指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『宮本武蔵』

2022年12月06日 | 映画

1961年の内田吐夢監督作品、5部作で、なんども見ているが、ユーチューブにあったので、見る。

その後の作品とかなり違うことに気づく。

                

冒頭、関ヶ原で大坂方として負けて泥沼を中村錦之助と木村功が這いずり回っているところから始まる。

かなり長くて、ここは満州国に行き、そのまま中国に残って苦闘した内田の体験が反映していると思う。

木村は、野盗の情婦だった木暮美千代とできてしまうが、この辺は実に戦後的風景のように見える。

それにしても、木暮は戦後的で「実に色っぽいなあ」と思う。

武蔵は、伊吹山から故郷の岡山に戻ってくるが、大坂方の残党狩りが行われている。

その首領が花沢徳衛と言うのが良い。善人役が多い花沢だが、実に憎々しく、二言目には入江若葉のお通に言い寄る。

この人は、戦前からの共産党で、たぶん死ぬまで共産党支持だったと思う。

村人からも迫害されるのは、まるで戦後の特攻隊帰りへの見方のようにもみえる。

そして、遂には大木に吊るされるが、これは東京裁判で、絞首刑になったA級戦犯たちのようにも見えてくる。

最後、姫路城に押し込められた武蔵は、万卷の書を読まされるが、これは文化国家としての日本の姿のように見えてくる。

いずれにしても、全編を通じるのは、内田吐夢の戦後の日本への目であると思う。

 

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