子育てをしていると、

「待つ」ことが多くて

それが愛おしいと思う一方、

「待つ」ことのもどかしさに苦しめられています。

 

 

10月は子の体調がずっと良くなくて

何度か病院に駆け込みました。

 

 

ですが親ができることはそのくらいで

あとは子どもの回復を「待つ」しかできず

悶々とした日々の多い10月となりました^^;

 

 

(風邪をひいて治りかけのタイミングで

また風邪をもらってきて・・というのが

3回続きました。今はやっと治りそうです!)

 

 

そんなタイミングで読んだ

島本理生さんの『シルエット』には

「待つ」ことの辛さ、もどかしさが

詰まっていて、

そのひりひりとした気持ちが

痛いほどわかる・・と唸りました。

 

 

とはいえ本作は

10代の若者の恋愛小説なのですけれども。

 

 

島本理生『シルエット』は

表題作含めた3編の短編集で、

「シルエット」は作家デビュー作になります。

 

 

デビュー当時の年齢17歳。

思春期まっさかりで

わたしは自分のことしか考えていなかったのに

島本さんは17歳にして

こんなに俯瞰的な文章が書ける筆力を

持っていたのか・・と

ただただ驚きでした・・。

 

 

「シルエット」のあらすじは

高校生の主人公「わたし」が

好きな人の温もりを求めて

揺れ動く恋物語です。

 

 

「わたし」は同級生の冠(かん)くんと

健全なお付き合いをはじめましたが、

距離を縮めたいわたしの思いは

冠くんに拒絶されてしまいます。

 

 

冠くんの家には寝たきりの母が居て

母が寝たきりになってしまった

悲しい事件が深い心の傷となって癒えず、

女性と触れ合うことができない、と告白します。

 

 

「わたし」は冠くんが好きな気持ちは

変わらないし、深刻な思いを抱える

冠くんの気持ちを受け止めようと

努力しますが、触れられない辛さが

どんどんつのり、やがて耐えきれなく

なってしまい、一年ほどで別れます。

 

 

それからしばらく経ち、

「わたし」は大学生の恋人・せっちゃんと

お付き合いをはじめて、

温もりあるあたたかい関係を築いていました。

 

 

しかし、冠くんの親友・はじめから

冠くんの近況を聞かされると

気持ちがざわつく自分もいて・・

 

 

そしてある日はじめから

「冠くんのお母さんが入院した」

という知らせがあり、

「わたし」の心は大きく揺れ動きます・・

 

 

嫌いになって別れたわけじゃないけれど

お互い一緒にいることに

心の準備が整うことを「待つ」ことに

どうしても耐えられなかった若者ふたりの心情は

どちらもすごくまっすぐで、

だからこそとても痛ましく感じられました。

 

 

若い時こそ「待つ」のが辛いと思います。

 

 

バイトや勉強でなんやかんや忙しいなかで

貴重な青春時代が過ぎ去ってしまうし

3年経てば離れ離れになってしまうかもしれない

学生時代の一年と大人の一年では

時間の密度があまりにも違います。

 

 

思春期で不安定になりがちな中

好きな人に温もりを求めて拒絶されたら

どれだけショックで、耐え難いか・・

自分も相手も心が強くないからこそ

切なさがどんどんつのる物語展開になっていて

共感しながら切ない思いに浸りました・・。

 

 

ぎゅっと抱きしめてくれるだけで、

手をつないでくれるだけで

どれだけ心が安心するかを

この物語は逆説的に描いています。

 

 

その代わり言葉をたくさん尽くせばいい

というものではなくて、

やはり人の温もりが人の心を

落ち着かせるのだと実感させられます。

 

 

「本当はこんなことが言いたいのではないのだと心の中で思った。

そもそも言葉ではどうにもならないことがあり、

そんなことはわたしが一番分かっていると。

そして、わたしたちは二人で話し合って別れを決めた。

彼は最後までわたしと一緒にいて楽しかったと言ってくれた。

まったく楽しくなかったと、そう言ってくれた方が何倍も楽だった。」

(106頁)

 

 

言葉ではどうにもならないことがある。

ほんとうにそうだと思います。

どれだけ優しい言葉を尽くしても

耐えきれなかった結果を思い出すばかりで

余計につらくなるだけで。

 

 

「シルエット」は温もりの大切さを、

待つことの辛さを

まっすぐで繊細な言葉使いで

描き尽くした名作でした。

 

 

他の2篇「植物たちの呼吸」「ヨル」も

「待つ」ことの辛さ、

温もりがないことの切なさが

しんしんと降る雪のような

静かな筆致で描かれていました。

 

 

静かだけれど、まっすぐで熱い思いが

いつまでも胸に残る、そんな

人間の温もりを見つめさせる

素敵なデビュー作でした。

 

 

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