格子造りに ご神燈下げて 兄きゃ家かと 姐に問えば
兄きゃ2階で木遣りの稽古 音頭取るのは アリャ 家の人
*エンヤラヤ サノヨーイサ エンヤラヤ エンヤラヤレコノセー
サノセー アレワサ エンヤラヤー
つねりゃ紫 食いつきゃ紅よ 色で仕上げた 私の身体
* くり返し
目出度 目出度の若松様よ 枝も栄えて アリャ 葉も繁る
* くり返し
*~*~*~*~*~*~*
この曲は幕末の頃、寄席で三升家勝次郎が唄い始めたと伝えられている曲だそう。
「木遣り唄」とは、材木を掛け声をかけながら運ぶときの唄です。
幕末頃には、祭りの山車をひくときや、ご祝儀の席でも歌われるようになったそう。
「くずし」とは、調子を変えて陽気に演奏することで、華やかな唄になります。
お囃子のようなものですね。
=============
当時、格子造りといえば、商人町として栄えていた地区の土蔵のこと。
幕末から明治初期に建てられた土蔵造りの家は今でも残っている場所があります。
どこも一大商人街として有名なところです。

こうした商人たちは武士よりもう、ずっとお金持ちなんですね。
で、祭りのときにもなると、商家の入口には御神灯が下がるんですよ。
今でも浅草界隈などの下町では、ご神燈を掲げている商家がありますね。

「にいさん、いるかい?」って姉御(奥さん)に聞くと、
どうも二階から木遣りの稽古の音が聞こえてくる。
ほら、そこは兄さん、根っからの粋な人だァね、江戸っ子よ。
「あそこで音頭とってるのが、ウチの人よ」姉御が教えてくれる。
当時、江戸の鯔背な若衆はこんな風に、祭りに夢中だったんだそうです。
祭りの本番は晴れ舞台! 自慢の喉をご披露するわけです。
二番は色街で若衆を誘う、ちょっといい感じの遊女の姿。
「このいけず!」とばかりにつねられて紫になったり、
そりゃぁ情事で食いついて、ちょっと紅さしたようになってる肌の女たちが待ってる。
優しくって華やかで、気のいい遊女たち。
色がつくほどに、そりゃ遊んでるってことだよねぇ。
最後は「五万石」でも唄われてる繁栄の唄。
実はこの「目出度 目出度の 若松さまよ」のフレーズは、多くの唄で歌われています。
松を飾った祝いの「蓬莱飾り」を「若松様」といったことからのようです。
つまり門松などど一緒ですね。
いろいろな語源が考えられていますが、松はずっと若く緑である繁栄の象徴です。
「いんやぁ、めでたいめでたい! ほら、若松みたいにめでたいんだよ!」という、
江戸時代特有の、陽気で栄を満喫する若衆や、商家の繁栄を祝っているのでしょうね!
【木遣りくずし】はみんなで楽しく、騒ぐときにぴったり。
江戸時代の繁栄を謳歌する唄なのです。