2023年1月6日金曜日

日刊サンコラム72:不動産(中古物件)を買う際の注意点1

 今回は、不動産を買う際に気をつけないといけないことを
建築士の視点からいくつかご紹介させて頂きます。

建築申請の状況については必ず確認


建築許可の申請をせずに違法な工事をしている物件は、
多々見受けられるので十分な注意が必要です。

不動産取引の際でも、売主や買主のエージェントでさえ
違法であることを知らないケースが多く見受けられるので、
買い手側がきちんと調べて確認することが大切です。

Notice of Violation

 

知らずに購入をすると、その責任は買い手側にうつります。
今度売りたいときに知識のある買い手に調べられ、
値引き交渉の大きな要因となるだけでなく、
許可申請されていない物件にはローンの審査がおりないものも多数あるので、
買い手の幅が狭まります。

代表的なのは米軍関係者用のローンで、こちらは物件への審査が厳しいです。
購入前に建築許可を取得していないことがわかれば、
購入後に認可を得るためにかかる費用を算出し、
その分の値引き交渉をするということも可能になります。

アスベストや鉛(lead)を含んだペンキがあるか注意


人体への悪影響が懸念され、アスベストは1973年に、
鉛を含んだペンキは1978年に、それぞれの使用が違法となりました。

ハワイにおいて築40年を超える物件では、これらが含まれている可能性が非常に高いのですが、
だからといって買わない方が良いというわけではありません。

アスベストが違法となった経緯としては、
施工していた業者の従業員が健康を害したことが発覚し、
それに伴ってその使用が禁じられることになったのです。

一旦施工され、乾いた状態では人体には影響はありません。
ただ、それらを撤去する際には、
再度空気中を舞うので必ず専門業者に依頼する必要があります。

ポップコーンシーリングの除去
 

よく見られるものはポップコーンシーリングですが、
壁や床材などに含まれていることも多々あります。

購入後、改築や増築等をする予定がある人は、
撤去する際に通常よりも少し手間とお金がかかってしまいます。
また、そのようなことを知っていれば、
売主との交渉にも使えるかもしれませんね。

反対に、売主側からの視点で見れば、
アスベストを撤去してから売りに出せば少し売りやすく、高値になるかもしれません。

日刊サンコラム72:不動産(中古物件)を買う際の注意点1


2022年6月9日木曜日

日刊サンコラム71:建築にかかる期間について

 増築、改築、新築を問わず、建築はとても時間がかかります。
日本のようにはいかないため、もっと早めに計画しておけばという声をよく聞きます。
特に新築であれば2年以上かかることはざらにあります。

増築、減築、改築では大した差はない

延べ床面積が増えるのか減るのか変わらないのかの違いになるわけですが、
アメリカの建築基準法において、
それらの建築許可申請のプロセスにあまり差はありません。
ゾーニングによっては外観が変わるのかどうかで許可申請が増えることはありますが、
それはワイキキ等の特殊な地域に限ります。



例え延べ床面積が変わらないとしても、
総工費が$1,000を超える場合にはすべて建築許可が必要となり、
住宅の場合には6ヶ月〜9カ月ほどかかり、
第三者機関を利用したとしても3〜5ヶ月ほどかかります。

増改築のプロジェクト

新築は時間がかかる


規模に寄らず、新たに建物を一から建てるにはデザインに時間がかかるだけでなく、
許可申請にもかなりの時間を要します。
ePlanという電子ファイルでの申請しか認められておらず、例年非常に時間がかかっており、
申請だけでも一年以上を要することがほとんどです。

新築プロジェクト


第三者機関を用いれば、増築の場合とほぼ変わらない期間で許可がおりるため
大変お勧め致します。
ただ$3,000〜$6,000ほどの費用が追加されますので、
予め予算に組み込んでおくとよいでしょう。
もしくは、計画段階から1年以上待つことを前提に心づもりをしていれば、
時間はかかりますがそれだけ節約ができるという考え方もありだと思います。
許可が降りるのを待っている間に出来る限り貯金をして、
好みの家具を揃えたり電化製品を新調したりするのも良いですね。


*2022年6月現在では、すべての住宅のプロジェクト(増改築を含む)にて
ePlanでの申請が必要となっており、期間は第三者機関を通さない場合は
どちらも変わらず9カ月~1年ほど要します

2022年1月12日水曜日

日刊サンコラム70:国による建築士の違いについて

 先日、建築ジャーナルという日本の専門誌で執筆させて頂く機会があり、
ハワイでの建築設計事情について綴らせて頂きました。
私以外にも各国の建築士が執筆しており、興味深かったので少しだけ紹介させて頂きます。

建築士になるためのステップが全く異なる


ハワイに限らずアメリカの場合には、
建築学科の大学・大学院を卒業後、最低3年間のインターンシップを経た後に
6つの建築士試験に合格しなければ建築士になることはできません。

イギリスも似たような感じになっているようですが、
フランスは5年生の大学を卒業するだけで資格を得ることができます。

反対にドバイに至っては、
UAE国籍保有者でなければ建築許可申請業務を請け負うことが出来ない等、
大きく違いがあるようです。

ほとんどの国に景観法が存在する


先進国ではほとんどが景観法と呼ばれる、
近隣の景観を守るための法律が存在しています。

ハワイも類に漏れず、ワイキキでは自然色のみを使うことが許され、
ハワイアンなデザインやロゴが義務付けられています。

Waikiki Beach Walk


イギリスでも同様に厳しくコントロールされており、
計画許可の決定がなされる前に計画内容を公開し、市民からの意見聴取も行うようです。
その点、日本はかなり自由度が高いと言えます。

歴史的建造物の保護


世界遺産の状態を維持していくというのはとてもわかりやすく常識的ですが、
特に遺産として認定されていない建物についてどう対応するのかは、
国によって大きく異なります。

日本では驚くほどに自由ですが、
ハワイにおいては築50年を超える建築物に関しては、
どのような用途・状態の建物であれ、別途役所に申請する必要があります。
申請が必要というだけで、却下されるケースはほぼありませんし、
場合によっては写真や図面を作成し、保管することがあるという程度ですが、
それらの建物の現状を常に把握しようという努力が感じられます。

イオラニ宮殿


さらに、古い建物がとても多いイギリス、フランス、イタリア等では
より厳しく管理されているようです。
例え自分が所有している土地であったとしても、
家を建て直すことは認められず、
周りの環境が保たれる範囲に限り改築が許されるという程度なのです。

このように、建物に対する価値観は国によって大きく異なりますので、
ハワイを含め、海外で建物を買ったり、改築・新築する際には、
その国の文化や法律を少し学ぶ必要があるでしょう。




2021年7月9日金曜日

日刊サンコラム69:エコ建築は高額になるのか ー カカアコのKeauhou Laneについて

2018年4月27日にカカアコにオープンした
オーガニックスーパーのDown to Earthについてご存知の方も多いかと思います。
Keauhou Laneというコンドミニアムの1階に位置しているのですが、
今回はそのKeauhou Laneについてご紹介します。

中低所得者向け賃貸物件

Keauhou Laneはホノルルの平均所得を下回る世帯のみが
賃貸する権利を得ることが出来る少し特殊な物件となっています。
ホノルルの地価高騰により、
あらゆる所得層が住まいを確保できるように制定されたプログラムです。

Keauhou Lane
Keauhou Lane


SALT等、徒歩圏内にたくさんの商業施設があり、
今後のカカアコ地区の発展を考えてもとても良い物件であると思います。

コンドミニアムではオアフ島初のLEEDプラチナ


Keauhou Laneはオアフ島のコンドミニアムで初めて、
環境に配慮した建物に与えられる認証システムLEEDの
最高評価であるプラチナを授与されました。



一般的にエコ建築というと、
工費も高くラグジュアリーなイメージになりがちですが、
今回のような中低所得者向けの賃貸物件で認証されたことにより、
イメージ改革にも繋がりとても素晴らしいことだと思います。

ちなみに、同じくカカアコ地区で
Howard Hughes Corportaionの開発でもLEEDプラチナを授与されましたが、
これは近隣開発(Neighborhood Development)についてであり、
今回の認定は建物そのものに授与されたもので、
どちらも素晴らしいことですが少し異なります。

エコ建築はランニングコストを下げられる


エコ建築にする方法は多数あります。
施工費が高くなるようなものが正直多いのですが、
運営費(ランニングコスト)が下がるものばかりです。

身近な例ですと、白熱電球とLED電球はわかりやすいです。
白熱電球はLEDよりとても安く買うことができますが、
寿命が短く、電気代も多くかかります。
10年スパンで計算してみるとLEDの方がはるかにお得なのは明らかです。


同じような考えでソーラーパネルを大量に屋根に設置したり、
雨水を溜め込み、フィルターを通してキレイにして再利用するシステムを
導入する等すれば、地球に優しいだけでなく、
光熱費も飛躍的に下げることができます。

Keauhou Laneでは、上記の事柄はもちろんのこと、
植栽についてもハワイ産の植物を植えることで
必要最小限の水やりで育つようにしたりと細部にまで工夫が施されています。

ご自宅でも新築・改築される際には、
お得にエコなことができないか建築士と相談することをお勧めします。

コラム69:エコ建築は高額になるのか ー カカアコのKeauhou Laneについて
日刊サンコラム69:エコ建築は高額になるのか ー カカアコのKeauhou Laneについて




2021年2月27日土曜日

日刊サンコラム68:家を増築する際の注意点

 最近一軒家の増築の依頼が多いので、
今回は増築に関する主な注意点についてご紹介させて頂きたいと思います。

長期的な需要と目的をしっかり考えて計画


増築する主なきっかけは家族の増員です。
増えた家族のために寝室やトイレを増築しようという話になるわけですが、
どのぐらいの期間で何人住むことになるのかを推測することはとても大切です。

新生児であれば一般的に18~22年程度は同居すると考えますが、家はそれ以後も残ります
子供が巣立った後に増築した家をどうするのかといった
長期的な視点で考えるととても有意義な計画をすることができます。

大きな家が必要なくなったら買い換える


子供が巣立った後は、増築した家を売ってしまい、
小さな場所を買うというのも良い選択だと思います。
その場合には、少しでも売値が下がらないように
出来る限り一般受けのしやすいレイアウト・デザインにすることをお勧めします。

日本人にとっては良くても、ローカルにしてみれば
大きなマイナス査定である要素はたくさんあるので注意が必要です。

住宅の一部を貸し出す


使わなくなった家の一部を貸し出し、不労収入を得るという手段もあります。

その頃には退職している可能性もありますから、
生活を支える収入源としても期待できます。

ただし、その場合にはADU(Additional Dwelling Unit)として
建築許可を申請しておく必要があるので注意して下さい。

増築時に申請をしておけば、
居住人数が変わったときにいつでも貸し出したりすることができますし、
一軒家の場合にはキッチンは一つしか配置できないという制約も、
ADUでは二つ置くことができるので、
二世帯住宅にすることも容易でとてもお勧めです。

具体的にどういった増築をすれば良いのかわからない場合にも、
建築士に話してみれば考えもつかなかったアイディアを提案してもらえるかもしれないので、
まずは相談してみましょう。


日刊サンコラム68:家を増築する際の注意点


2020年10月8日木曜日

日刊サンコラム67:最近話題となった巨大住宅について2

 ローカルニュースをご覧の方は、
昨年10月に話題となった超巨大な住宅についてご存知かもしれません。

Houghtailing Street(リリハ地区)で29部屋の寝室、
17個のバスルームを含んだ住宅が大きな問題として取り上げられました。

外観は3階建てのアパートにしか見えないのですが、
建築許可申請上はtwo-family detached dwelling(2軒の戸建て住宅)となっています。
二家族で住むことができる住宅ですが、
一部を貸し出したり切り売りしたりすることは禁じられています。

しかし近隣住民は、本来の用途ではなく違法に複数の家族に貸し出すのではないかと
大いに反対活動をしていました。

この件を深刻に受け止めた役所は、巨大住宅の建設を禁止する新たな法案を提出しました。
反対活動もありましたが、ついに3月13日に市長が署名をし、
今後2年間という期間限定で施行されることになりました。



モンスターハウス

大きめの住宅を建設する際に多大に影響する


アパートとして複数の世帯が住むことを問題視して制定された今回の法律ですが、
実際何を持ってして巨大住宅と認定されるのかという見極めが難しいとして
物議を醸しました。

結果、対象となるのは敷地面積の70%を超える延べ床面積の住宅と定められました。
例えば、5,000 sqftの土地であれば、3,500 sqftとなるので、
1,750 sqftの二階建ては対象となってしまいます。
対象となってしまった場合には市議会が別途個別に審査をして、
違法に貸し出す可能性があるのかどうかを精査します。

もし、違法に使う可能性があると判断されてしまった場合には
建築許可を得ることはできません。
また、この審査は最大60日間かかるので、
建築許可申請に要する時間がさらに延びてしまうことが予想されます。

セットバックや必要な駐車スペースも変更


今回新たに制定された法律では、他にも既存の建築基準法からの変更点があります。
敷地境界線からのセットバックは住宅において道に面している部分は10フィート、
その他は5フィートとされていましたが、
今後4,000 sqftの住宅では7フィート、
5,000 sqftでは9フィートと2フィートずつ増加していきます。

駐車スペースも4,000 sqftを超える住宅においては6台必要となります。
4台以上駐車スペースがある場合には、車は頭から入り、
敷地内で切り替えして道路へ頭から出ることができなければならないので、
ドライブウェイにかなりの面積が必要とされます。


 

平均より少し大きめといった程度の住宅でも対象となるため、
かなり多くの人に影響を与えることになるでしょう。

詳しいことは土地の面積や立地によっても異なりますので、まずは建築士にご相談下さい。

2020年9月17日木曜日

日刊サンコラム66:内装の仕上げについて

 ハワイの住宅の内装は大半が塗装になっています。

日刊サンの編集の方に、日本だと色々な種類があるのになぜハワイはほとんどが塗装なのかという質問を頂いたので、
この場をかりて塗装と壁紙クロスの違いについてご紹介させて頂きます。

壁紙を貼るよりも塗装の方が安い

まずイニシャルコスト(施工)は塗装の方が安いです。

特に技術も必要なくマスキングをしっかりすれば素人でも少し慣れればキレイにできます。
また、壁紙は何か硬いものをぶつけると破たり、
塗装もまたペンキが剥がれることがあります。
どちらも定期的にやり直す必要があるのですが、
壁紙は一部を補修することは非常に困難で、
最低でも壁一枚やり直す必要があります。
同じクロスが見つかる可能性は低いので、
結果として部屋全体をやり直すということになりがちです。

反対にペンキは一部だけ塗りなおしたり、
壁一枚だけといったことは容易に行うことができる上、
ホームオーナーが自ら塗ることも可能です。

格安でメンテをすることができるのでランニングコストも塗装の方が安くなりがちです。
日本ではあまり家の塗装を自分でするといった習慣がないというのも、
日本とハワイの大きな違いかもしれません。

DIY壁塗装
 

素敵な柄にしたいのであれば壁紙


単色ではなく柄にするのであれば壁紙が良いでしょう。
塗装ですとペンキで壁に絵を描いたり、柄を描くことになり、
施工業者に任せるのは現実的ではありません。

壁紙であればパターンを選べばそのとおりの柄の壁になるため、
思い描いていたとおりのデザインを容易に実現化できます。
ハワイでもカフェやレストランでは壁紙が採用されるケースが多いです。



壁紙


壁紙に湿度は大敵


壁紙はノリで石膏ボードに貼り付けてあるため、湿度が高いと剥がれてきてしまいます。

ハワイも山間部では高温多湿となり、壁紙が向いていない地域もあります。
また、バスルームやキッチン等、部屋の機能上湿度が高くなるような部屋では
壁紙は使用しない方が無難です。

ベッドルームやリビング、廊下等でちょっとお洒落にしたいところだけ
壁紙を選択するのが良いでしょう。