杏美と麻理絵、玄関に。
将輝と馨、引き戸を開けて、
「こんにちはっと〜。」
「こんちわ〜〜。」
杏美、入ってきた将輝に、
「ねね、理沙、事故の事、示談にしたって…。」
その声に将輝も馨も、
「へっ…???示談…??それって…、どういう事…???」
瞬間、杏美、
「かかかかか。やっぱり分かんないか。」
理沙、車椅子で、
「いらっしゃ〜〜い。」
麻理絵、将輝と馨に、
「つまりは理沙の事故。なかった事にするって事。」
瞬間、馨、
「うそ。まじ…???」
将輝、いきなり理沙を見て、
「おま…。決めたのか…???」
その声に理沙、顔をコクリと、
「うん。」
瞬間、杏美、
「へっ…???決めたのかって…。何、将輝君、知ってたの…???」
将輝を見て、理沙を見て。
将輝、瞬間、
「あっ、俺は…、ただ…。」
理沙、
「私が、将輝君に話したんだよ。」
杏美と麻理絵、
「話した…???」
理沙、
「将輝君、おかあさん、いないから。」
杏美、両目を左右に、
「あっ。あ〜〜〜。それでか。」
馨はそんな将輝を見て。
麻理絵、
「へっ…???将輝君って、おかあさん…。」
理沙、
「うん。小さい時に、亡くなってる。」
「うそ――――――っ!!!」
口に両手を当てて麻理絵、
「知らなかった〜〜。ごめんね、将輝く〜〜ん。」
思わず麻理絵、将輝に頭をペコリ。
杏美と理沙、途端に、
「いやいやいや。」
杏美、
「マリ〜〜が、なんで将輝君に謝る。」
将輝、
「俺、別に謝れる事、何も…。」
馨、思わず、
「ぷっ。」
麻理絵、
「あっ、そっか…。つい…。」
理沙、将輝と馨に、
「上がって。始めよ。」
馨、将輝、
「お邪魔しま〜〜す。」
リビングに向かいながら理沙、
「将輝君、小さいときに…。なんだっけ…病気…???」
将輝に。
将輝、いきなり振られて…。頭を撫でながら捻って、
「なんだっけ…???確か…。いきなりぶっ倒れて、やばいヤツ。俺が小学生の頃だから…。…でも、今は、流美姉ぇがいるから…。」
麻理絵、
「ふ〜〜ん、そうだったんだ〜〜。」
杏美、
「あっ、でね、理沙の事故。」
将輝、
「あ〜〜、うん。」
「将輝君って、どこまで知ってんの…???」
将輝、思わず目を右左に、
「あっ。え…と、事故を起こした人が女性で、しかも、小学生の子供がいる。…で、その女性の人が事故後にうつ病になったって…。」
瞬間、馨、
「え〜〜!!!マジで。」
「うん。」
杏美、
「わお。んじゃ、全部知ってんだ。」
理沙、
「…って言うか、私、隠し事って、やだから。将輝君には、病院でなんだかんだ。それに、麗亜ちゃんとも友達だし。」
そして理沙、将輝を見て、
「私の事、話して将輝君、流美さんにも話したみたいだから、麗亜ちゃんも知ってると思うし。」
杏美と麻理絵、
「えっ、そうなの…???」
将輝、申し訳なさそうに、口をへの字にして。
「あっ、あ…、まぁ…。」
理沙、
「将輝君の、その…、流美さんて、将輝君のおばさんなの。」
杏美、
「うん。」
麻理絵、
「うそ。私、それも初耳。」
杏美、瞬間、
「あ、あ〜〜、はぁ〜。かかかか、それも、マリ〜〜には…。話して、なかったなかったよね〜〜。あははははは。…でさ、ついでに言っておくけど、その流美さんって人。将輝君のおばさん。看護婦なの。」
その声にも麻理絵、
「へっ…???そうなんだ~~。あ~~。だから、理沙の、その…、事故の女性の人の鬱~~。」
2、3度頷いて麻理絵、
「…って言うかさ、アズ~~。ついでって言う事…、かか、ないじゃ~~ん。ねぇ~~将輝く~~ん。」
理沙、
「じゃあ、やっちゃおうっか、勉強。」
麻理絵、
「うんうん。おばさんたち、帰る前にね~。」
何かしら、和奏が買い物に行っている間の、
理沙の見守りと留守番役になっているような4人。
僅かながらも、学校の授業よりも頭に入っている風な将輝と馨。何故か目付きも違う。
勉強を教えながらの理沙と麻理絵、そして杏美。勉強の途中で…。
ふたりを見て、
「あのっさ。」
杏美、
「将輝君も、馨君も、その目付きで、いっつも授業受ければ…いいと思うんだけど…。もしかして…、違うの…???」
その声に麻理絵も理沙も、思わず、
「ぷっ。」
麻理絵、
「だよね~~。最初とは目付き、全然違うって感じなんだけど…。かかかか。」
理沙も、その声に頭を2、3度、コクリと、
「うんうん。」
信じて…良かった。 vol.139. 理沙、「将輝君、おかあさん、いないから。」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
《PR》
庄司紗千 きっと大丈夫
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。