将輝、入り口の自動ドアから廊下に。
すぐ傍のエレベーターは使わずにその隣の階段を…。
大急ぎで…。そしてナースステーションに。
そして、
「すみません。」
息使い荒く。
看護師たち、
「あら、将輝君。」
丁度その場にいた医師も、
「おぅ。」
将輝、いきなり形相を変えて、
「だすけてっ!!!」
瞬間、看護師も医師も、
「どうしたの!!!!」
「どうしたっ!!!!」
将輝、カウンターに右手を、前屈み状態で、
「屋上で。屋上。」
医師、
「屋上…???」
看護師も、
「屋上…???」
瞬間、駆け足で、医師。看護師も追い駆ける。
将輝、
「はぁ~~。はぁ~~。ひでぇ~~。」
思いっきり口の中の物を飲み込み。
看護師、そんな将輝に、
「将輝君。どうしたの~~???」
既に屋上に着いた医師と看護師。そしてガーデンにいるふたりの少女。
医師、
「どうしたっ!!!」
看護師も一緒に駆け付ける。
「瑞樹さん。」
未だにダラリとしている理沙。
傍で泣いている麗亜、
「お姉ちゃん、お姉ちゃん。」
そして、医師と看護師を見て、
「先生…。」
看護師、麗亜を見て、なんとか笑みを…、
「うん。大丈夫だからね~~。」
医師、理沙を診て、
「まずい、この状態だと、完璧に神経…やられている。ショック状態だ。このまま運ぶ。」
看護師、
「はい。」
「そして、家族に連絡するように。」
「分かりました。」
「すぐにMRIの手配を。」
看護師、頷いて、
「はい。」
数人がかりで理沙をストレッチャーに。そしてMRIに…。
放射線技師の成瀬眞(なるせまこと)、画像を見ながら、
「おぃおぃ、勘弁してくれ。」
整形外科医師の駒田雄介(こまだゆうすけ)、腕組みしていたのを解いて、
右手指で顎を撫でるように、
「ん~~~。手の施しよう…、ないと…言う事か~~。一気にきたようだ。」
成瀬、
「冗談じゃないぜぇ~~。ついこの間の画像じゃ、全く問題なく…、順調に…。なんだよこりゃ。神経ズタズタじゃねぇか。おぃおぃおぃおぃ、駒田先生~~。」
そして成瀬、いきなり机に左肘を突いて額に左手を、ガックリと。
「はぁ…。」
「瑞樹君に、何かあった。」
駒田、ポツリと…。
「何かの切っ掛けで、大きなショックが加わった。…その結果…。」
そしてまた腕組みをして、
「ん~~~。なんてこったぃ。」
目をあちらこちらに。
「ふぅ。」
成瀬、右上に顔を…、
「駒田先生…、家族に何て…。理沙ちゃん、もぅ…。」
駒田、口を尖らせて…。…そして、
「仕方…、あるまい。…状況は…、そのまま…。」
成瀬、頭を後ろにガクンと。
「…ったく、やってらんねぇよ。…まだ…高2だぜ。」
ナースステーションで、駒田の話を聞いての看護師たち。
「え―――――――っ!!!!…そんな…。」
「そういう…訳だ…。既に…、手の施しようのない状態に…。」
看護師主任の高崎凪(たかさきなぎ)、
「どうして…、そんな…???…全く問題なしに…、順調に…。」
他の看護師を見ながらも…。
看護師たちも、頷きながら…。
「まっ、とにかく…、病院で治療、診察している以上、完璧じゃあない。…患者は…、とにかく、体に何か、異変があるから…こそ、ここにいる訳だから…。」
そして駒田、首の後ろに手を、
「それを…、追及して、常にリサーチ、結果へと導く。そして…、患者さんのために最高の状態で…。」
そこまで言って駒田、
「あっ、瑞樹さんの…、ご両親…???」
高崎を見て。
高崎、
「あっ、はい。瑞樹さん、おかあさんが…すぐに。」
「おっ。」
病院の最寄り駅で蒼介と待ち合わせをした和奏、駅から出てくる蒼介を見て…。
蒼介、小走りで車に。そして助手席を開けて、中に。
すぐさま和奏、蒼介にしがみつくように、
「蒼介~~~。」
涙を零しながら…。
蒼介、そんな和奏の体を抱きながら、
「うんうん。和奏さん。うんうん。」
唇を絞りながら…。
「とにかく…、病院に行こ。運転…、大丈夫…???代ろうか…???」
その声に和奏、涙で濡れた頬を右手で拭って…、
「ううん。大丈夫。うん。しっかりしなきゃ。」
麗亜はその後、自分の病室のベッドで…。
将輝、静かに歩きながらナースステーションに。
「あのぉ~~。」
「あら、将輝君。」
看護師の、浜崎春風(はまさきはるか)。
将輝、目をあちらこちらに、
「あの…、瑞樹…さん。」
信じて…良かった。 vol.014. 将輝、入り口の自動ドアから廊下に。
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庄司紗千 「雫音〜shizukune〜」
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。