先月のことだ。
明け方、大きな音で目が覚めた。
カーテンの隙間が光でチカチカしている。
ど、どした?!
ザッとカーテンを開けると、なんと、家の前に救急車が止まっているではないか?
え~?
壁時計を見ると、4時前だった。
オレ、死んだか?
それくらい寝ぼけるような時刻だった。
ワタクシと同時に目が覚めた伴侶に聞いた。
「なに?」
「となり!」
「となり?」
救急車はうちにとまっているぞ?
カーテンを顔の分だけ開けて首を突っ込んだ。
伴侶も同じように見ている。
救急車の赤い光がクルクル回っている。
光が当たるたびに、首を引っ込めそうになる。
確かにとなりのようだ。
2、3人のヘルメット姿が見える。
ストレッチャーが入っていく。
あっ、となりの人だ。
旦那?
あっ、また入った。
しばらくしてストレッチャーが出てきた。
台に乗っているのは小柄な感じがする。
奥さん?
娘さん?
ん?
娘さんが出てきた。
ストレッチャーの後に付いて、そのまま救急車の後ろに乗り込んだ。
後から旦那も出てきて、救急隊員に促されて、後ろに乗り込んだ。
ということは???
伴侶と目が合った。
奥さん?
え~~~~!
救急車はよせばいいのに、大きなサイレン音を立てながら走り去った。
ホッとしたのもつかの間、離れたところにいた消防車がなかなか帰らない。
加勢に来ているものとばかり思っていたが、何してる?
消防車ということは?
火事ではないのか?
これはただ事ではない!
確かめなければ!
「気をつけて!」という伴侶の小声を聞きながら玄関を出て、消防車に近づいて行った。
どえ~~~~!?
もう一台、見えない位置に救急車が止まってた!
さっきの救急車?
いや、ちがう!
さっきの救急車はサイレンが遠ざかるのを聞いたばかりだ。
救急車二台?
同時多発的?
こっちの救急車はもう運び込んだ後らしく、すぐにあかりを回し始め、さっきと同じように大きな音をたてて走り去った。
いつもより1時間も早く目が覚めてしまった。
あんなに大きな音と、あんなに明るい光の中で、うち以外誰も起きている気配がしない。
どうしたことだ?
寝たふりをしているのか?
それとも、死んだふりか?
救急車2台、消防車1台がいなくなった後は、またいつものように静かで、街灯だけが明るい空間に戻った。
ご近所で一夜に二人も亡くなったのだろうか?
ダイニングで新聞を読んでいた伴侶が「わ~今日はたくさん死んでいる!」と声を上げた。
お悔やみ欄を見たらしい。
「季節の変わり目だからな」とつぶやいたワタクシ。
季節の変わり目は人が亡くなる・・・
昔からそう聞いてきた。