2022年04月12日

終わりの見えないデスマッチC(19)

「これだ、これだよ、智哉。同じ。」
男は自分で自分の股間を揉んでいる。さっきの冷静さはどこにいったのか、口を半開きにして、硬骨な表情でこっちを見ている。
「オマエ、俺とはもう関係ねーんだ。」
智哉は、片方の手で二つの玉を持ったまま、もう一方の拳で、ガンガン殴りだした。
「いつまでまとわりつくんだ、迷惑なんだよ。」
「ギヤァァァ!!!」
いつも出している声より2オクターブくらい甲高い声で叫んだ。鬼のような表情で弘一を睨み付け、握りしめた拳を怒りにまかせて鶏卵のように大きな玉に容赦なくぶつけていく。
「ギャァァン、ギャァワァン!!!」
一回一回がコンクリートの塊で殴られているかのように、全身に響くような痛みが走り抜ける。まるで神経が剥き出しになって、痛覚という痛覚が暴れているような、それこそ目が飛び出るのではないかという痛みだ。
血走った目をして、智哉がドスの利いた声で言う。
「次来たら、殺すぞ。」
「はぅあ、はぅぅぃっ。」
二つの玉が鷲掴みにして握りつぶされていく。容赦ない、ものすごい握力で握りつぶしている。全身がガクガク震えだして、呼吸すら難しく、それこそ星という星が頭の中をグルグル回っている・・
握った二つの玉を、智哉は思いっきり膝で蹴り上げた。握られた玉は逃げ場がなく、その衝撃をまともに受けた。
「ぎゃあぁぁぁあl!!!」
自分で出された声なのかどうかすらハッキリしないが、断末魔のような切り裂く声が遠くで聞こえ、それっきり記憶は途絶えた。

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