ホンマツテントウ | 馬術稽古研究会

馬術稽古研究会

従来の競技馬術にとらわれない、オルタナティブな乗馬の楽しみ方として、身体の動きそのものに着目した「馬術の稽古法」を研究しています。

ご意見ご要望、御質問など、コメント大歓迎です。









 乗馬(特に馬場馬術)にハマる方というのは、
とても生真面目で、律儀な感じの人が多いように思います。

  幼い頃から大人の言うことをよく守り、「いい子だね」と褒められることに喜びを感じ、自ら作ったルールを守ることを生きがいとして育ってきたような、そんな雰囲気を感じます。

 そういう方の性向と、スタンダードとして定められた姿勢や動きを維持しつつ、規定の図形を正確に描くように運動し、それを審判の偉い先生に審査・評価してもらう、という馬場馬術競技の仕組みや、競技会や技能認定に向けての、尊敬するコーチとの厳しい練習、といったものが、とてもマッチするのかもしれません。


  そうした方たちがそこに感じている価値や充実感というものは、
大雑把で面倒くさがり、なおかつ人から細かく指図されるのが大嫌いな自分のような人間でもなんとなく理解は出来る気がしますが、

その姿を見ていると、何か本来の乗馬の楽しみとは離れた別のものに、いつの間にか目的がすり替わっているように思えることがあります。


 初めはただ、上手に乗れるようになりたい、
気持ち良く運動出来るような乗り方を覚えたい、という感じだったのが、

競技で高得点を取れるような見栄えのする動きをさせたい、そのために馬を鍛えたい、という風に変化し、

引いては、そこに向かってコーチに激しく叱咤されながら頑張っている、そのこと自体に無上の喜びを感じているような、
いわゆる『M』っぽい?(笑)感じの方も結構見かけます。
 
 
 そんな風にストイックで「Mっ気」のある、あるいは努力感を尊ぶ体育会系的指向の強い方によく見られるのが、
 
「真面目に努力すること」自体が目的化して、
自分や馬の心身へのダメージに気づかないまま頑張り続けた結果、

身体や精神を病んで、いつしか初めの頃のように乗馬を楽しめなくなってしまう、といった、
残念な結果を招いてしまうパターンです。



  近年、「ワークアウト」などと言って、筋トレにハマっている方も多いですが、


見栄えがするように、筋肉を大きくするためのトレーニングというのは、身体の一部分に負担をかけて破壊し、超回復することを狙う、という、

「下手な身体の使い方の練習」みたいなものですから、


それを脳が記憶することで、大胸筋や僧帽筋、腹直筋、広背筋、大腿四頭筋といったアウターマッスルが常に過緊張の状態になって首や肩が硬直したり、腰の反りが強くなったりして、

肩凝りや腰痛、膝や肘の故障などが起きやすい身体の状態を作ってしまったりします。



  筋力を鍛えることのそもそもの目的は、運動パフォーマンスを上げたい、正しい姿勢を保って身体の痛みを無くしたい、などであったはずなのに、その目的がいつの間にかすり替わり、


極端にいえば、「大きな筋肉をつけるという目標を達成するためなら、身体がちょっとくらい動きにくくなったり、壊れてもいい」というような、

本末転倒』の状態に陥ってしまっている人も少なくないのではないように思います。




  乗馬においても、馬場馬術というのは本来、  馬にとっての理想的な動きやバランスを考え、それを最終目的としたトレーニング段階に応じた運動課目を作り、出来栄えを評価することで馬の調教度を測る目安として調教や騎乗技術の向上を図る、というような目的があったのだろうと思いますが、


そうして各レベルごとの競技会が行われるようになると、

〇〇課目で何%取れる馬なら〜百万円で売れる、とか、就職や進学のために〇〇クラス競技での入賞実績が必要、といったような目的のために

見栄えの良い動きをして審判にアピールし、高い評価を受けるためのテクニックといったものが生まれ、それを知るコーチが優遇されたりすることで、


未熟な人馬に無理矢理高いレベルの課目で行うような技を強いることによる勘違いや故障、悪癖の固定化が頻繁に起こるようになってきて、


心身に問題を多く抱えた人馬をたくさん生んでしまっている、というようなことに心当たりのある方も少なからずいらっしゃるのではないかと思います。



 競技志向の強い人たちの言動を見ていると、


「競技で勝って自分の評価や馬の価値が上がるなるなら、身体の使い方などは下手でもいい」


「頑張っている実感が得られるなら、心身が多少壊れてもいい」


というような、ある種の倒錯した価値観すら感じることがあります。


 

それこそ、「健康のためなら死んでも構わない」というのと同じ「本来転倒」というものではないかと思うのです。











  

皆さんの肩には、『ホンマツテントウ虫』

止まっていませんか?

(^^)