サプライズありの「第97回 野村狂言座」【能楽観賞日記】#5

2022年5月6日(金)14:00開演
第97回 野村狂言座

二日連続で萬斎さんを拝みにいくため、宝生能楽堂へ。延期になった1月の振替公演なのですが、1月はまだ能楽鑑賞デビュー前で、かつコロナで自粛してた時期なので、延期してくれたからこそ観れた公演でもあります(しかも正面席の最前列!能楽堂は音響が良いので迫力が凄かったです)。この日は昼の部・夜の部と2回公演だったので、昼の部で参加させて頂きました。

この日の解説は高野さん。万作の会の中堅メンバーで推しは誰?って聞かれたら「高野さん」って答えるであろうくらい、今、注目してるので(笑)解説も楽しみにしていたのですが、自嘲を交えたユーモアある解説で評判通り面白かったです。

そ・し・て・!

「とちはくれ」のみシテの萬斎さんが自ら解説してくださるというサプライズが!✨(高野さんの「サプライズですよ♪」の言い方がなんかヨカッタw)。解説でも萬斎さんを拝めると思わなかったので嬉しかったし、難しい語句や僧侶のことについて丁寧に説明してくれたので、演目中の理解度もバッチリでした。

ちなみに老眼でパンフを見辛そうにしてたので、老眼鏡かけても良いのに…ってちょっと思ったり…(老眼鏡をハズキルーペしてしまった話をラジオでされてたので余計に・笑)

※今回は1月の振替公演なので、お正月に相応しい、おめでたい演目が中心となっています。

狂言「昆布柿」

淡路の百姓(演:野村裕基)と丹波の百姓(演:野村太一郎)が同道して都に上り、それぞれ年貢の柿と昆布を納めると、年貢にちなんだ歌を詠むよう命じられる。見事に詠み盃を頂くと、二人は奏者(演:野村万作)に名を問われるのだが…。

高野さん曰く、現代において納税はあまり嬉しいことじゃありませんが(苦笑)、この時代は、一年を終えて無事年貢を納めることが、おめでたいこととされてたんですね。んで、奏者に名を問われた二人の百姓ですが、淡路の百姓は、ややこしや〜な名前で、丹波の百姓は寿限無的な名前で笑いを誘います(笑)。最後は囃子に乗せて三人で舞うのですが、三人揃ってのケンケン(片足立ち)は圧巻でした。

狂言「成上り」

鞍馬寺に参籠する主人(演:月崎晴夫)の太刀を預かって共をした太郎冠者(演:石田淡朗)だったが、主人の刀を預かったままウトウトしていると、すっぱ(演:飯田豪)が現れ、太刀を青竹にすりかえて逃げてしまう。翌朝、目を覚まして驚いた太郎冠者は、主人に「成上り」の話をしてごまかそうとするのだが…。

流石に「太刀が成り上がって青竹になりました〜!」は苦しすぎる(笑)。その後、主人と太郎冠者はすっぱを捕まえに行くのですが、太郎冠者がポンコツなせいで最終的には逃げられてしまいます。この、すっとぼけた様な太郎冠者の役が、淡朗さんにとても似合っていて、すっぱに転がされても笑顔でメゲないところが印象的でした(笑

ちなみに以前、ダイジェスト動画でシテ萬斎さんバージョンを見たことがありますが、今見返したら、主人役が飯田さんでした。年齢的には今回の方が配役はしっくりしてたかなと思います。

狂言「とちはくれ」

檀家(演:中村修一)から食事に招かれた住持(演:野村萬斎)は、また別の檀家(演:内藤連)からも布施を出すので勤めに来てほしいと頼まれる。どちらの家に行くか、散々迷った末に布施を選んで勤めに出かけていくと…。

「とちはくれ」と書いて「どちはぐれ」と読みます。萬斎さん曰く、滅っっっっっっっっっ多にやらない曲だそう。実際、今回で最後かなと思ってたけど、客席の反応を見て、またやっても良いかなと思ったそうなので、ちょっとほっとした(笑

この住持は、どれだけ長い時間悩んでいたんだろうか?ということで、二兎を追う者は一兎をも得ず的な話で、現代でも通じる、とても狂言らしい内容。ただ専門用語が多い故、そこがネックか?演じる方も難しい曲のようです。

自業自得とはいえ、布施も手にできず、食事も逃し、さらに檀家を怒らせて僧の道に反してしまい、後悔し哀愁漂わせてる住持が、ちょっと可哀想にも見えました。

狂言「二人袴」

初めて舅(演:深田博治)に挨拶に行く聟(演:岡聡史)は、一人では心細いと父親(演:石田幸雄)に付き添われてやってくる。聟に礼装の長袴をはかせ、父は表で待っていたのだが、太郎冠者(演:高野和憲)に見つかってしまい、父親も舅に挨拶することになってしまう。長袴が一枚しかないため、聟と父親は交代で舅の元へ出ていたのだが、ついに二人一緒に来るように言われてしまい…。

萬斎さん&裕基くんのマジ親子バージョンはダイジェスト動画で見たことありますが、フルで生で見るのは今回が初めて。岡さんが聟役初挑戦とのことで、その初々しさがとても役に合っていました。そして父親役の幸雄さんが、これまた過保護で優しそうな雰囲気が出ていて、ほっこり。事情を分かっていない舅役の深田さんも良かったのですが、今回のMVPは、なんと言っても、あのボリュームあるお声と満面の笑みで親子を追い詰めて行く高野太郎冠者の存在です(笑)。この曲の太郎冠者って、こんなに存在感あったっけ?ってくらい印象的でした。

そうそう、ふと気付くと曲の途中で後見(飯田さん)が居なくなってて、あれ?どうしたんだろ?って思ったら何事もなかったかのようにスッと戻ってきたのですが、次の橋掛りで長袴を着替えるシーンになったら、針に糸を通すような仕草をしてたので、もしやと思ったら、案の定、長袴を分解する前に外れちゃったみたいで急遽その場で縫っていたようです。後見ってこういう事も出来ないとダメなんだなァ、凄いなァ、重要な役目なんだなァと感心してしまいました。

次回の野村狂言座は夏頃にあるようですが、また観に行けたら良いなァ(←仕事のシフト次第😅

▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ

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