昔から「ナットはリペアマンの技量とセンスが問われる一番重要なポイント」と言い続けています。
パッと見て弦が溝に入っていたら どれも同じに見えますよね。
でも、こんなに小さなパーツが 演奏に大きく関わる役割を秘めているのです。
１） 溝が弦の太さに合っているか
２）０フレットポイントで弦を支えているか
３）０フレットポイントからペグに向かう角度は適正か
４）溝の深さは適正か
５）アームダウンしても弦が外れないか
６）チューニング中に『ピキッ』『キリキリ』言わないか
７）溝の間隔が不揃いではないか
などなど、一瞬で思いつくだけでも これだけのチェック項目があるのです。
それぞれでの 細かい解説は省略いたしますが、チューニングの狂い・開放弦での共鳴や音詰まりや アップとダウンピッキングのどちらかで音色が変わったり、明らかにミュート音（ミョイーン）が鳴ったり、ストリングガイドのないタイプのギターの１弦２弦で金属音のような共鳴が起きるなどの不具合が出ます。
しかも見た目にも美しく 安っぽく見えないようにと気を使うところであります 
ナットの製作で特に集中するのが ギターでは１弦と６弦の位置出し。
これは本当にリペアマンさんによって やり方が違います。
どれが正解ってのは無いと思います。
各々の個性が出る部分ではないでしょうか 
ここからは あくまで 親父流 の やり方をご紹介いたします。
粗削りした物を接着
マスキングテープで保護
青のコーキング用（低粘着）マスキングの上から ナットの前後に黄色のマスキングを２枚重ね。
（溝を掘っている時にヤスリが外れて指板面を傷つけないように、また 最後の仕上げの際にペーパーで傷付かないように）
１弦と６弦の位置決め
ここが一番神経を使うところ。
指板の端から何ミリとかでは無くて、フレットの両端の斜めのラインを基準にして 斜めになっている幅と大体同じぐらいの距離 内側にして、なおかつ ハイポジション側から見て 両端と平行に近い感じにします。
フレットの端の斜めの角度によって １弦と６弦の位置が毎回違うと言う事です。
また、指板のアールによっては ６弦を１弦よりも やや内側に入れることもあります。
これは 弦落ちを少しでも防げたらと思って やり始めたのです。
鉛筆で弦の位置をマーキング
目立てヤスリで軽く削って 指で左右に こすりつけたら 鉛筆の粉が目立ての跡に入ってわかりやすくなります
ノギスで測り、５等分して軽く目立てヤスリで筋を入れる。
１弦と６弦溝をちょっと掘る。
２〜５弦を目立ての筋に乗せてみる。
５弦６弦間が少し広いですね。
ここで溝を掘り進める時の位置の微調整具合を決めます。
今回はHeavyBottom弦なので、ちょっと溝間隔のバランス取りが難しい 
ヘッド側からも見て確認します。
巻き弦は照明の影がマスキングに映るので目の錯覚で弦間を見間違える場合があるので、何度も確認するのです。
弦間を微調整しながら 弦の下 １／３ぐらい埋まる程度に溝を掘る。
ヘッド側からも確認して。
全体を少しづつ掘り進めて何度も弦間を微調整しながら・・・
最後に上面を適度な所まで削り落として整形して、両端の角を丸めて 研磨・艶出しして いつものようにＯＩＬを十分に染み込ませて完成 
気付いた方も いらっしゃると思いますが、１弦ローフレットが すり減って凹んでいた部分を逃がして 溝を掘っています。
本来なら すり合わせをすれば良いのですが、生き残っている部分のフレットが大多数なので あえて全体を低くして寿命を縮める必要も無いと判断いたしました。
凹みを逃す事で 音の減衰も改善されたと思います。
しかし、６弦 ０５２は太かった
ほな また 
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