今年のダービーは武豊騎手騎乗のドウデュースで幕を閉じ日本競馬サークル念願の凱旋門賞制覇への期待が膨らんでいる。
馬券やギャンブル性は否めない厳然たる事実だがサラブレッドの神秘性に夢を託す人々も多く、宮本輝の原作で競馬に興味を持った人もいることだろう。
毎週JRA競馬中継をしているフジTVが開局30周年記念作品として映画化して大ヒットした。「北の国から」の杉田政道監督デビュー作で脚本は池端俊作。
北海道の小さな家族経営の牧場で生まれORACION(祈り)と命名された競走馬。馬主・調教師・厩務員・騎手・生産牧場・育成牧場など競馬社会を構成する様々の想いを込め日本ダービー制覇を目指す。
主に事実上の馬主である和具(仲代達矢)の家族と生産牧場トカイファームの牧場主(緒方拳)親子を中心に四年間の物語は進んで行く。
わずか二時間余りで描くにはとても困難で流石の池端も大苦戦ぶりが窺える。北海道の美しい情景を映像化するのは得意な杉田にも荷が重く、名目上の馬主である娘の久美子(斉藤由貴)とトカイファームの息子博正(緒方直人)の青春ドラマとなり三枝成章の音楽とサラブレッドのハイスピード映像で過剰に感動を誘う映像が目立ってしまった。
緒方親子や仲代達矢・緒方拳の共演、「北の国から」でお馴染みの吉岡秀隆・田中邦衛の出演、加賀まりこ・吉行和子・平幹二朗・石坂浩二・下条正己・三木のり平など豪華ゲストは流石バブル絶頂期のフジTVの実力だが盛り沢山なテーマを整理できない散漫さを呼んでしまい、原作では重要な名付け親・多田役の石橋凌が中途半端だった。
最大の難関である日本ダービーの映像が87ダービーの撮影に挑んだものの、本命馬コントレイルを想定し優勝馬メリーナイスを想定していなかった。仔馬やレースの再撮や編集に一苦労したのは競馬を熟知したスタッフが不在だったのだろうか?
そのため筆者にはストーリーとは無関係な有馬記念でのメリーナイス騎乗の根本騎手が落馬し、2冠馬サクラスターオーの故障発生シーンのドラマチックな映像のほうが頭にこびりついてしまっている。
経済動物であるサラブレットの競走馬社会に飛び込んで深く掘り下げたドラマを望むのは到底無理なのは承知だが、リメイク作があればその神秘性や関係者の献身的な姿の片鱗が見え隠れしたドラマを期待したい。
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