潤
「先生、どうやって・・・・」
俺の質問に先生は笑った。
「松本君、少し疲れているようだね。
私は櫻井君じゃない。
大野君の電話番号も知っているし、
J事務所の関係者とも繋がりがある。」
「あっ、佐藤さん!」
柳田先生がチーフマネージャーだった、
佐藤さんの先輩だということをすっかり忘れていた。
「そうか、佐藤さんに聞けばよかったんだ。
事務所にはあの人の連絡先があるはず。」
「いや、彼はほぼ解雇に近い休業なのだろう?
事務所が最新の情報を持っているかは、わからないな。」
舞い上がる俺に水を差すように先生は冷静に言い放った。
「松本君、事務所で調べるのはそこじゃない。
彼の家族だ。
たしか両親と姉がいたはず。
とくに彼は母親と仲が良かったと聞いた。
誰にも伝えていなくても、母親には教えているはずだ。」
「たしかに・・」
流石だな、先生・・
「じゃあ、さっそく・・佐藤さんに電話して・・」
「待ちたまえ、松本君。
それはあくまで最後の手段だよ。
まずは、私が彼に連絡をしてみるよ。
電話番号と、メールアドレスは知っているから。
あっ、番号を変えているとかは・・無いかい?」
「いえ、大丈夫です。
俺がかけた時通じたので。
少し前ですが・・」
俺は、あの日あんたに掛けた電話が通じたこと、
あんたから折り返しがあったことを思いだしていた。
思い出せば、
そうか、もうだいぶ前のことなんだ。
そうやって時間だけが、足早に過ぎていく。
俺の気持ちだけが追い付いていけないのだろうか。
あんたはどうなんだ?
あんたの中でも時間は止まっているのだろうか・・・
もしそうならば、余計に、櫻井翔には会って欲しくない。
ダメだ、絶対に・・
時間が動き出すのならまだいい・・
巻き戻ってしまったら・・
あんたは壊れるかも・・・・