瞬間、瞼を落として…、涙が頬を…。一言、「良かった~~。」 | THMIS mama “お洒落の小部屋”

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好きになれない。  vol.122.

ドキドキ 病室には幸乃。

「へっ…???…おばあちゃん、珍しい~~。いつも、午後からなのに~~。」
ベッドでキョトンとして祖母の幸乃を見る柚香。

その声に幸乃、
「へっへっへっへっ。実は~~。近くのシェルフドール。今日から限定販売のショートケーキ。出たんで、柚香にって思って、早速買ってきたんだよ~~。食べる…???」

いきなり柚香、目を真ん丸にして、
「うそ――――――っ!!!うんうんうん。食べる食べる。もぅ~~、何だか分かんないけど、さっきからお腹空いて、空いて~~。」

幸乃、嬉しそうに、
「ははは。そうだろ、そうだろ。うんうんうん。」
そして、ケースを開けて、その中身を…。

柚香、
「うわ~~~。かかかか。美味しそう~~。」

幸乃、キャビネットから小皿を出して。柚香に、
「はい、どうぞ~~。」

柚香、
「かかか。あ~~ん、メグにも、食べさせた~~い。」

その声に幸乃、ニッコリと笑って、
「そうだね~~。でも…。まっ。いつ来てくれるか…、分かんないから…。」

「な~~んだよね~~。」

そんな柚香を見て幸乃、思わず目頭が熱くなり…。
「はは。おばあちゃん、ちょっと先生に…。」
下を向きながら…。

柚香、
「あっ。うん。」

そして幸乃、病室から出てドアを閉めてドアに背中を…。
瞬間、瞼を落として…、涙が頬を…。一言、
「良かった~~。」


ゆっくりと歩きながら幸乃、ナースステーションの方に…。


柚香、ケーキを食べながら、
「んふ。お~~いし。」


ナースステーションに幸乃。看護師たち一礼して、
「連絡、ありがとうございます。」

上平、幸乃を見て、
「こんにちは~~。今、先生呼びますね~~。」




渡り廊下のベンチで幸乃、松峰から事情を聞いて…。

そして…、口を真一文字に…。
「そう…ですか~~。そんな事が…。」

「まま。確かに、柚香さん、戻られた事は安堵しているんですが…。今も申し上げたように…。」

幸乃、松峰の話を聞きながら頷いて…。
「万が一にも…。また…体が…、陽織に…。」

「確証はありません。…ただ…、一度、こうなってしまった以上…。」

幸乃、松峰の顔を見て、
「ありがとうございます。」

松峰、
「けれども汀さん。」

幸乃、一度瞬きをして、
「あ、はい。」

「けれども…。今、柚香さんの体の中で、何が起きているのかは分かりません。…もし万が一にも、陽織さんが…。…けれども、決して、諦めないでください。体自体は、何も問題なく、柚香さん自身なんです。これだけは…一生涯。間違いなく。」

その言葉に幸乃、唇をきつく閉じて、医師に僅かに頭を…。

…ところが…。丁度その日を境にして、3日。そして1週間経ち…。
10日経ち、一向に柚香の身体に異変はなく、以前に見られた陽織の症状を垣間見る事はなく…。

2週間。そして3週間。1か月…が、過ぎた。

しかも…、柚香の病状は著しく改善されていた。医師たちも、喜んでいいのかどうなのか…。
意見を投じてはきたのだが…。

これ以上、何事も起こらないというのであれば入院しているというのが適当ではない。
との、判断で、晴れて柚香、退院。


真輝とも退院の前日に会い、退院の報告、喜んでくれた。
既に車椅子は卒業。自分の足で歩いていた。

久しぶりの我が家。凡そ3か月振りである。

柚香、家に入るなり、仏壇に。そして、
「おとうさん、おかあさん、陽織、帰ってきたよ。」

仏壇には若き日の父、裕司の顔と、母、萌衣の顔。そして2歳の陽織の顔。
その3人の写真が柚香を見て、笑っているようだった。

柚香、
「さて…と。」

幸乃、
「部屋かぃ。」

「うん。随分と久しぶり~~。窓開けて、換気しなきゃ。」

その声に幸乃、
「かかかか。そんなのおばあちゃん、毎日やってるよ~~。毎日、ここにいるんだから~~。」

その声に、目をパチクリとさせて柚香、
「あれ…???…あっ、そっか~~。…だよね~~~。てへっ。」

けれども幸乃、ニッコリとして、
「うん。でも、行っといで。久しぶりの自分の部屋。」
そこまで言って幸乃、
「ははは。何も変わっちゃあいないけどね。」

柚香、階段を上りながら、
「うん。」



そして…、部屋に入るなり、
「帰ってきた~~~。」

窓を開けて、とにかく空気を…。
そして机の上。壁に掛けてある洋服たち。そして本棚にキャビネット。そしてベッド。
「あ~~~~。」
そのまま両腕を横に伸ばしたままで、背中からベッドに、バン。
「ふぅ~~~。」

久しぶりの自分のベッド。
「気持ちいい~~~。」



それから30分程。様子を見に来た幸乃が、ベッドの上で眠っている柚香に微笑んで、
「ふふ。」

それから…、2時間も経っただろうか、下から、
「柚香~~。おばあちゃんと買い物行くか~~ぃ。」

その声でハタと目が覚めて柚香、
「行く~~~~。」



台所に降りてきて、
「行こ、行こ。私も久しぶりに。」

幸乃、ニッコリと、
「うん。」








LIBRA~リブラ~   vol,015.   瞬間、瞼を落として…、涙が頬を…。一言、「良かった~~。」

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