リフレイン 朧月 75 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

75

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「智、なんで、

自分で帰ってきたんだよ。

どうして華姉に

迎えに来てもらわなかったんだ。」

 

俺は智を抱きしめながら、

怒っていた。

 

「智、自分が重病人だって

忘れてないか

倒れたんだぞ、それも昨日。

大丈夫なのか?

智もう大丈夫なのかよ!」

 

智の両肩を持って

答えろとばかりに揺さぶる。

 

心臓が止まるかと思ったんだ。

途中でまた倒れたら

それなのに、なんで・・。

 

智が心配させたことには怒り、

その一方で外泊してまで、

ここに戻ってきてくれたことが嬉しくて。

その相反する気持ちを、

俺は智にうまく伝えられない。

 

「しょ・・しょう・・

は・・離して」

 

智が苦しそうな顔で俺を見た。

あっ・・

不味い・・

 

「うっ・・・・」

 

智が俯いて、固まった。

 

「だ、だいじょうぶ?智・・」

 

しまったと思ったが

後の祭りだった。

 

智はそのまましゃがみこんだ。

蹲って動かない。

 

「わ、悪かった。

智ごめん。」

 

背中をそっと摩った。

俺は馬鹿か・・

具合が悪いんだ。

それを、

い詰めるようなことをして・・・

 

「智、ベッドに行こう。

あっ、病院に

いったほうがいいか?」

 

智の横に跪いて顔を覗きこむ。

 

「えっ・・・」

 

智が泣いている。

そんなに具合が悪いのか?

 

「病院に行こう。

俺に掴まって。」

 

俺は智を抱えようと

両手を差し出した。

 

「違う・・翔。」

 

智が俺の手に

自分の手を重ねた。

 

「僕、嘘ついてたのに・・・

自分勝手なのに・・」

 

小さな声だった・・

 

「な・・何・・」

 

「翔は、僕を

心配してくれるんだね。

こんなわがままばかりの僕を・・・」

「さ・・とし・・」

 

俺の手を押さえていた智の手が

ゆっくりと離れた

下を向いていた智が顔を上げる。

 

「翔、今日翔の好きなもの

作ったんだよ。

食べてくれる?

消灯時間にまだ間に合うから、

僕、病院に戻るね。」

 

智はゆっくりと立ちあがった。

もう泣いてはいなかった。

 

「相葉先生に

明日から治療に入るよって

いわれたから」

 

立ちあがった時と同じように

ゆっくりと足を進める。

 

なに?

何を言ってるんだ・・

 

「智!」

 

俺は智の腕を掴んで引いた。

智がバランスを崩し、よろける。

 

ダンスが得意で

運動神経抜群の智が、

こんなことでよろけるなんて・・

 

「智、待てよ。

まだ俺は何も言ってないだろう。

帰るな。

話を聞いてよ。

 

俺は・・俺は嬉しかったんだ。

智が、智がそう思ってくれたことが。

俺のこと忘れたくないって

思ってくれたことが。

俺も、俺のこと

智に忘れて欲しくない。

俺の方がもっと勝手なやつだ。

自分勝手だよ。

それでも、

そんな最低な俺でいいのか?

智、俺でいいのか?」

「翔!」

 

智が俺を見た。

また涙が溢れそうになっている。

 

「大好き・・

翔が大好き・・

忘れたくない。

翔のそばに居たい・・

 

僕を許して・・。」

 

智が俺の胸に

飛び込んだ。

 

「いやだって言っても

俺は離さないから。

智は知っているだろう。

俺の諦めの悪さとしつこさを・・

俺と出会ったのが

智の一生の不覚だよ。

俺はずっと智と一緒に

いるから。」

 

智を強く胸に抱きしめながら

俺は自分に言い聞かせるように

叫んでいた。