【特許紹介】デジタルアート作品の二次流通/転売の制限を小さくする特許発明(CryptoGames)を紹介

 今回は、デジタルアート作品の二次流通/転売に関する特許を紹介します。今日も一緒に勉強しましょう。

 従来、デジタルアート作品の二次流通/転売を自由にできないことがあるという問題があります。

 本発明では、トークン発行者と取引履歴がある利用者間でのみ取引成立させるようにします。これにより、トークンの取り引きの制限を小さくすることができます。



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

デジタルアート作品の二次流通/転売を自由にできないことがある

 デジタルアート作品の取り引きを、その取引に関する情報をブロックチェーンに記録することで行うことがあります。

 デジタルアート作品がトークンとして、2号仮想通貨に該当する可能性があります。2号仮想通貨の取り引きは、仮想通貨法により、仮想通貨交換業者でなければできないことになっています。

 そのため、デジタルアート作品の二次流通(転売など)の取り引きいは、仮想通貨や法定通貨により利用者間で自由にできないことがあるという問題があります。

 ※「資金決済に関する法律」の「第三章の二 仮想通貨」が、仮想通貨法と呼ばれています。

トークン発行者と取引履歴がある利用者間でのみ取引成立させる


 この発明の情報取り引きプログラムでは、二次流通のときのトークン(例えばデジタルアート作品)の取り引きの制限を小さくすることができます。

 トークンの発行者は、利用者の識別情報を、発行したトークンに記載します。この記載は、トークンの二次流通の取り引きの時より前に行われます。

 そして、二次流通においてトークンの取り引きが行われるときに、トークンの譲渡人と譲受人との両方の識別情報(具体的にはウォレットアドレス)が、そのトークンまたは上記発行者が発行した他のトークンに記載されている場合に、取引が成立するように処理します。

 これにより、そのトークンの発行者との取引履歴がある利用者間でのみ、トークンの二次流通における取り引きが成立するようにすることができ、トークンの取り引きの制限を小さくすることができます。(トークンの取り引きの相手が「不特定の者」ではなくなるので、トークンが2号仮想通貨の定義からはずれるからだと思います。)

 なお、請求項1に対応している実施の形態は、実施の形態2だと思います。

 特許第6656628号 CryptoGames株式会社
 出願日:2019年4月3日 登録日:2020年2月7日

【課題】
二次流通においてトークンの取引上の制限を減少する情報取引プログラム及び情報処理装置を提供する。
【請求項1】
 コンピュータを、
 トークンの発行者が利用者に当該トークンを発行し、遅くとも二次流通において当該トークンが取引されるまでに当該利用者を識別するための識別情報を前記発行者によって当該トークンに記載する発行手段と、
 二次流通において前記トークンが取引される際、当該トークン又は前記発行者が発行した他のトークンの取引履歴の内容を確認し、譲渡人である利用者及び譲受人である利用者の識別情報が、当該トークン又は前記発行者が発行した他のトークンに前記発行者によって記載されているか確認し、当該譲渡人である利用者及び当該譲受人である利用者の識別情報がいずれも記載されている場合にのみ、取引が成立するように当該トークンを処理するよう動作する当該トークンの執行情報を、遅くとも二次流通において前記トークンが取引されるまでに、設定する設定手段として機能させるための情報取引プログラム。

今日のみどころ

 デジタルアート作品の二次流通の制限を小さくするための取り引きに関するアイデアの特許です。

 取り引きに関するアイデアは、上手に書かないと、技術的特徴でないという理由で特許を取ることができないことがあるので注意が必要です。不安な場合は、経験のある弁理士(特許事務所)に依頼するのが良いと思いますね。

 弁理士(特許事務所)としては、取り引きに関するアイデアを技術的特徴として上手に記載するスキルが重要です。そのような観点でも参考になる特許だと思います。