「あれがなかったら、今のデランナ…、ないのよ…。」 | THMIS mama “お洒落の小部屋”

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好きになれない。  vol.103.

ドキドキ 通話を切って奈都美、
「カンちゃん、ごめん。これから私と尾田君、デランナ…行かなきゃ。」

葉月、
「へっ…???」

「デランナの山城専務、私と尾田君に会いたいんだって。明日、ヨーロッパに発つからその前に…。」

その話に葉月、
「ふん。分かった。うん。行っといで~~。」
そして腕時計を見て、
「これからだと…、多分、直帰ねぇ。」

奈都美、
「ん~~。だと…、思う。」

「またまた、素敵な話…、持ち込まれたりして…。ふふん。」

奈都美、口をへの字にして、
「どうだか…。」

「うん。じゃ、私、これから社に戻る。明日、また。」
「うん。じゃ。お疲れ~~。」

「お疲れ~~。」



葉月と別れて奈都美と伸永、通りでタクシーを捕まえて。

走行中、伸永、ポツリと、
「七瀬さん…。」

「うん…???」
伸永、次の言葉が思いつかない。

奈都美、伸永を見て、
「へっ…???どしたの…???…ノブ…、さっきから…ちょっと、様子…変よ…???」

そんな声に伸永、
「えっ…???いえいえいえ。そんな…。大丈夫ですよ。ただ…。」

奈都美、
「ふん。ただ…???」

「…ユッコさん…。リハビリ…開始で…。ほんとに良かった~~。」

奈都美、
「は…あ…???かっかかかか。何それ…???」
けれども、
「うんうんうん。良かった、良かった。もう少しの…辛抱だ…。」

伸永、
「はい。」




そして…、デランナに到着した奈都美と伸永、
玄関で待っていた嶌安澄(しまあずみ)、
「クック・ル・ポットの…七瀬奈都美さんと…、尾田伸永さん…???」

奈都美、
「あっ。はい。」

「人事部の、嶌安澄と申します。初めまして。」

奈都美、顔を傾げて…、
「あ…、はぁ…。

安澄、笑顔で、
「ご案内…します。」

そしてまた、来た方向に…。

奈都美、
「あ。はい。…はい…???」



玄関に待たせておいた車に、安澄、
「どうぞ。」

車に乗り込んで奈都美、伸永。

安澄、運転手に、
「お願い。」

運転手、
「畏まりました。」
そして後ろを見て安澄、
「ごめんなさいね、いきなりで…。」

奈都美、
「あっ。いいえ…。」

安澄、
「なんだかんだで…ゴタゴタしてて…。」
 

「あ…。はぁ…。」




車が到着した場所はイタリア料理のお店。
3人を待っていたのが、ひとりの老人、そして専務らしき女性と園枝真香。

真香を見た途端、奈都美、
「園枝さ~~ん。」

真香、にっこりと、
「しばらく~~。」
そして真香、椅子から立ち上がり、
「紹介します。こちら、クック・ル・ポットの七瀬奈都美さん。そして尾田伸永さん。」
続ける。老人と女性に手を差し伸べて真香、
「そちらが、株式会社デランナ、代表取締役社長、舘林雄(たてばやしゆう)。」

奈都美、伸永、
「しゃ…、社長…。」

真香、
「そして、専務の山城恵麻。」

恵麻、
「初めまして、七瀬さん、尾田さん。」

舘林、笑顔で…。

「そして、2週間後には、山城専務、取締役社長に。」
安澄。

奈都美、
「え~~~。凄~~い。」

「以前の…、ネットでの…。」

奈都美、伸永、
「あ~~。」

「あの件で、会社のイメージが丸潰れ。…けれども、あれから一転して、クック・ル・ポットの製品が、物凄い反響。あれが決め手で、荻は地方に異動。そして園枝はその部長に昇格。」

奈都美、
「わぁ…。」

「槙坂常務も、支店の支店長に降格。そして佐山玄…副社長は更迭ということになります。」

伸永、
「凄い。…でも、そんな会社の…、企業秘密のような…情報…。」

安澄、笑顔で、そして唇を絞って、
「そぅ…。企業内情報…。でも、この状況に…、させてくれた…と言うのが…。あの…、例のネット戦略。あれがなかったら、今のデランナ…、ないのよ…。それに…、既に辞令も出てるから…。」

恵麻、
「七瀬さん。尾田さん。お馨から聞いた。本当に、ありがとう。ようやく…、膿…、出せたって感じ。社長も大喜びで…。その事が、原因かも…知れないけど、社長の容態もみるみる回復して…。…実は、社長…病気で入院してたから…。…そして…、社の人事は、取締役会で、満場一致で…。今日が…、いい機会だから…、急で…、申し訳なかったけど…。」

奈都美、
「いえいえいえ。私たちなんて…。」







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