今の私たちは、遠くの星を見る事は出来ても実際にそこに行く事は到底不可能です。何故なら、宇宙はあまりにも広過ぎて、地球の隣りの惑星である火星に行く事すら半年以上かかってしまい、ましてや隣りの恒星系に行こうとしても光の速さでも何年もかかってしまいます。
でも、もしも人類が将来、光の速度に近づける宇宙船を造る事が出来たとしたらどうでしょう?そんな事が実現すれば、これまで見るだけだった宇宙がかなり身近になっていろんな星に行けるようになったり、第二の地球を見つけ、そこに移住出来るようになるかも知れません。
今回は、そんな夢のような宇宙船が造れるかも知れないってお話です。

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人類最速の宇宙機(探査機)とは?

人類はこれまで数多くの無人宇宙船(探査機)を建造し宇宙に送り出して来ました。その中で最も速い速度を叩き出した”人類史上最速の宇宙機”はNASAの太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」です。

「Image Credit:NASA/Johns Hopkins APL/Steve Gribben」
パーカー・ソーラー・プローブは太陽に接近し観測を行う探査機で、そのためには太陽の強烈な重力に引き込まれないよう超高速で飛ぶ必要があり、2023年に時速63万5,266キロという速度を達成。この速度は1秒間に176.74キロも進み、東京~大阪間を2.8秒で移動できる程の超高速です。
では、そんな超高速を叩き出したパーカー・ソーラー・プローブにはどんなエンジンが使われたのでしょうか?
パーカー・ソーラー・プローブは、エンジンの出力で時速63万キロ以上まで加速したのではなく、天体の重力を利用し、それを運動エネルギーに変換するというスイングバイ航法で加速を成功させています。

「Image Credit:NASA/Johns Hopkins APL/Steve Gribben」
上動画↑↑を参考にしていただければわかるように、パーカー・ソーラー・プローブは金星の重力を利用したスイングバイを複数回行い、少しずつ速度を上げて行き、今後はさらに加速し時速69万キロに到達するとの事です。
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NASAが考案した夢の宇宙機エンジン

現時点で、宇宙機が速度を加速させるにはあまりエンジン出力を必要としないスイングバイ航法が使用されていますが、この航法では加速に限界があり、ましてやエンジンを使って加速するとなった場合は大量の燃料が必要となってしまいます。
そんな中、アメリカ航空宇宙局NASAが考案した夢の推進器「ヘリカルエンジン」が話題を呼んでいるようです。

ヘリカルエンジンは推進剤を必要とせずに半永久的に加速する事が出来るうえに、物理的な速度の限界である光速に近づける事が出来、理論的には何と!速度は光速の99%まで到達する事が出来るそうなんです。


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夢の宇宙機エンジンの原理とは?

何故、ヘリカルエンジンが推進剤を必要とせず、半永久的に加速し光速の99%まで出せるのか?前項の動画↑↑にもその原理の解説がありますが、もう少しわかりやすくご説明すると以下↓↓のようになります。


「Image Credit:NewScientist」
まず、摩擦のない平面上に箱(上動画の黒枠線)が置かれていたと想定した時、箱の中には重りとなる物質(赤い棒)が前方(右側)と後方(左側)に交互に動いており、この時、重りは作用・反作用の法則により動きが相殺されて変動が無くなってしまいます。しかし、重りが後方に動くときに重り自体の質量を小さくした場合、質量の差で起こる反動で箱は前方に動く事になります。


「Image Credit:NewScientist」
これは、アインシュタインの特殊相対性理論を利用した考え方で、この原理をエンジンに組み込む事で推力を得て少しずつ加速して行き、最終的には物質の速度の限界である光速の99%まで到達する事が出来るそうです。
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夢の宇宙機エンジンは理論的には可能でも現実味がない!?

ヘリカルエンジンの動力源となるのはイオンだとされ、イオンが前方に移動する時に強力な磁場をかけイオンの質量を増やし加速します。逆にイオンが後方に移動するときは減速させてイオンの質量を減らす事で推力が発生するのですが、問題はイオンの加減速と質量の調整に発生させる磁場をコントロールする加速器(ヘミカルエンジン)に必要となる電力は膨大なモノで、100gの力(=1ニュートン)を生み出すために必要な電力は165メガワットとなり、これは水力発電所16基分にも相当し、ヘリカルエンジン自体も長さ200メートル、直径12メートルという巨大なエンジンとなり、それを搭載する宇宙船はもっとさらに巨大なモノとなる事になります。

「Image Credit:iStock」
ヘリカルエンジンの原理はわかりますが、実現するには大きな壁があり普通に考えれば現実味がないモノと思われますが、もしかしたら近い将来、ヘリカルエンジンを実現させる技術が考案されるかも知れませんし、他の夢のエンジンも登場するかも知れませんね。
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