ブログの目的
ヤギにとって腰麻痺は恐ろしい病気です
発症したヤギは多くの場合安楽死させられると聞きました
アルタは生後4ヶ月で腰麻痺の症状が出て間もなく歩けなくなり
当初はただただ悲嘆にくれるばかりでした
というのも腰麻痺の闘病記や体験談も断片的なものしかなく
犬猫に比べて圧倒的に情報量が少なかったため不安がつのるばかりで
当時のかかりつけ医の「もうこうなったら安楽死しかない」という言葉が
私を暗い方へと追い立てていきました
でも実際にはアルタは3ヶ月あまりで寝たきり状態から脱し
自力で立ち上がり歩行できるまで回復しました
同じ病気にかかったヤギがいたら当時の私のように簡単に絶望したりしないでほしい
安楽死をすすめられても早々と諦めないでもらいたいとの思いから
アルタと頑張った日々のことを公開してみます
焦りと変化
本日のアルタ(左) 父親(中央)が竹に乗りかかり幹を曲げてみんなで葉を食べている
2015年9月から10月にかけて焦っていたことといえば
ヤギの腰麻痺に関する情報がないこと
獣医師も家畜衛生センターも、腰麻痺で立てなくなってから回復した例は知らないと言う
アルタが成長してどんどん大きく重くなっていくこと
成長期だからこそ回復するのではないかという期待と
体の成長にリハビリ訓練が追いつかないのではないかという焦り
そして私の体力がいつまでもつかということ
アルタを毎日持ち上げているので腰と肩と背中はずっと痛い
ここにきて更に車椅子に乗せるためにアルタの後脚を跳ね上げるという苦行が加わったため
腿の筋肉まで痛めてしまった
日中アルタを立たせている間は目が離せないのでカップ麺さえ食べられないのだが
私がどうかしたらアルタも共倒れになってしまう
変化したことといえば、アルタが膝行って動けるようになり手狭になったのでベッドは犬に返した
かわりに押入れ用幅110 ひのきワゴンで寝床を作り玄関内に置いた
すのこワゴンの上にさらに風呂用すのこを針金でくくりつけ周りにベニヤ板を木工用ボンドで貼り付けただけの雑なDIYだがキャスター付きなのでアルタを乗せたまま動かせる
写真右側の面はアルタに破壊されてしまった
ペットシートを下に敷き、糞尿はすのこのすき間から下に落ちる
立てなくなった最初の頃は下の写真のように手足を片側に投げ出し横たわっていたのだが
だんだんと猫の香箱座りのように体を起こす姿勢でいるようになってきた
車椅子で歩行訓練
玄関前で夕日を浴びる
2015年9月初旬、待ちに待った車椅子が手に入った
とは言ってもアルタひとりで車椅子に乗ってどんどん歩き回れるわけではない
二輪のものと違って四輪は自分で進む方向を定めにくいのでずっとつきっきりである
ヤギは犬と違って歩くことを楽しむわけではなく
何か用事があって歩いていくのであり、用事というのは大抵食事のことだが
アルタも食べたい植物に向かって突進し、しばらくそこで食べ、ちょっと移動しては食べることを繰り返す
二時間ほど外に出ても歩いた距離は50mにもならない
これでは思っていたような歩行訓練にならない
これでいいのか、と悩む
歩き方もおぼつかない
後脚の蹄がうまく返せずひきずるせいで踵が変なふうにすり減っていくので
アスファルトの道を歩くのはやめ土のやわらかい農道や林道をいくことにした
朝10時頃車椅子に乗せ夕方5時頃降ろすまで
二時間ほど野原へ出て草を食べたりよたよた歩いたり、それ以外は車椅子に乗ったまま玄関前にいてもらい立っている
はじめの頃は車椅子を固定しなくてもおとなしくじっとそこにいて前に置いた干し草を食べていた
だいたいそんなスケジュールで毎日は過ぎていった
時には両親ヤギを連れてきたりもした
車椅子への期待
今日のアルタ 色鮮やかなもみじもパクパク
車椅子を作っている工房を訪れ大型犬用の試乗車に乗せてもらったとき
アルタがすぐにドタバタと前のめりに突進しはじめたのでとても驚いた
前進するアルタ、ひと月ぶりに見る姿だった
もう一生歩けないかもしれないが、生きていてくれればそれでいいと半ば諦めかけていただけに胸にこみ上げるものがあった
やっぱりアルタは歩きたかったんだ…
注文してから完成予定日までの二週間がどれだけ待ち遠しかったことか
待つ間に期待はどんどん膨らんでいった
車椅子さえあればすぐにでも歩けるようになるのではないかと妄想したりもした
相変わらずネットで目にする情報は
「腰麻痺にかかった、死んでしまった」「腰麻痺で寝たきり、褥瘡がひどい」
といったものが多くて気が滅入った
だから何かしら希望を見つけてすがりたかったのだ
寝たきりになって間もない頃、最初のかかりつけA医師にも病状を話し何か打つ手はないかと聞くと「できることは安楽死しかない」と言われてしまった
あんたが予防注射を断るから腰麻痺になったではないかと言うと「予防注射しても100%防げるわけではない」という
それでも注射をしていれば予防できた可能性がより高まったはずだと思うのだが
産業獣医師とペットとしてヤギを飼っている自分の温度差というのはこういうものなのかと落ち込んだ
車椅子で大好きな萩を食べに行くこともできるようになった