第63回 式能【能楽観賞日記】#47

第63回『式能』
国立能楽堂
2023年2月19日(日)

式能とは、シテ方五流が一同に会し、翁附五番立(江戸時代の基本的番組編成)で行う、大変貴重な催し。初参加なので良い経験になるだろうと思い、通し券で買いました。【第一部】と【第二部】合わせて、朝10時から夜7時過ぎまでの長丁場でした(最後はお尻と腰が痛かったけど耐えたw)。

お陰で同日にあった、萬斎さんの初監督映画『虎の洞窟』の舞台挨拶には行けなかったんですけど(そんなダブルヘッダーがあるならもっと早く言ってよ・苦笑)、来月には萬斎さんと裕基くんのストプレ『ハムレット』漬けになるので、何気に次の能楽鑑賞まで1ヶ月くらい空くんですね(ちと寂しいw)。なので、今回の式能は良い充電になったかと思います。できれば来年も観たい♪

※以下、感想(今回あらすじは長くなるので割愛します💦)

ちなみに『翁』と『葵上』以外は、全て初見でした。

「翁」(金春流)

  翁:金春憲和
三番叟:野村又三郎
 千歳:野村信朗
  笛:杉信太朗
 頭取:曽和正博
 脇鼓:森貴史・曽和伊喜夫
 大鼓:山本哲也

*・*・*

『翁』は、何度か観ましたけど、やはり国立能楽堂の『翁』は、より身が引き締まる思いがします。

注目の三番叟は、狂言師の野村又三郎さん。動画で彼の狂言を拝見したときから一度生で観てみたいと思っていたのですが、その初演目がまさか三番叟になるとは!😳

…ある意味レア物を引き当てた気分😳

万作家(萬斎さんと岡さん)以外の三番叟を観るのは、又三郎さんが初めてでした。同じ和泉流でもお家が変わると、動きも微妙に違うのですね。萬斎さんと動きが違う⁉と気付いた瞬間から、ひとつひとつの動作を食い入るように観てしまいました🧐

萬斎さんは正面向いてる時が多いけど、又三郎さんは体の向きを正面に固定してないカンジ?とか、烏飛びも萬斎さんはダイナミックに舞台の中心に向かって飛ぶけど(←脇正面から観るとよく分かる)、又三郎さんはピョンピョピョンってカンジで素早くて、高さは同じくらい高いけど、距離は萬斎さんの半分くらいとか、他にも同じシーンでも立ち位置が違うとか、扇の持ち方が違うとか、とにかく違いがあることが面白かったし、こういうところに他家を観る意味や能楽の面白さを感じました😌

とにかく動きは正にベテランの舞で、萬斎さんとは違った上手さがあって、とても良いものを魅せてもらいました👍✨

…と同時に、萬斎さんの三番叟も再確認したくなり、帰宅後DVDを引っ張り出して観てしまった😂

ここまで来ると好みの問題なんだろうな😅
私は両者どちらの三番叟も好きだな、と思いました😌

翁から狂言『夷毘沙門』までは囃子方が出ずっぱりなので、拍手する間もなくノンストップ状態でした。

ということで次。

脇正面(ベスポジ)2列目からの鑑賞でした
能「鶴亀」(金春流)

 皇帝:辻井八郎
  鶴:本田布由樹
  亀:本田芳樹
 大臣:野口能弘
 大臣:吉田祐一・野口琢弘
 官人:野村裕基
  笛:杉信太朗
 小鼓:曽和正博
 大鼓:山本哲也
 太鼓:田中達

*・*・*

裕基くんがアイで登場。しかもアイの言葉で始まる「狂言口開」と呼ばれる形式のお能でした。アイやってる時の裕基くんはカッコ良い時が多いので、アイでお名前見かけたときは毎回楽しみにしてます🤭

ツレの冠に付いてる、鶴と亀がとても可愛かったです。ほっこり☺️

狂言「夷毘沙門」(和泉流)

夷三郎:野村萬斎
有徳人:石田幸雄
毘沙門:野村太一郎
 後見:深田博治・中村修一

*・*・*

有徳人が美人の一人娘に聟を取りたいと、西の宮の夷、鞍馬の毘沙門に願をかけたら、夷と毘沙門が自ら聟になろうと有徳人の家にやって来るというお話。鉢合わせした二神は、互いに聟志願と知って争いますが、、、まぁ争いと言っても、狂言なので痴話喧嘩みたいなもんです。神様なのに人間臭くて可愛いもんですw

萬斎さんと太一郎さんは神様の役なので面を着けており、お顔は拝見出来なかったものの、両者の面とお声が妙に似合ってました(笑)。
萬斎さんの唯一無二の狂言ボイス好き過ぎるー!💕

男性モノのお能が好きな当方的には、今回の太一郎さんの格好が結構好みでした(笑)

能「巴」(宝生流)

里女/巴:金井雄資
  旅僧:福王和幸
  従僧:村瀨提・村瀨慧
 所の者:大藏教義
   笛:槻宅聡
  小鼓:森澤勇司
  大鼓:柿原光博

*・*・*

かつて木曽義仲に仕えていた巴御前が主人公。
修羅能で唯一、女性が主人公の演目なんだとか。
なので、武人の格好はしてるものの、舞はしっとりめだったかな。

狂言「寝音曲」(大蔵流)

太郎冠者:山本則重
  主人:山本則秀

*・*・*

シテは山本泰太郎さんの予定でしたが、体調不良のため、則重さんが代役に。泰太郎さん、昨年、横浜狂言堂に行った時も、体調不良で拝見できなかった…大丈夫なのかしら?😢

ところで、則重さんと則秀さんて兄弟だったんですね(後ろの人が話してて知ったw)

話の内容は、主人から謡を所望された太郎冠者だったが、妻の膝枕でしか謡えないと嘘をつく。どうしても太郎冠者の謡が聴きたい主人は自分の膝を貸すが、起こしたり寝かせたりするうちに太郎冠者がうたう場を取り違えてしまう、というお話w

太郎冠者が横になると良い声で謡うのですが、主人がそっと太郎冠者の頭を起こすと森●一さんみたいな声になってしまうという面白い狂言でした😂

技術的には、横になって謡うの大変だと思うのですが…実際にお顔が赤くなってたし💦
でもその顔の赤さが、酔っ払ってる太郎冠者とリンクして良い味出してるんですよね😂

これで山本家のお狂言を観るのは3度目ですが、やっぱこの独特な芸風が好きだなーと思いましたね。定期的に浴びたくなる芸風です。

能「雪」雪踏拍子(金剛流)

雪ノ精:豊嶋彌左衛門
 旅僧:飯冨雅介
  笛:藤田朝太郎
 小鼓:古賀裕己
 大鼓:原岡一之

*・*・*

金剛流だけの、雪ノ精が主人公という珍しいお能。
てか、金剛流のお能を観るの初めてかも…また、いきなりレア物を引いてしまった😳

小書きが付くと静かな足拍子になるらしく、まさに雪が音も立てずに静かに降って、静かに積もっていく、あの感じが出ていたように思います❄️

狂言「水汲」(和泉流)

新発意:野村万蔵
  女:野村拳之介

*・*・*

万作さんのドキュメンタリーで、チラッと観たことがある演目。フルで観るのは今回が初めて。笑より謡の掛け合いがメインの演目でした。もちろんオチはしっかり付いてますけどw

能「葵上」(喜多流)

六条御息所の生霊:長島茂
   照日の巫女:大島輝久
    横川小聖:安田登
      廷臣:高橋正光
 左大臣家の従者:大藏彌太郎
       笛:熊本俊太郎
      小鼓:横山幸彦
      大鼓:大倉正之助
      太鼓:桜井均

*・*・*

観世流で2回観てますけど、喜多流は初めて。これまでは、扇を葵上の小袖に向かって投げ捨てるシーンが印象的だったのですが、今回は扇は後見座へ投げていたので「アレ!?」と思ってしまって…もしかして、流派によって違う?通常はこっち??同じ演目でも、何度も観ることで新たな発見があるなァと思いました。やはり能楽は奥が深い。

あとシテが中入りせず、後見座で物着しており、これも「アレ?こうだったっけ?」と思ったけど、過去の記憶も曖昧なので確かめられず…😅

今回もシテの生霊とワキの山伏の攻防が、少しでも気を抜いたら相手に取り込まれてしまいそうな迫力があって、凄い見応えがありました。

狂言「長光」(大蔵流)

すっぱ:善竹十郎
奉公人:善竹大二郎
仲裁人:大藏吉次郎

*・*・*

奉公人が太刀を携え、市を見物していると、すっぱが近づいてきて、奉公人の太刀の緒に手を掛けて自分の物だと主張し、横取りしようとするお話。

つい先日、似たような話を観てきたような気がしますが(↓)w

今回は、ちゃんと最後にすっぱが成敗されています(笑)。仲裁人を騙すつもりが、だんだん上手くいかなくなっていく様子が面白かったです。

てか、善竹十郎さん、先月の「月見座頭」でも拝見しましたが、この方が演じると、どの役でも可愛く見えちゃいますね☺️

ちなみに、この「長光」ですが、能を知る会の6月公演で、萬斎さんが演る予定になっています。萬斎さんがやるとどんな感じになるんだろ?ちょっと楽しみが増えました😁

能「鵜飼」真如之月(観世流)

鵜使い/閻魔大王:観世喜正
旅僧:森常好
従僧:則久英志
里人:大藏基誠
 笛:一噌隆之
小鼓:観世新九郎
大鼓:亀井忠雄
太鼓:小寺真佐人

*・*・*

ついにラストです。シテが観世喜正さん、ワキが森常好さんで、両者の良いお声と安定感が最高でした💖

喜正さんの所作の美しさには惚れ惚れし、後シテの閻魔大王は面も含めて全身金ピカ装束でしたが、髪が黒髪だったので、逆に渋さを感じました(閻魔大王って赤いイメージがあるんだよねw)。

修羅能も含めて女物が続いてたので、最後に好きなシテ方さんで自分好みな、こういう演目が観れて満足でした💖

ちなみに、この日は5連勤直後で(って、いつも大体そうだけど)、何故か睡眠時間2時間未満だったんですけど、もしかしたら寝てしまうんじゃないかと思ったら、意外と最後まで意識はありました(笑)。ここ最近、狂言のみの会が続いてて、久しぶりのお能鑑賞だったから、ちょっとテンション上がってたのかもしれない。うん。

ということで、冒頭でも触れましたが、次の能楽鑑賞は1ヶ月先かー!
疲労感溜まると癒しを求めてお能が観たくなるんだけど、耐えられるかな、ワタシw

▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ

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