negai  ピンクの薔薇 最終話(仮) | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

「松本君、

君は自分がその役目をすべきだと

決めたのだね。

それでいいと。」

 

穏やかな山中先生の声が聞こえた。

 

「はい、そのとおりです。」

 

先生、兄貴は俺に託すと言いました。

自分がそばに居たらあの人が苦しむから・・

おまえがそばにいてあの人を支えて欲しいと。

 

あんたがいるから、

口には出さなかったけれど、

山中先生は兄貴のことを知っている。

あんたが兄貴を深く愛していたことも。

今、その記憶がなくなったあんたを

支えていくということは、

いつか記憶が戻って、

去ってしまうかもしれないという

恐怖との闘い。

その覚悟ができているかを

聞いているんだ。

あんたにわからないように。

 

「先生、お義母さん。

覚悟はできています。

でも・・・」

「でも?どうしたの松本さん?」

 

お義母さんが、

心配そうな顔で俺を見た。

 

「肝心な智さんに伝えてなくて・・」

 

そう、まだあんたに何も言ってない。

断られるかもしれないって、怖くて・・

 

「それなら大丈夫よ、松本さん。

二人で、幸せになって。

 

ようやく、ようやく、智さんが・・・」

 

大丈夫って?

と考える間もなく

お義母さんは山中先生の胸で泣き崩れた。

 

「えっ・・」

「お義母さん、長い間心配かけてごめんなさい。

僕は潤と幸せになります。

だから、もう僕のことは心配しないで。

お腹の中の僕の弟のことだけ

心配してください。」

 

いつの間にかあんたが

お義母さんの肩を抱いていた。

あんた顔も濡れている。

ゆっくりとあんたが俺の方に向き直った。

 

「潤、ありがとう。

こんな僕でよかったら、

ずっと潤のそばにいたい。

離れたくないよ。

 

嬉しいよ、潤」

 

あんたが俺の胸に飛び込んだ。

 

「それは、イエスということだよね。」

 

確かめずにはいられなかった。

 

「んふふふ・・・潤。

潤、潤・・」

 

その笑顔は、俺が一番見たかったもの。

何にも代えがたい宝ものだよ。

 

俺は全力であんたを守るよ。

それが俺の幸せなんだ。

愛している人のそばに居られる。

 

「返事を聞いたからには

もう絶対に逃がさないから、覚悟してよ。」

 

俺は、あんたをぎゅっと抱きしめた。

よかった、ああ、俺幸せだ・・・。

 

「ねぇ、潤、ケーキ、もう食べてもいい?

クリームが溶けちゃうよ。」

 

いきなり、上目遣いで、俺に催促するあんた。

なんだよ、今このシーンで言うセリフ?

 

「たしかに。

せっかく松本君が

苦労して買ってきてくれたケーキだ、

美味しいうちにいただこう。」

 

山中先生も笑うのをこらえている。

 

「そうだよね、先生。

じゃあ僕が切るよ、

潤、お皿取ってよ。」

「はいはい。」

 

俺はトレイに重ねてあった

ケーキ皿を渡した。

 

「うふふふ・・」

 

ニコニコしながら、

ケーキを切り分けるあんた。

ははは・・あんたのそんなところが

大好きだよ、智。

 

今まで辛いことばかりだった。

もう、いいよね。

何も思い出さないでよ。

これから俺と

楽しいことだけの思い出を作っていこう。