閑居無線

趣味のアマチュア無線・電子工作など

年代物FMチューナの修理

2018-10-25 22:04:13 | 無線

 先日、近所から2件のFMチューナの修理を頼まれました。

 1件目は、久し振りに電源をONしたが、音が出ないということです。年代物のチューナです。
早速実験用のアクティブスピーカに接続し電源ONしました。
シャーというノイズ音が出ています。アンテナ端子に実験用ワニ口クリップコードをつけダイヤルを廻して(今時のチューナは押しボタンで選局ですが、このチューナはバリコンでチューニングです)NHKFMに合わせると、ノイズはありますが放送が聞こえます。
アマチュア無線用の50MHz帯のアンテナに接続すると、問題なく聞こえます。他の放送局も良好。
AMは内臓のバーアンテナですが、なんとか受信できます。中電界強度地帯ですので、これも先ほどのアンテナの同軸ケーブル網線側に接続すると調子よく受信できます。
「なーんだこれは?」と思っているところに、このチューナのオーナ(私の従弟です)が現れました。
状態を説明すると、「持ち込む前にケースを外してエアーコンプレッサーで掃除した」とのこと。
放送を受信しながらIFT(中間周波トランス)などを少し回して調整しました。

3時間ほど電源ON、この間に叩いてみたり、スイッチ類のON/OFFの繰り返しをしてみたのですが、正常に動作します。
オーナも私も納得は行かないのですが、とりあえず引き上げていきました。

 その2時間後に、2件目の修理依頼。なんでも1件目のオーナがチューナを持ち帰るのを見て自分のFMチューナも修理依頼となったようです。
こちらのオーナは、オーディオマニアです。後で知ったのですがチューナは30、40年前のYAMAHA製で、当時定価で¥68,000とか。
こちらも音が出ない(?)とのこと。また後部にあるバーアンテナが折れていてテープを巻いて補修してあります。

 1件目と同様にテストをすると、これまたFM、AMとも放送が視聴できます。(返還後オーナに聞いたところ、部屋を移動したとのことで電波が弱くなったようです)
このまま返すのは能がないので、SSGから信号を入力してみました。アマチュア無線機の感度の測定(20dBQSや12dB SINAD)はわかるのですがFMチューナの特性は取ったことがありません。
ネット検索の取説にはIHF規格でチューナのスペックが書かれていますが、SSGのレベルを徐々に低くして行きノイズが出てくるレベルを測定して、他のチューナと比較すれば感度の劣化具合が分かります。
実際に測ると確かに感度は悪いようです。とりあえず前回と同様にバリコンについているトリマコンデンサとIFTを回して調整しました。
他のチューナと比較ではまだ少し悪いようですがこれで妥協しました。マルチプレックス部は回路図等がありませんのでそのままとしました。
AM部も同様に調整し他のチューナとほぼ同様になり、ダイヤルも発信周波数を調整し合わせました。
折れていたバーアンテナは、アンテナそのものは大丈夫でしたので、ケース部を接着剤とヒシチューブで補修。
 これで終わりということで木製の上蓋ケースをねじ止めして、最後のチェックというところで不具合発見。
このチューナは、ボリュームで可変できる出力端子と固定レベルの2系統があるのですが、可変のRch(右)出力が大きく歪んでいます。
固定出力は正常なので不良個所はかなり絞り込めます。
トランジスタの端子電圧をあたるとコレクタ電圧がLchと異なっています。動作点がずれているようです。

冷却スプレーで冷やすと完全に音声は消えてしまいます。反対にトランジスタのプラスチックパッケージに半田ごてを付けてると歪なしの音楽が聞こえます。
この2SC458が不良のようです。トランジスタチェッカーでみましたが、正常品と変わりありません。とりあえず取り換えに。
 30年ほど前にはよく使われたものですが手持ちがありません。結局2SC1815のYランクに取り換えました。
コレクタ電圧もLchと同等になり、正常に聞こえて修理完了です。Lchも予防のため同じものに取り換え全て完了し返却となりました。

 この部分の回路を書き起こしたのですが、納得のいかない回路になり頭を抱えました。トランジスタの極性がおかしいのです。通常のこの手のプラスチックモールド(TO92パッケージ)の端子は品番表示側からみて左からECB(エクボと覚えています)です。規格表もECBになっています。
結局分かったのは、この2SC458(460なども)は、BCEと反対なのです。品番表示があるほうが裏側のようです。

随分、むか~しのことを思い出しました。周波数安定度が高いといわれたTRIO社のVFOの回路を参考にして自作したのですが、この時にこのBCEを間違えたのを思い出しました。

 昔のFMチューナ(ラジオも)のチューニングはバリコンの回転です。ダイヤル表示を左右に直線移動のスケールにするため、プーリーを使った糸掛けダイヤルです。
結構複雑に糸がかけられ、バックラッシュが無いように工夫されているようです。またケース内のバリコンの配置位置によるためより複雑になっているようです。

修理中に誤って糸が切れた場合には、元のとおり直せないかもということで、事前にデジカメで写真に収めておきました。
1件目修理のオーナは、精密機械部品の製造をしていて結構器用なのですが、この機構に関心していました。

 昔の技術屋さん凄い!!

 

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