こんにちは!
 
 
 

こないだ読んだ『長いお別れ』から
中島京子さんの作品が気になり、
『樽とタタン』も手にとりました。
 
 
かわいらしい装丁なので
心を和ませる癒し系小説かと思いきや。
良い意味で予想を裏切られました。
 
 
『樽とタタン』は
作家の「わたし」が30数年前を振り返り、
当時「居場所」にしていた
近所の喫茶店で過ごした日々と
出会った人々について語られる
連作短編集です。
 
 
幼少期の「わたし」は
自宅以外の場所を安全だと思えず、
幼稚園を登園拒否し、
家に一日中いるような子どもでした。
 
 
そんな彼女は
ある日祖母に連れて来られた喫茶店の
赤い樽の中で過ごすと
心が落ち着くことに気づきます。
 
 
それ以来、母の仕事が終わるまで
喫茶店で過ごすようになります。
 
 
喫茶店のマスターや常連客は
「わたし」に「タタン」と
あだ名をつけて可愛がり、
彼女にさまざまな話をします。
 
 
白いあごひげの老小説家、
無口で理屈っぽい学生さん、
謎の生物学者の「バヤイ」、
サンタクロースの仕事をする外国人、
おしゃべり盛りのマスターの甥っ子など、
常連客はくせものぞろい。
 
 
印象深い彼らとの思い出を
「わたし」はしみじみ振り返るのですが、
あのときは分からなかった
大人の事情や彼らの孤独が
おぼろげな記憶とともに炙り出され、
懐かしさと切なさが余韻に残るのです・・。
 
 
いちばん胸がぎゅっとしたのが
最終章の「トモコ」の話。
 
 
トモコは「わたし」が
この街を出ることが決まってから
学校にあらわれた女の子。
 
 
「わたし」と同じ名前で
背格好も似ていて、
ふたりは「双子みたいだね!」と
盛り上がります。
 
 
「わたし」はトモコを
喫茶店に連れていくのですが
マスターは怪訝な顔をして
「新しい遊びか?」と言いながらも
いつも通りふるまいます。
 
 
このあたりで
「おや?トモコって本当にいるのか?」
と読書は思わせられますが
真偽のほどはぼかされたまま
物語は幕を閉じるのです・・。
 
 
人の記憶はほんとうにいい加減なものですよね。
 
 
自分のバヤイは
6歳〜小学校4年生までの
学校での記憶が
ほぼないです。
 
 
6歳で親が離婚して
転校した先の小学校で
馴染めなかったのか?
つまらない毎日だったのか?
ほんとうに記憶がありません。
 
 
(母に聞いたところ、
友達ができないから
友達づくりのために
小1から習い事をはじめたとのこと。
切な・・)
 
 
幼少期の自分が
彼女のような想像力を持っていたら
少しは記憶が残っていたのかしらと思いながら
物語の切なさに浸りました・・。
 
 
『樽とタタン』では
幼稚園〜小学校高学年までの
自分の過去が振り返られますが
もちろんすべて鮮明に覚えているわけはなく、
ところどころで
「実際はそうでなかったかもしれない」
という語り手の注釈が入ります。
 
 
そのため
喫茶店の常連客の話は
なんかちぐはぐだったり
ぶっ飛んだ話だったり。
 
 
読んでいて
煙に巻かれたような気持ちにもなりますが、
思い出が都合良く脚色されることで
さみしい気持ちが和らいだり
その思い出に没頭できたりするのなら
ほんとか嘘かなんてどうでも良いのだと
思わせられます。
 
 
むしろ
そのときどきの孤独を
ちょっと不思議な物語に変換しながら
過ごし続けた幼少期の彼女は
たくましくて素敵な子どもだと思いました。
 
 
想像力は人の心を豊かにするし
さみしい気持ちから守ったりもするのですよね。


別に「ほんとう」なことが
正義というわけでもないし。


さみしい現実から想像力で
目を逸らすことも
自分なりに健やかに生きていくためには
大事なことだと思うのです。
 
 
想像力は生きる知恵、心を守る鎧だと
しみじみ思いました。


そして
この物語のメインステージである喫茶店も
居心地が良さそうですごく素敵でした。


近所にカフェはたくさんありますが
どこもチェーン店で、まぁまぁ混んでて
子連れだと入りづらくて。


育児の気分転換に
こういう喫茶店でホッとしたいなぁ。


混んでなさそうだし、笑
子どもが泣いても和やかに受け入れてくれそう・・
なんてことを頭の隅で思いながら
読み終えた一冊でした。
(自分、ちょっと疲れてるかも?)

 
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