鳥とハーモニカ

はなぶさ堂の日々の事。

竹かごのおはなし

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私はできる限りプラスチック製品を部屋に持ち込まないようにしています。
とっても便利な樹脂製品、当然生活の至る所に使われているし、車やPC、携帯端末は然り、洋服やカバンにだって装飾されている時代だから「許せない」とか「絶対ダメ」という風には思わないのだけど、ゴミになっても捨てにくいし、使い込んでもただ傷ついて汚れていく一方な気がして、道具としては正直あんまり好きではないのです。
そんな「はなぶさ堂」が飼い主なものだから、うちでは鳥たちもみんな竹かごで暮らしています。
そして、今日はそんな竹かごのおはなしを綴ろうかと思います。

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竹かごはそもそも、鳥獣保護法が今ほど厳しくなかった時代に、野鳥飼育をされていた方々が主に使用していたので、最近では種類も量もだいぶ減ってきています。
伝統工芸品の要素もありますから、カゴを齧ってしまうインコ類には適していませんし、餌が飛び散りやすいなど、使いにくい部分も多々あります。
古い鳥屋さんに足を運ぶと、フィンチや輸入野鳥の類に竹かごを使っているところも未だありますが、みなさん口を揃えて「野鳥がダメになってから、竹かごは売れなくなった」と仰います。
竹かごはアジアのいろんな国にその国独特の形があって、日本では主に写真の様な縦長のカゴが主流です。
そして、サイズにも昔ながらの決まりがあって、「尺貫法」?と言うのか知ら?
尺(145×295×190mm)/尺1寸(175×345×236mm)/尺2寸(195×375×255mm)〜の様にカゴのサイズが決まっています。
ちなみに上の写真の4つは左から7寸(120×215×272mm)/尺/尺1/尺2、尺より小さいものは尺が外れて○寸と数えます。

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例えば、文鳥をつがいで飼うなら最低でも尺2は欲しいところです。
はなぶさ堂の文鳥はみんな尺2カゴで生活をしています。
ちょっと狭いんじゃない?とお思いの方もいらっしゃると思いますが、
意外に奥行きもあって、のびのびと子育てをしてくれます。

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十姉妹やキンカチョウなら尺1でも充分広々します。
みんな天然素材の温もりに抱かれて住み心地は良さそうに見えます…。

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薄雪鳩には尺4寸(250×430×310mm)の大き目のカゴを使っています。
薄雪鳩の体長は文鳥と然程変わりませんが、文鳥に比べて主翼や尾羽が長いので、竹かごでも広めのものが適します、皿巣で生活をするので高さもそれなりに必要です。

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さてさて、みなさんによく聞かれるのが「竹かごはメンテナンスが大変そう」という事、これだけカゴがあると休日には掃除に半日は費やすのですが、メンテナンス自体はステンレス製のカゴとそれほど変わりません。

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うちでは汚れた底板やカゴをがっつり水洗いしますけど、水に濡れると木が引き締まって、コマが刺さらなくなったりもします。でも、そこは素材との付き合い、しっかり天日に干してよく乾かす事で元の通りに戻ります。
たまに、粗悪な作りのカゴもあります、そう言うカゴは水洗いすると板が弧を描く程にひん曲がったりしますので、底板のしっかりしたものあるいは漆塗りのものがとても使いやすいです。

ちなみに、
竹には椿油を塗ってやるのが良いのですが、うちではそこまでの事はしません。ただ塗ってやった方が道具も長持ちしますし良い味が出ますけど、うちにあるのはそこまで高級なカゴではないので、鳥たちに汚してもらって、しっかり洗ってやって、使った分の風合いが年々増してくるのがとても嬉しいです。

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そして、何より良いところは壊れたら修理すれば良いところ。
実は「はなぶさ堂」の竹かごの殆どは、中古だったり貰ったものだったり…。
上の糞切り網は壊れたカゴを貰った時の物ですが、飼育用に売っている竹かごは大抵3mm程度の竹ひごで組まれている事が多いです。
なので、壊れても竹ひごさえ手に入れば修理が効くのです。
名人カゴなんかは結構細いひごを使って、中の鳥が鑑賞し易い様になっているものもありますが、飼育を考えるならば太めの方が安全です。

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折れた部分はペンチ等で引っ張れば抜けるので、そこに新しいひごを差し替えてやるのです。

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ほんの少しだけ長さが余る様に調節した新しい竹ひごを、しならせて差し替えてやります。

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ほらこの通り、真ん中の5本だけ新品になりました。
他の部分も同様、ひごは糊付けされている場合もありますが、大抵組んであるだけのものが多いです。
そんな所に先人の技術の高さを垣間見ますが、逆に粗悪なものは鳥が乗っただけでもひごが外れてしまう様なものもありますのでネット販売にはご注意。
だけど、こうして人が手を掛けて鳥たちの住まいを修繕してやれる事で、古い時代の職人とどこか意思の疎通ができる様な気持ちになります。

さてさて、おじさんの日曜大工のお話はこれくらいにして、竹かごのあれこれを紹介させてくださいね。

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こちらは「ます箱」ヒナの育成に昔ながら使われてきたものですが、正直「ふご」の方が使い易いので、最近ではめっきり見かけなくなりました…。

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実際にヒナを入れてみたのだけど、ちょっと狭かったかな…。
生まれたてのヒナにはちょっと寒そうなので、あったかい時期向きかもしれませんね?今は、具合の悪いヒナが出た場合の隔離カゴとして使っています。

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そしてこちらは、古い鳥屋さんから譲り受けた「背負いカゴ」。
名前から解る通り、この中に鳥を入れて何段かに重ねて、風呂敷で包んで背中に背負うのです。
車が無かった時代から引き継ぐ人間のアイデア、想像しただけで憧れてしまう鳥の行商人の姿を思うと、これを眺めながら一杯やりたいぐらいです…。

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中は2連になっていて、間仕切りもひごを抜く事で外す事ができる仕組み。
ああ、古い道具の実用性も兼ね備えたディテールの美しさ…、高さが無いのはきっと鳥が移動の際に暴れない為でしょうね。
天井が低いのでヒメウズラをこれで飼育していました。

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そしてこちらは「コンテストケージ」と呼ばれる小さなカゴ。
前と後ろの両方が開く仕組みで、カナリヤを品評会に出す人なんかが使うカゴなので、今でも普通に手に入ります。

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ただ、これは底板が外れないので飼育向きではないのです。
実際ヒメウズラの「うい(憂♂)」が今これに住んでますけど、散らかされた後はカゴを逆さまにして中身のお掃除です…。

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それから面白いのはこちら「落としカゴ」。
今はこんなもの売っても買う人いないのですが、野鳥を捕まえるためのカゴです。
上が開く様になっていて、止まり木につっかえ棒ができる仕組み。

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しかも、止まり木は回転式なので、中に餌を入れておびき寄せた鳥が、止まり木に止まると止まり木が回転してつっかえ棒が落ちて蓋が閉まる仕組み。
なんとも安直なアイデアに笑ってしまうけど、ここまで完成している仕組みに感無量でございます。

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そして最後に紹介したいのは、天井に網が張ってある「ヒバリカゴ」。
左は天井が低めの「寝かせカゴ」マス部分に高さがあって、そこに砂を敷いてヒバリを寝かせる仕組みなのだそうです。

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これの面白いところは、カゴの後ろに小さな顔出し窓があって、そこに猪口をかける様に作られています。
鳥はそこから顔を出してお食事をするのです。
これはヒメウズラに最適とうちではとても重宝しております。
鶉籠(ウズラカゴ)というものもあるらしいのだけど、それはそもそも鳴き声が良いとされていた、ウズラの為の専用カゴだと聞きます、未だ出会えていなくて残念です…。

この他にも、先人たちが作り出した日本古来の竹カゴはたくさんたくさんあります。
ヤマガラ専用に作られたカゴもあれば、水浴びをさせる専用のカゴもあったりと、どれをとっても江戸時代からの職人や鳥屋の技がそのまま残っている様で、それぞれのカゴの背景にある能書きがことごとく楽しく、道具と向き合う時間もまた鳥たちの短い一生を有意義にさせてくれるものだと感じるこの頃であります。


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竹で出来た鳥たちの小さなお家、
それは人と鳥とが一緒に作りあげてきた安心できるお家。


つづく

 

 

 

さて次回は、

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十姉妹にも文鳥と同じく、シルバーやクリームの子が居て、
久しぶりに十姉妹の事が書きたいかもしれません…。



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