ある日突然、
我が子がいなくなったらどうしよう。
 
 
この物語を読みながら
そんな不安が頭をよぎり
足がどんどん冷たくなって
胸が苦しくなりました。
 
 
最近は子どもがいなくなる
痛ましいニュースばかり流れていたり
この連休は子どもとべったり
だったこともあって、
 
 
読み終わってすぐに
寝ている我が子をぎゅうと
抱きしめたくなりました。
(起きるからやめたけど・・)
 
 
ブリット・ベネット『ひとりの双子』は
1960年代、アメリカの小さな街で
育った双子の壮絶な半生が綴られた物語です。
 
 
落ち着きのない姉・デジレーと
おとなしい妹・ステラは
性格こそ真逆だけれど
いつも一緒に行動する
とても仲良しな双子。
 
 
彼女たちは自分たちが暮らす街の窮屈さと
家が困窮し学校へ行けなくなってしまったことから
自由を求め、ふたりで家出を決意します。
 
 
そしてふたりはある日の夜
家出に成功。
ニューオーリンズへ向かい
新たな人生をスタートさせます。
 
 
双子は黒人家系だけれど肌の色が薄く、
見た目は白人と変わらぬ容姿をしていて
堂々としていれば「白人専用」の待遇を
受けられることに気づきます。
 
 
やがて双子の片方は
ふたりで住んでいた家を突然飛び出し
「パッシング(なりすまし)」をして
白人として生きることを決意し、
見事に成功します。
 
 
残された双子の片方は
大切な家族がいなくなってしまった
ショックと悲しみ、孤独を抱えながら
黒人として生き、
そのままふたりは別々の人生を歩み、
行方もわからなくなってしまいます・・。
 
 
この物語は
黒人として生きてきた
双子の姉・デジレーが
人生に絶望し、娘を連れて
街へ戻ってくるところからはじまります。
 
 
双子が育った街は
黒人が暮らす街ではあるものの
「少しでも薄い肌であること」が
正義といえるほどに
肌の色への執着が強く
 
 
デジレーが連れてきた娘・ジュードは
「ブルー・ブラック」と言われるほど
肌の色が濃いことから
早々に街中の噂になり、
家出から帰ってきたというエピソードも
あいまって、強い偏見の目にさらされます。
 
 
双子の母・アデルは
突然帰ってきた娘と肌色の濃い孫に驚き、
戸惑いながらも受け入れ、
3世代での暮らしがはじまります。
 
 
そして時は経ち、
ジュードは学校でいじめに遭いながらも
家族思いの娘に成長し、
奨学金をもらって
ロサンゼルスの大学へ進学します。
 
 
ロサンゼルスでも
ジュードは偏見の目にさらされ
辛い思いをしますが
新たな出会いもあり、
前向きに過ごしはじめるのですが
 
 
バイト先の白人一家のパーティーで
ジュードは高級な毛皮をまとった
母親にそっくりな人物を見かけ、
物語は怒涛の展開を迎えます・・。
 
 
この物語には
アメリカに根深く残る黒人差別と
被差別者の苦悩、
社会的強者(ここでは白人)の傲慢さ、
人生をリスタートさせた双子の勇気と葛藤、
家族を喪うことの途方もない空虚感が
 
 
双子の別れと時を経ての思わぬ再会という
ミステリー的展開をたどりながら
緻密に描き込まれています。
 
 
双子の家出、
デジレーの絶望と
ジュードの成長物語
というだけでもお腹いっぱいに
なりそうな情報量ですが、
 
 
このあらすじでは前半部分しか
伝えきれておらず、
後半からは前半の伏線が回収され
予想もしないクライマックスを迎える
とても情報量の多い
超大作になっています。
 
 
1歳児を育てる親として
どうしても母親目線で
読み進めてしまいます。
 
 
家族が突然失踪してしまったことの
母親の悲しみと孤独の痛みを
想像するだけで泣きそうになりましたし
 
 
家族を捨てて人生を
リスタートした双子に待ち受ける
「家族からのしっぺ返し」のような展開にも
胸が痛みました・・。
 
 
家出した方も、された方も
家族を喪う痛みは同等にあって、
だけどそうでもしなければ
自由に、豊かになれなかった辛い背景もあって・・
 
 
けれど、家族を捨ててまで得た
自由や豊かさは、本人にとって
言えない過去への罪悪感と孤独を
さらにつのらせる原因にもなっていて
必ずしも「幸せ」とは言い切れず・・
 
 
登場人物それぞれの心情に
深く感情移入しながら
本当の自由とは、豊かさとは、
幸せとは何なのか
深く考えさせられました。
 
 
本当の自由とは、
豊かさ、幸せとは、
 
 
家族や恋人、友達など
大切な人たちと「分かち合える」
「共有しあえる」からこそ
自由で、豊かで、幸せに
感じられるのではないかと
この物語を読んで強く思いました。
 
 
そして最後に、
小さな街に出戻り
母親の面倒を見続けた
双子の姉・デジレーの
物語最終部の生き様が
とても印象に残りました。
(ネタバレするとつまらないので
あえてぼかします!!)
 
 
同年代の人が活躍している姿を
SNSで見かけたりすると
自分は変わらぬ毎日を送っているな・・と
悶々とする時がたまにあるのですが、
 
 
自分にとって
その時は「今じゃない」だけで
絶対におとずれない訳じゃない。と
元気をもらえたのです。
 
 
人種差別はもちろん
あってはならないことですが
 
 
辛い過去が時を経て
自分の糧となり力となってつながり、
実を結ぶこともある、という
ポジティブなメッセージを感じて
とても救われた気持ちになりました。
 
 
双子はどうなってしまうのだろう?という
ミステリー的展開と
背景にある根深い人種の問題、
別の人生を歩む双子のそれぞれに
共感してしまう細かい心情描写、
親子の物語と恋愛物語、
そして「自由」「豊かさ」「幸せ」を問う
哲学的な部分など、
ほんとうにたくさんの要素が詰まった
読み応え満点の一冊でした!
 
 
久しぶりに「のめり込んで読んだ」作品で、
読んで損はない一冊なので、
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