銀座余情【能楽観賞日記】#30

銀座余情 能と狂言
観世能楽堂
2022年11月19日(土)

久しぶりに土曜日に休みが取れたので、約2ヶ月ぶりの観世能楽堂へ。お昼の部が、人間国宝たちによるお能の会で、夜の部が、大蔵流の山本家と茂山家、そして和泉流の野村家による狂言の会になっていたので、せっかく休みを取ってまで銀座に行くのだし…と思い、奮発して両方観てきました😁

まずは、お昼の部。チケット取るとき、いつも座ってる脇正面も空いてたけど、ちょっと節約も兼ねて💦いつもとは違う場所から観てみようと思い、B席の中正面15列目のお席へ。

能舞台の屋根が丸々視界に入る距離感で観たのは久しぶり。これはこれで絵になる場所でした。ただ、柱以上に前の人の頭が気になる(苦笑)。でも、観世能楽堂はひとつひとつの座席幅が広いので、人と人の間に隙間が出来やすく、能舞台も高さがあるので、演者の足の運びも思ったより良く見えました。

能「山姥 長杖之伝」

女/山姥:大槻文藏(人間国宝)
  遊女:大槻裕一
  従者:福王茂十郎
  里人:野村万作(人間国宝)
  地頭:梅若紀彰
   笛:松田弘之
  小鼓:大倉源次郎(人間国宝)
  大鼓:亀井忠雄(人間国宝)
  太鼓:三島元太郎(人間国宝)

*・*・*

人間国宝5人による夢の共演!
こんな舞台、なかなか観れないだろうと思う。うん😳

この演目は以前、金春流のを観たことがあるので↓、物語のあらすじ・感想は割愛しますが、、、

今回は人間国宝たちが大集結されてたので(比べるのも酷で申し訳ないんだけど💦)上質な舞台で素晴らしかったのは言うまでもない。文藏先生の山姥は何から何までカッコ良くて魅入ってしまった😳💕

『能 狂言 鬼滅の刃』以来、文藏先生と裕一くんのお能を生で観たいと思ってたので、念願叶って嬉しいです。大阪を拠点にしてる方なので、なかなかタイミングが合わなかったんですよね。なので、万作さんのアイも観れるしということで、今回は意を決して、チケットを取ることにしたのです。

万作さんの間狂言は初めて観たけど、ホールでも、能楽堂でも、本狂言でも、間狂言でも、ブレ無いなァと思いました。大体の狂言師さんは間狂言の時、どこか畏まった雰囲気があるのだけれど、万作さんの場合、どんな時でも、どんな客層でも「野村万作の芸を魅せる」事に集中してるというか。コレが人間国宝というものなのかと何となく感じました。

夜は「東西狂言 三家三様」と言うことで、山本家と茂山家と野村家の狂言を見比べられる貴重な会(しかも三家とも、シテの息子がアドを務めるという親子狂言にもなっている)。言葉の通り、三家とも全く毛色が違う狂言で驚きました😳

特に大蔵流の山本家と茂山家は同じ流派でも「堅」と「柔」といった感じで正反対な芸風で驚き😳😳😳

そして思った事は「みんなちがって、みんないい」ということ。

山本家の芸風は動きも喋りも古風で、まさに古典芸能としての狂言って感じがして、それが何だか癖になる面白さがありました。一方、茂山家は、笑いに重点を置いてるのか、庶民的で親しみやすい、まさに『お豆腐狂言』。両家とも味があって面白かったので、機会があれば、また観たいと思いました。

他のお家を知ることで、狂言がますます好きになりました😌

ちなみに狂言の時は、奮発して脇正面の最前列を取りました。
やっぱこのポジションが一番好きだし、落ち着く(観世能楽堂の場合、特に)。

狂言「末広」(大蔵流・山本東次郎家)

 果報者:山本泰太郎
太郎冠者:山本凜太郎
 すっぱ:山本則孝

【あらすじ】果報者(演:山本泰太郎)が親族一同を集め宴会を催し、その席で長老に対し「末広」(扇の一種である中啓のこと)を贈ろうと思いつく。早速、果報者は家来の太郎冠者(演:山本凜太郎)を呼びつけ、「良質な地紙で骨に磨きがかかり、戯れ絵が描かれている」という末広を買い求めるよう命じる。太郎冠者は末広が何かわからないまま都へ行き、その大通りで「末広買おう」と大声で人々に呼びかける。それを見た男(すっぱ/演:山本則孝)はあり合わせた傘を取り出し、言葉巧みに「これが末広だ」と売りつける。さらにすっぱは太郎冠者に「主の機嫌が悪い時に謡うとよい」といって或る唄を教える。太郎冠者は主人である男のもとへ帰ったが、主人は持ち帰った傘を見るや激怒し、太郎冠者は自分が騙された事に気付く。しかし太郎冠者がすっぱに教わった唄をうたうと主人はたちまち機嫌を直し、太郎冠者と共に舞いうたう。

※現行の狂言の流派では『末広かり』、また大蔵流山本東次郎家では『末広』と書くがいずれも「すえひろがり」と読む。(wikiより)

*・*・*

山本家の狂言を生で観るのは初めて。
最初、古風で剛直な芸風にかなり驚きました💦

人間国宝である山本東次郎さんの狂言は映像で何度か観たことあるんだけど、その時は、そこまで違和感を感じなかったんだけどなァ。ただ、いつもアドの人はなんでこんなに怒ったような口調で喋ってるのかなァと思ってたので(苦笑)、あぁ、本来はこういう芸風だったんだな、とやっと納得しました(笑

萬斎さんはいつも、万作さんの芸風を「型を解脱してる」と言ってるので、同じ人間国宝である東次郎さんも同じような感じなのかもしれませんね。型通りにやってるんだけど、型を感じさせない、みたいな。

この演目も初めて観たのですが、前半の流れ、なんか見覚えあるなァと思ったら、10月に観た「鎧腹巻」でした😂

主人「末広がりとは扇のことじゃ!」(意訳)

太郎冠者「!?」

太郎冠者「だったら最初から、そういえば良いものを…」(意訳)

それな!🤣

怒った主人の機嫌を直そうと、傘を使って囃子物を謡う太郎冠者が健気に見えて、そして主人もだんだん浮かれて行く様子が面白くて、楽しい演目でした。いつか万作家でも観てみたい。

狂言「狐塚」(大蔵流・茂山千五郎家)

太郎冠者:茂山あきら
  主人:網谷正美
次郎冠者:茂山千之丞

【あらすじ】狐塚と称する田を群鳥に荒らされぬよう、主人(演:網谷正美)は太郎冠者(演:茂山あきら)と次郎冠者(演:茂山千之丞)に田の見張り番を命じる。太郎冠者たちが鳴子を用いて群鳥を追い払っていると、主人が酒を持って慰労にくる。しかし、付近に悪い狐が出ると聞いてきた2人は、主人を狐の化身と思い込み、いぶした青松葉を鼻先に突きつけて正体を現せと迫り、さらに鳴子縄で縛りあげるが、真の主人とわかり逃げて行く。

以上は大蔵流の筋で、太郎冠者と次郎冠者の疑心暗鬼が見どころの演目。

*・*・*

これも初見の演目。
千之丞さんは太一郎さんの会の時に拝見したけど、あきらさんの方は初めてでした。

あきらさん、風貌的に前から気にはなってたのですが(笑)親子揃ってチャーミングな声で間も絶妙で凄い笑った~🤣凄い好きだわ~🤣

主人が狐なのではないかと、正体を探ろうとアレコレする太郎冠者と次郎冠者が、とても可愛かったです🤣

注がれたお酒を捨てて飲んだふりする仕草も絶妙で、サイコーでした!🤣

最後、主人に怒られるわけだけど、次郎冠者が逃げたあと、主人役の網谷さんがこちら(脇正面)の方を向いて「もう一人おるな?」と問いかけるように言ってきて、思わず「うん、うん!」と頷いてしまいました(笑)。網谷さんのお声と風貌も理想のおじいちゃんって感じで良かったなァ😌

この演目も、いつか万作家でも観てみたい。どんな感じになるのかなー?

狂言「小傘」(和泉流・野村万作家)

  僧:野村萬斎
田舎者:石田幸雄
新発意:野村裕基
参詣人:野村太一郎
参詣人:内藤連
参詣人:飯田豪
参詣人:岡聡史
  尼:月崎晴夫

【あらすじ】お堂を建立した人(演:石田幸雄)が堂守を探していると、弟子(演:野村裕基)を連れた僧(演:野村萬斎)に出会い早速連れ帰るのだが…。実はこの二人、博奕で無一文になり、ふと出家したにわか坊主だった。お経のかわりに、賭場で覚えた傘の小歌をまるでお経のように唱え、法事に集まった人々(演:野村太一郎・内藤連・飯田豪・岡聡史)をまんまと騙し、供物を奪って逃げていく。騙されたことに気づいた村人たちは後を追い、残った老尼(演:月崎晴夫)が一人嘆いて後を追う。

*・*・*

トリは我が推し様の一門が登場。
万作家は何度も観てるから、ここまで来るとホーム感があるわね(笑

山本家が古風で剛直、茂山家は庶民派でお豆腐狂言なら、野村万作家はその中間的な芸風でしょうか。いつも、美しさの先にある笑いというものを魅せてくれます。

狂言「小傘」は、初見の演目で、トリに相応しい大人数モノでした。

この日の萬斎サマはデタラメお経を絶妙な抑揚で、お客を笑いへ誘う誘う🤣
前から気になってた演目だったので観れて良かったです。

尼役の月崎さんも役作り完璧でサイコーでした👍✨
てか月崎さんって、こういう役が得意なのね?🤔
どっから、どうみても尼のお婆ちゃんにしか見えなかったです😳

*・*・*

この日の解説は、村上湛さんでしたが、能と狂言の違いや、各お家の成り立ちなど興味深い話を解説してくれて、解説込みで満足度の高い1日となりました。

明治維新後、能はお稽古事として教えることで収入を得ていたけど、狂言は観てもらうことを重点的に行い、今日まで存続してきたとかね(狂言も習えるけど、狂言は喜劇なだけに観て笑う方が断然楽しいから、とか)。国立能楽堂が出来たことによって、狂言だけの会が広まっていったとかね。あと、狂言師は基本的に直面なので、推しが出来やすいとか(笑)

そういう話を聞いて、やっぱり一人でも多くの人に知ってもらう、観てもらうのって大事なんだなァと思いました。

▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ

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