子猫のおはなし 5 最終話 | おばあちゃんになった、わんこさんのおはなし。                    ~高齢柴犬の闘病・介護記録~

おばあちゃんになった、わんこさんのおはなし。                    ~高齢柴犬の闘病・介護記録~

ハイシニア柴犬介護記録です。
1年3カ月の闘病期間を含め、いつでも家族みんなで笑いながら過ごした、柴犬「わんこさん」との16年と8カ月の生活。
悲喜こもごもあったけど、トータルしてとっても幸せだった日々のおはなしです。

犬と一緒に過ごす生活って、いいね。

帰ってみると、むぎちゃんは朝と同じようにモゾモゾ動いていた。ああよかった、生きていたと、ホッとした。

朝から親身に接していた家族はいつの間にやらお世話の腕をあげていて、しっかり排尿を確認できたと言う。なのに、飲まない。スポイトで口中に垂らす1滴2滴が、精一杯。この状態を「飲む」とは言わない。「口を潤す」という表現にさえ、不足かもしれない。あいかわらず、掌の中で幸せそうに眠る。皮膚がしわっぽくなったと感じるのは気のせいだろうか。心配は尽きない。

 

15時過ぎからむぎちゃんは、よく鳴きよく動くようになった。コツンコツンと、箱の側面に頭をぶつけて這いまわる。反り返り大きな口を開けて声を出す。小さい体だから、存在自体が愛らしい姿だから、そして私たちがまだ猫のことをよくわかっていないから、「あらまあ元気でかわいらしい、そんな甲高い声で一人前に吠えているつもりなの?」とも思えるけれど。

事実はきっと違う。むぎちゃんは苦しんでいるんだ。脱水症状やそのほかいろんな原因で苦しがって、のたうち回り始めたに違いない。衰弱しているから、断末魔の叫びも細いかわいらしい甘え声に聞こえるだけなんだ。

 

「だから飲んで!飲まなきゃ死んじゃうよ!」

むぎちゃんの口に、スポーツドリンクを垂らす。「無理に飲ませないほうがいいんじゃ…」家族はそうも言うけれど、どうしてあげたらいいのか、正解は何なのか、わからない。こんなに小さな体でずっと給水すらしていないのだから、何もしなかったら命の限界点なんかすぐにやってくる。

獣医の先生は「医療行為はしない」と言っていた。自発的に飲めない子に何度点滴をしたところで到底、成猫にはなれない。まさに焼け石に水の愚策だろう。

だけど、一口でも飲めたら。ただ死を待つだけじゃなく、希望が広がるよ。むぎちゃん、昨日あなたを抱きあげたときもついさっき仕事中にも、おせっかいって思われてもいいからあらゆる手を尽くすって誓ったんだよ。お願い、飲んで。生き延びて。

必死で願い、手を尽くしたつもり。けれど叫んでいたむぎちゃんは、動かなくなってしまった。

 

眠ったの?眠ってるだけだよね、また目を覚ますでしょう?家族と顔を見合わせる。一時の眠りに落ちたのか、永眠か、どちらなのか全くわからない。時刻は16時半を少し回っている。どれだけ待ってもむぎちゃんは、再び起きることはなかった。静かに静かに旅立っていった。

 

たった一日しか一緒にいなかったけれど、どう供養したらいいんだろう。

「もしかしてむぎちゃんは、この世界にいたつらい経験なんて早く忘れ去りたいのかもしれないから、形代になるようなものは残さないほうがいいのかな?」私はそう言ったけれど、家族はミニわんこさんの隣に、ミニむぎちゃんを用意すべきだと強く主張した。

 

生前のわんこさんは猫が好きで、見かけるたびに熱視線を送っていたのに、いつも「シャー!」と威嚇されて逃げられて、しょんぼりしていた。むぎちゃんが倒れていたのも庭の、わんこさんのいつもいたあたりだった。わんこさんが「むぎちゃんを助けてあげて」って私たちにめぐり合わせてくれたのかもしれないね。たった一日しか一緒にいられなかったけれど、むぎちゃんも我が家の子。わんこさんはむぎちゃんのお姉ちゃんだよね。

 

むぎちゃん、虹の橋に行ったら、わんこさんを訪ねてね。わんこさんは優しくて楽しい活発な柴犬で、あなたのお姉ちゃんだからね。

わんこさん、むぎちゃんがそちらに行ったよ。むぎちゃんのこと、よく知っているでしょう?お盆の帰省は二人でなかよく一緒に帰っておいで。待ってるよ。

 

お盆を迎えるわんこさんを霊園に迎えに行く前に、大きなショッピングモールをさんざん探し回って、これでいいかなと妥協できるミニむぎちゃんを探してきた。思うようなのがなかなか見つからず、苦し紛れにのぞいたアクセサリーパーツのお店でやっと見つけた。

 

 ミニわんこさんとミニむぎちゃんの小さな形代を連れて、二人のたましいを霊園に迎えに行ってきた。霊園でお水やお線香を手向けていると、大きなカラスアゲハがふんわりふんわり飛びながら、近づいてきた。真っ黒な特徴は、もしかしたらむぎちゃんからのメッセージかもね。以前わんこさんが乗ってきたと思ったこともあるトンボも、供養塔の周囲を舞っていた。

 

虹の橋からお盆の帰省をして、今は二人とも我が家にいると思う。わんこさんは大好きな散歩コースに、むぎちゃんはお母さんや兄弟猫のところへ、それぞれ遊びに出かけるかもね。気を付けていってらっしゃい。晩御飯には間に合うように帰ってくるんだよ。私が一緒に暮らした最初のワンコ、リトルも遊びに来るかもしれないね。姿の見えない愛しい子たち、我が家でゆっくり過ごしてね。

 


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楽天市場で見つけました。プチプラのアクセサリー。

わんこさんとお揃いの「むぎちゃんネックレス」、いかがですか?

カラスアゲハのエピソードもあいまって、私も買おうか迷っているので

もしかしたら…、私ともお揃いになっちゃうかもね。