ケ時々ハレ・2

楽しむために、「晴れ」のために「褻」を生きてます。左脚も人工股関節にしました。右人工股関節はライト、左はエルといいます。

8月25日(金) 「八月の人魚たち」

2017-08-28 16:31:45 | テアトルエコー
後半に少し、ネタバレあります。

テアトルエコー「八月の人魚たち」を観た。









出演者の顔ぶれを見て、絶対観たいと思った。

森沢早苗さん、重田千穂子さん、渡辺真砂子さん、杉村理加さん、薬師寺種子さん。
女性5人の芝居。

毎年8月の終わりに、貸しコテージに集まる5人は、学生時代の競泳チームの仲良し。

9月5日までエコー劇場で上演中なので、あまり詳しくは書かないけれど、若干のネタバレありです。

森沢さんが、リーダー的な仕切り屋。
息子と娘に関する心配事が絶えない重田さんは、毎回どこか大けがをしてやって来る。
元修道女、44歳の夏にいきなり(ある事情で)修道女を辞めて現れた真砂子さん。
自分を美しく保つための努力を惜しまない恋多き理加さん。
マティーニ好きな敏腕弁護士、薬師寺さん。

それぞれの生活に、それぞれの事情があるが、年に一度、ここへ集まることを何より大事にしている5人。

集まって何をするかというと、食べたり、飲んだり、喧嘩したり、泳いだり、お互いに気遣ったりする。

44歳の夏、49歳の夏、54歳の夏。

うまい女優さんばかり、そしていい年まわりの女優さんばかり、絶妙に揃えたものだ。
みごとにキャラがばっきり分かれている。
そして、それがそれぞれの女優さんの素に近い感じ。
これはうまく歩み寄ったケースなのか。

最終章、77歳の夏。
5人のうちの1人が欠けている。

54歳の夏の終わりに、それを予測させるエピソードは入るのだが、大方の予想通り、そのエピソードからの連想通りには展開しない。
なぜ? という人物が欠けている。

子どもたちのことでつらいことばかり経験して来て、それでもいつも元気に笑い飛ばしていた重田さんに痴呆の兆し。
彼女を世話しているのは理加さんだった。

周囲で3人の友人が、ガヤガヤ話している中で、ひとり時々ぼんやりうつろになってしまう重田さん。
実にリアルだった。

思い出のコテージは取り壊されるのだ。
でも、近くでまた別のコテージを借りる手配ができているらしい。

それを聞いた重田さんの台詞。

「よかった・・・。だって貴女たちのこと、好きになりそうなんだもの」

うわぁと声が出た。
ズキューンと胸を射抜かれた。

忘れ去った友人たちを、新しく好きになるなんて、なんて素敵なの。
泣かされた。

恋愛したり、結婚したり、離婚したりする。
生まれた子どもは育って行く。
変な方向へ曲がることもある。
結婚したりもする。
孫が生まれたりもする。
親を見送る。
配偶者を亡くす。
思わぬ病気をすることもある。
思わぬ人が早死にすることもある。
何もかも忘れてしまうこともある。

人生ってそういうものだ。
そして2幕4場の芝居に収まってしまうほど、本当にあっけない短いものだ。

これは若い時に観ても、実感が湧かない芝居かもしれない。

私は今日の出演者の女優さんたちと同世代。
いろいろ見えてきているのだ。

「また子どもを産みたいと思う?」
「もちろん。でも、今とは違う子がいいな」

そんな風に言わずにいられない母親の気持ちを私は知っている。

その彼女が最後に聞く。

「ねえ、私ってしあわせな人生を送ったのかしら?」

3人が顔を見合わせ、
「ええ、すばらしくしあわせな人生だったのよ」

なんという女優たちだろう。
全身に役柄のクリームが刷り込まれて、皮膚になっている。
人に芝居を観せるなら、こうでなくてはいけないよ。

うまい役者さんが好きだ。
本当にいい舞台でした。

9月5日まで、恵比寿エコー劇場にて。
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