リフレイン 朧月 76 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

76

 

 

 

 

 

翔が僕を抱きしめてくれた。

僕のこと怒っても、

嫌いになってもいなかった。

それどころか、

ずっとそばにいてくれるって・・・

 

嬉しくて・・

言葉も出なくて・・

ただ、その胸にすがって泣いた。

 

 

 

 

「智・・落ち着いたかい?」

「あ、あっ・・ご、めん。

重かった?」

 

どのくらい経っただろう。

僕は、ひざまずいた翔の上に

体を預けるようにして

抱き着いていた。

絶対に重かったはず。

 

「う、うん。

ちょっと、足しびれたかも・・

あっ・・いたた・・」

「大丈夫?痛い?」

 

立ち上がろうとして足に力が入らず、

ゴロンと転んだ翔に

慌てて手を差し出した。

 

「あはは。

二人で同じこと言ってる。」

「フフフ‥そうだね。」

 

なんか、おかしくて、

さっきまで泣いていたのに

僕は笑っていた。

目の前の翔も、笑ってくれる。

 

「腹減ったな。

智、飯作ってくれたんだろう。

食べたいな。」

「うん。食べて。

沢山作ったから・・

ビールもあるよ。」

 

僕たちは手を握ったまま

立ち上がった。

 

 

テーブルに座った翔の前に

皿を並べる。

 

「旨そう、智。

食べていい?」

「まだダメ」

 

料理に手を伸ばしかけた翔の手を

ピシャリと叩いた。

 

「乾杯してから」

「乾杯?」

 

翔が訝しがるのも無理はない。

お祝い事なんか何もない。

 

「翔が、許してくれたから。

嬉しいから・・

乾杯」

 

なんだよそれ?

と言いながら、

翔もグラスを上げて

乾杯と付き合ってくれた。

 

「智は飲んじゃだめだろ?」

 

グラスに口を付けようとした僕の手から

ビールを取りあげて

翔が美味しそうに一気に飲み干した。

 

「あぁ~旨い」

「いじわる・・」

「さて、いただきますか。

あ~これ俺の大好物だぁ。」

 

僕の抗議を無視して

翔がもぐもぐと満足そうに

料理をかき込み始めた。

 

その姿を見ているだけで、

僕は幸せだった。

僕の作ったご飯を食べている。

美味しそうに・・沢山・・

僕はじっとその姿を見ていた。

 

 

 

 

 

「翔、月また見えないね。」

「うん、雲が多いからな。」

 

僕は翔と並んで、

ベランダから空を見上げていた。

暗くなった空には

月どころか星さえ見えない。

 

「また、ここから公園の桜みたいな。」

「うん、綺麗だったな。

ここで酒を飲みながら智と一緒にみたいな。」

 

翔が僕の肩を抱いて、僕の唇に

そっと唇を重ねた。