全員に公開 黒い羊ー夕暮れの影ー10 | じゅりれなよ永遠に

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数日後、玲奈は再び井上和の家を訪れた。

 

事件から時間が経ち、

和が少しでも

落ち着きを取り戻していることを願いながら。

 

インターホンを鳴らすと、

以前よりもいくらか間があってから、

ドアが開かれた。

 

そこに立っていた和は、

玲奈の記憶の中の憔悴しきった少女とは

別人のようだった。

 

表情は明るく、

頬には薄いピンクの色がさしている。

 

服装も以前よりずっと

おしゃれになっているように見える。

 

「松井さん…」

 

和は、玲奈の顔を認めると、

以前とは違い、少し微笑みを浮かべた。

 

「井上さん、お邪魔してもよろしいですか?」

 

玲奈が慎重に尋ねると、和は快く頷いた。

 

「ええ、どうぞ。どうぞ上がってください」

 

和は玲奈をリビングへと招き入れた。

 

部屋の中も、

以前訪問した時とは雰囲気が異なっていた。

 

花が飾られ、照明も明るくなっている。

 

以前の重苦しい静寂は消え、

穏やかな空気が流れていた。

 

「どうぞ、おかけください」

 

和は玲奈にソファを勧め、

自分は向かい側の椅子に腰を下ろした。

 

玲奈が周囲を見渡していると、

和が嬉しそうに口を開いた。

 

「あの、松井さんにお話があります」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

玲奈は探るように尋ね返した。

 

和は少し照れながら、しかし決然と言った。

 

「私、あの…平手友梨奈さんと、

付き合うことになったんです」

 

和の言葉に、玲奈は一瞬息を呑んだ。

 

予想外の展開だった。