。
あなたは髪の毛の付け根から眉毛のあたりまでがスッポリと隠れる巨大なガーゼを貼られていた。
普段見慣れないあなたの姿を目の当たりにし、さすがにショックを受ける。
脳神経外科での診察はというと、とくに異常はなかった。
縫合するよりも自然治癒で処置した方がいい、といわれ傷をテープで塞ぐ。テープを貼られているあいだ、診察室のベッドの上で寝っ転がったあなたは大泣き。
あふれ出た涙が、目の周りに溜まっていく。水溜まりのようだった。
翌日、形成外科で一度診てもらった方がよい、とのアドバイスを受け、あなたの母はあなたを連れて、ふたたび通院。
わたしが仕事をしていたら、またもやあなたの母から着信があった。
病院での処置が終わり、車で帰宅していたところ、
「たいへん! ユウちゃんが貼ってたテープをむしり取って、傷を指でゴシゴシ擦ってるー!」
と、これまた悲痛な叫びが。
わたしは「Uターンして、もう一度、病院へ行きな!」と指示。
すると次の瞬間、
「きゃー! やめてー! 食べないでー!」
とホラーショーめいたあなたの母の叫び声。
どうやらあなたがテープを食べてしまったらしい。
さすが赤ちゃん、と思ったのだった。