世相の潮目  潮 観人

世相はうつろい易く、その底流は見極めにくい。世相の潮目を見つけて、その底流を発見したい。

ウクライナ危機は台湾そして日本に何を語る

2022年02月21日 | 政治

ウクライナ危機は軍事力で他国の主権と領土を犯す戦争という意味で第二次世界大戦後の初めてのケースになります。戦後に内戦とかテロ退治とか世界各地で戦闘行為は多々ありましたが、領土支配の目的で他国の領土に正規軍が軍事侵攻する戦争は、ウクライナ危機が初めてです。

ゴルバチョフのペレストロイカ改革でソ連邦が崩壊すると、旧ソ連圏だった中欧諸国は二度とソ連の圧政を受けないため一斉にNATO加盟に走りました。しかしスラブ系の東欧のベラルーシ、ウクライナなどはNATOに加盟しなかったので、西欧圏との間に緩衝地帯を設けて置きたいロシアとしては懸念する状態ではありませんでした。

しかし2014年、ロシアがウクライナからクリミヤ半島を実力で奪取したことでウクライナ国民は将来の安全のためにNATO加盟を望むようになったのです。ウクライナの領土保全については、ソ連時代にウクライナに残置された核兵器をロシアに移転するとき、米英露三国で交わしたウクライナ領土不可侵のブタペスト覚書(1994年)がありますが、これをロシアが一方的に破ったわけですから、今日のウクライナ危機はプーチン大統領自らが招いた危機なのです。

翻ってみると第二次大戦で確定した領土、領海を変更する国際紛争は最近まで絶えてなかったのですが、目をアジアに転ずると、今敢えてその禁を犯そうとしている國に中国があります。中国は領海については既に東・南シナ海で領海侵犯を繰り返し、日本を含む東南アジア周辺国から警戒されていますが、更に台湾を軍事的に侵攻すると公言しているのです。

ですからウクライナ危機の解決ないし決着の行方は、次に起こるであろう中国による台湾危機への対応に大変参考になります。

ウクライナはNATO加盟する前にロシアの攻撃を受けて窮地に陥りましから、台湾は早く米国からの安全保障を確実にしておくことが肝要です。米国は前の民主党政権の時までは台湾防衛を曖昧戦略としていましたが、トランプ政権以後は台湾支持を明白にして、準大使館を置いたり、兵器援助を強化しています。しかし更に一歩進めて、戦後70年余りもの間、民主主義政治を実現している台湾政府には国際法上の権利として民族自決権を認めて、その安全保障を確かなものにしなければいけないでしょう。

但し、台湾危機がウクライナ危機と大きく違うところは地理的条件です。台湾海峡で隔てられた台湾の制圧は、陸続きのウクライナとは軍事状況は大分違います。中国は台湾海峡の制空権、制海権を確実にしなければ大部隊の上陸作戦は困難であり、軍事的に台湾を制圧することは極めて難しいでしょう。

そこで中国はロシアがクリミヤ半島奪取で仕掛けた情報戦や内乱戦を交えたハイブリッド作戦を企てるつもりです。戦わずして勝つ孫子の兵法を三戦と称して、台湾の輿論を動かしたり、最新兵器を見せびらかして心理的に脅したり、上陸作戦を映像化して宣伝したりしています。

台湾政府は自前の抑止力を強化し、国民は自信を以て対抗する意志を固める事です。台湾に言える事は日本にもそのまま当てはまります。
(以上)

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ウクライナ巡る東西対決はヤ... | トップ | 戦後体制の変更を企てる中国... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

政治」カテゴリの最新記事