鉄とプラスチックを精製することの困難さ

プラスチックで出来た筐体(機器をおさめている箱のこと)をつくるには、プラスチックをかたどる金属製の型が必要です。その金属製の型を製作するうえで、著者であるトーマス・トウェイツはインペリアル・カレッジ、ロンドンにて、2008年11月7日の金曜日、シリアーズ教授に相談するのですが、シリアーズ教授から厳しい指摘を受けます。

かつての鉱山では純度の高い鉱石を採掘することができましたが、現代の鉱山で取れる鉱石の内、鉄鉱石の含有率は1%にも及びません。1キロの銅を作るならば100キロ以上の鉄鉱石であるとシリアーズ教授は述べます。

そして、続けていうには、プラスチックを生成するのは難易度が高いので、プラスチックではなく金属製の筐体を持つトースターを作ってはどうかと提案しますが、見本として定めたアルゴス製の安いトースターの筐体がプラスチック製なので、あくまでプラスチックにこだわります。結果、自ら定めた制約を無理やり解釈し直すのですが、その話は後ほどご紹介します。

鋼鉄を手に入れる

「鋼鉄を作ることができれば、このプロジェクトは成功を約束されたも同然だ」と自分自身に言い聞かせながら、鉄を得るためには学生時代に習った朧げな知識だけではなく、リサーチと実際の行動が必要だと感じた彼は、ロンドンから近いイングランド南西部にあるクリアーウェル鉱山を目指しました。

後にトースターに使えるような鉄鉱石を採掘するのはそう簡単なことではないことが明らかになるのですが、鉱業所で電話対応してくださったレイ・ライトという男性は驚くべきことに、翌日筆者が鉱山に訪れることを了承してくれたのです。

簡単に迎え入れてくれたのは笑えるような理由で、「トースターを作りたいので、鉄鉱石を採掘したい」という筆者の声を鉱業所レイ・ライトは「ポスターを作りたいので」と勘違いし、写真撮影でもするのだろうと考えていたのです。

当初は、トンネルの壁から砕けやすそうな岩を掘ればよいと鉄鉱石の採掘を軽く見ていましたが(筆者はツルハシさえ持参していません)、実際に鉱山を訪れてその難しさを痛感します。鉱業所のレイ・ライト氏がいうところによると、採掘には専門の機械や技術が必要であり、爆薬も必要です。しかも、トロッコに乗って地中奥深くへ潜らなければならず、半日仕事でもありません。

半分諦めかけた筆者ですが、レイ・ライト氏にみっともないほどに嘆願すると、彼が数年前に採掘し展示されていたものの中からいくつか筆者に譲ってくださり、無事(?)鉄鉱石を手に入れることができたのです。

下図は鉄鉱石を精製する一場面。

プラスチックを入手する

プラスチックをつくるには、腐食性の過酸化物と高可燃性ガスを、安全弁を固定した圧力鍋で一緒に加熱するという工程が必要であり、これは本質的に爆弾を家で作っているのと変わりません。元々、作業には危険が伴うのに加えて、筆者はebayで圧力鍋を購入するのですが、その鍋をインドから送ってくれたナイスガイは、取扱説明書をつけ忘れていたので、安全弁が作動する圧力がいくつなのか分かりません。彼はこの方法を断念するしかありませんでした。

筆者がトースターを作るにあたって事前に相談したシリアーズ教授は、わざわざランチタイムを費やしてまで、二人の化学者と石油からプラスチックを生成する方法を議論してくださったのですが、両者が出した結論は不可能というものでした。

しかし、トースターの筐体にプラスチックは必要不可欠です。試行錯誤のうえ実現の可能性が一番ありそうだった、じゃがいものプラスチックは、結局固める段階でひび割れてしまいました。

最終的に彼は、「原材料からつくる」というルールの「原材料」とは何か?という定義を解釈し直してこの難局を乗り切るのでした。以下、本書の該当部分を引用します。

『ゼロからトースターを作ってみた結果』(新潮文庫)トーマス・トウェイツ 著 pp.125-126

歴史の時間

状況を整理しよう。原油はまず手に入れられそうにない。そして、みんなが忠告してくれたように、それをプラスチックに変えるのは、個人レベルでできそうな作業ではない。バイオプラスチックにしても同様だ。唯一、実現の可能性がありそうだったのは、じゃがいものプラスチックだったけど、結局固める段階でひび割れてしまった。

ならば、「原材料」として廃棄してあるプラスチックを拾ってきて、それを再加工してトースターの筐体を作るという案はどうだろう。いや、廃棄プラスチックは「原材料」とは言えないと考える人もいるだろうことはわかっている。でも僕の考えは少し違う。ちょっとした水平思考をしてもらえれば、プラスチックも原材料のカテゴリーに入ることがわかってもらえるはずだ。

以下、なぜ廃棄プラスチックが原材料と言えるのか、という「うんちく」が続いていきます。

ニッケルを手に入れるため禁じてを使う

著者はニッケルを手に入れるための複数の案を検討しましたが、それらはどれも実行不可能または極めて危険なものばかりでした。イギリスの既に閉鎖されたニッケル鉱山に侵入する案は、命を落とすか侵入できてもそれをブログにアップすれば逮捕されるでしょう。

シベリアのノリリスクのニッケル鉱山で入手する案、フィンランド北部で入手する案、どちらも、時間的な問題で学位を諦めねばならず、第一筆者にはお金もありません。

最終的に筆者は禁じてを使います。

カナダの造幣局が発行した99.9%純度のニッケルで作られた硬貨を溶かすのです。

カナダ王室造幣局カナダ通貨法11条1項にはご丁寧にも、「何人たりとも、財務大臣の許可なしに、法定通貨となっているコインを、溶かしたり、壊したり、通貨として以外に使用したりしてはならない。」と明記されていますが、他に方法はありません。

カナダの造幣局が2000年を迎える前の年に発行した毎月記念硬化(25セント硬化)を9.5カナダドル(約760円)で購入し、カンカンに熱して伸線機でワイヤーにしてしまったのです。

参考箇所

『ゼロからトースターを作ってみた結果』(新潮文庫)トーマス・トウェイツ 著 pp.43-45

 インペリアル・カレッジ、ロンドン
 2008年11月7日金曜日

シリアーズ教授が引き続き、難しい質問で僕を困らせていた……。

教授 その昔から、金属は、鉱山で採れた鉱石を製錬することで生み出されてきたわけだが、かつては極めて純度の高い鉱石を使っていた。現代ではそんな鉱石は存在しない。今の鋼鉱石の含有率は、基本的には1%以下だと考えておくべきだ。だから、1キロの銅を作ろうとすると、100キロ以上の鉱石が必要になる。相当な量だ。少しでも銅の含有量が高い鉱石を探すとなると……、そうだな……、フィンランドまで行かなくちゃならない。フィンランド北部だ。1週間かかる。そこで銅を手に入れてもち帰り、それを板金加工したのち、ハンマーで型にあわせて成型するわけだ。それで、トースターを覆う筐体ができる。

―いや、筐体はプラスチックがいいんです。

教授 いったいなんで?

―トースターっぽく見せるために。

教授 私は金属専門なんだがね。

―でも内部は金属じゃないですか。

教授 プラスチックの問題は、それが原油から作られてるってところにある。一筋縄じゃいかないぞ。青銅器時代の前にプラスチック時代がこなかったのはそれが理由だから。

―なるほど。

教授 でも、例えば家電屋でよく見かける、あのオシャレなトースター……、名前はなんて言ったっけな……。

―デュアリット・トースター!(デュアリット社製の高級トースター。磨きあげられたクロムによる美しい外観が特徴的)

教授 そうそう、それだ。ああいうのを作るんであれば、プラスチックは少なくて済む。代わりに金属がたくさんいるがね。

―じつはアルゴスの安いトースターを見本にしようと決めたんです。アルゴスのものにはプラスチックの筐体がついていまして。

教授 なるほど、筐体が必要ってのはそういうわけなんだな。わかった。でも、その前に考えなきゃいけないことはたくさんあるぞ。パンを焼くには、発熱体が必要だ。

―トースターの発熱体って、ニッケルとクロムの合金で作られていると聞いた、いや、読んだんです。それで探してみたら、ニッケルの鉱山がシベリアにあって……。

教授 いや、純度の高い石がとれる鉱山で、一番近いのはたぶんトルコにあるやつだ。でも何トンも必要だぞ。だから……、まあいい、発熱体に送る電気が必要になるな。

―銅線ですね。

教授 そうだ。あと、発熱体が炎上しないように、断熱材もいる。

―たしか、なんかの鉱物が使われてるはずです。

教授 そう、マイカだ。少なくとも、昔はそうだった。今もマイカを使っているのか、それとも別のものを使っているのかはわからないがね。

そんなわけで、どのようなトースターをどのように作るかが決まった。いよいよ作業開始だ。

『ゼロからトースターを作ってみた結果』(新潮文庫)トーマス・トウェイツ 著 pp.43-45

『ゼロからトースターを作ってみた結果』(新潮文庫)トーマス・トウェイツ 著 pp.48-52

鉱山のサンタクロース

「鋼鉄を作ることができれば、このプロジェクトは成功を約束されたも同然だ」

僕は自分にそう言い聞かせていた。

鋼鉄が鉄からできていることは知っている。また、「銑鉄」だとか、「鉱滓」なんて言葉を、学生時代に習ったという記憶も、おぼろげながらある。だけど、その程度の知識だけじゃ鋼鉄は生み出せない。リサーチと行動が必要だ。

年間生産統計をながめると、僕たちが使っている製品の鋼鉄の大部分は、中国で製錬されていることがわかる。そして、その原材料の鉄鉱石はオーストラリア、ブラジルなどの鉱山で採掘されているらしい(その2力国ほどメジャーではないにせよ、中国の鉱山からも多くの鉄鉱石がとれる)。ということは、僕の手元にあるアルゴスのトースターの鋼鉄も、そこからきたものだと考えられる。

だけど、残念なことに僕は、そのどの国にも住んではいない。だから、別の鉱山をあたらなくちゃいけない。

ロンドンからもっとも近い鉄鉱山はイングランド南西部、南ウェールズとの境にあった。距離にして223キロ離れている。グーグルによると、寝ず食わずで歩き続ければ46時問で到着するらしい。でも、僕は本当にラッキーで、誰かがすでに、そこまでの線路を敷いてくれていた。

まず僕は、鉱業所に電話して、訪問の約束を取りつけた。電話にでたレイ・ライトという男性は、僕の「トースターを作りたいから鉱山に行って鉄鉱石を取らせてくれ」というお願いを聞いて、ずいぶん当惑した様子だった。しかし彼は-驚くべきことに-あっさりと電話を切ることなく、翌日僕が鉱山を訪れることを了承してくれた。

このクリアーウェル鉱山は、はるか鉄器時代から、剣や鋤を作るための鉄を供給し続けてきた。第二次世界大戦終戦のあたりまでは、毎週数千トンもの鉄鉱石が採掘されていたそうだ。先ほど電話で話したレイも、ここが鉱業所として稼働していた時代から鉱山労働者として慟いていたという。しかし時代は変わり、クリアーウェルの洞窟や鉄鉱山は、今や観光スポットへと転身を果たし、レイも息子のジョナサンと一緒にその経営をしている(ちなみに、ここはグロースターシャー州の家族向け観光地大賞を2003年に受賞している)。

僕らは午後遅くに鉱業所にたどり着いた(「僕ら」とは、僕と、このプロジェクトに僕が引っ張り込んだ親友のサイモンのこと)。ついてすぐにわかったのは、レイが「トースターを作りたいので、鉄鉱石を採掘したい」という電話での僕の言葉を、「ポスターを作りたいので」と勘違いし、写真撮影でもするのだろうと考えていたことだ。

レイの名誉のために書いておくと、ポスターを作るというシナリオの方がトースターを作るというのより、よっぽどまともだ。

とにもかくにも、トンネルの壁から砕けやすそうな岩を掘ってやろうなんていう僕の甘いもくろみは、即座に崩れ去った(実際、僕はツルハシだってもって行かなかった。だって貸してくれると思ってたもん)。レイが僕にはっきりと言ったのは、採掘とはそう軽々しく考えるようなものではないということだった。削岩機や、爆薬も必要になる。しかも、半日仕事でもない。というのも、鉱業所内の作業場に行くには、トロッコに乗って地下深くへと、長時間移動しなければならないからだ。

がっくりとうなだれた僕は、旅が無駄だったのではないかと思い始め、空っぽのスーツケースでロンドンに帰ることを覚悟し始めた。しかし、それでもみっともないほどしつこく嘆願し続けるとレイはそれを聞き入れてくれ、黄山に僕らを連れて行き、もって帰ることができる鉱石を探すことを許可してくれた。

『ゼロからトースターを作ってみた結果』(新潮文庫)トーマス・トウェイツ 著 pp.48-52

『ゼロからトースターを作ってみた結果』(新潮文庫)トーマス・トウェイツ 著 p.54

というわけで、僕は実際に鉄鉱石を採掘しなかった。手にした鉄鉱石は、レイが数年前に採掘したものだった。ツアーの最後に、彼が展示品のなかから鉄鉱石を選び、僕にもたせてくれた。

『ゼロからトースターを作ってみた結果』(新潮文庫)トーマス・トウェイツ 著 pp.105-106

ともかく、プラスチックを作るには高圧で熱する必要があるということで、僕はebayで圧力鍋を購入した。だけど、その鍋をインドから送ってくれたナイスガイは、取扱説明書をつけ忘れていたから、安全弁が作動する圧力がいくつなのかわからない。

まぁ、一般的な圧力鍋と大して変わらないとするなら、だいたい1.5気圧くらいで作動するんじゃないかと考えられる。でも、それは必要な圧力の約10分の1だ。もちろん、安全弁を固定したらそれよりもあがるわけだけれど、安全弁は鍋が爆発しないように取りつけられているわけで………。

このシナリオはダメっぽい。

僕がやろうとしているのは、腐食性の過酸化物と高可燃性ガスを、安全弁を固定した圧力鍋で一緒に加熱する、ということだ。これは本質的には、爆弾を作っているのと同じだ。家庭用の電子レンジを1500度まで熱することも十分にバカげたことだけど、裏庭で家を木端微塵にしかねないものを作るのは、その比じゃない。

シリアーズ教授は、プラスチックを甘く見るなと僕に警告していた。彼はわざわざランチタイムを費やしてまで、二人の化学者と石油からプラスチックを生成する方法を議論してくれたみたいだけど、両者とも結論は「無理」つてことだった。

でもトースターのプラスチックの筐体を作ることは、僕にとっては不可欠だ。

まあとにかく、やってみるしかないさ。まずは重要なことを片づける。とりあえず、石油を手に入れなくちゃ。

『ゼロからトースターを作ってみた結果』(新潮文庫)トーマス・トウェイツ 著 pp.105-106

『ゼロからトースターを作ってみた結果』(新潮文庫)トーマス・トウェイツ 著 pp.125-126

歴史の時間

状況を整理しよう。原油はまず手に入れられそうにない。そして、みんなが忠告してくれたように、それをプラスチックに変えるのは、個人レベルでできそうな作業ではない。バイオプラスチックにしても同様だ。唯一、実現の可能性がありそうだったのは、じゃがいものプラスチックだったけど、結局固める段階でひび割れてしまった。

ならば、「原材料」として廃棄してあるプラスチックを拾ってきて、それを再加工してトースターの筐体を作るという案はどうだろう。いや、廃棄プラスチックは「原材料」とは言えないと考える人もいるだろうことはわかっている。でも僕の考えは少し違う。ちょっとした水平思考をしてもらえれば、プラスチックも原材料のカテゴリーに入ることがわかってもらえるはずだ。

近年、地質学会では、新しい時代-「人類の時代(アントロポセン)」-の幕開けを宣言すべきか否かという、激しい議論が行われている。毎年新しい時代が始まるわけではない地質学の世界では、これは一大事だ。

世界の地質は人間の手によって大きく変化しており、ゆえに、そうした際立った変化がみられる産業革命以降の時代を「人類の時代」と称し、他の地質学的な時代区分から差別化して考えよう、というのがこの議論の出発点だ。

遠い未来の地質学者たちが現代の地層を調べたとすると、多くの種の化石の消滅、放射性物質の急激な増大、「新たな分子」の出現、といった変化を検知するだろう。そして、その「新たな分子」の正体は、僕たちが廃棄した(ポリプロピレンなどの)化学製品だ。ということは、遠い未来、地中のプラスチックのかたまりも、鉄鉱石などの岩と同列のものとしてとらえられることになるはずで、つまり「人類の時代」においては、それを「採掘」したとしても、ルール上、問題ないということになる。

ええ、ルールの拡大解釈だということは認めますけど、そのルールは僕が作ったものだから、僕が破りたかったら破ってもいいんです。

『ゼロからトースターを作ってみた結果』(新潮文庫)トーマス・トウェイツ 著 pp.125-126

『ゼロからトースターを作ってみた結果』(新潮文庫)トーマス・トウェイツ 著 pp.163-167

ニッケルを取るか、命を取るか

タルビバーラまで行ってくるのも悪くない選択肢のように思えてきた。グーグルによれば、ロンドンから車を36時間飛ばせばそこまで行けるみたいだし、ちょうどオーロラが見えるシーズンでもある。でも、学位発表会でトーストを焼くまでに、僕には2週間しか残されていなかった。そして銀行口座の残高はマイナス域に突入していた。

僕に残されている選択肢を整理してみよう。

A案。イギリスのニッケル鉱山(だった場所)に侵入する。

ただし、この選択肢にはジレンマがつきまとう。というのも、僕はただトースターを作っているわけじゃない。それを記録して、読者に伝えなくてはいけないんだ。

あれほど頑丈な鉄格子を設けて、人の出入りを禁じているニッケル鉱山に突入して えられる結果は2通り。

・無事、ニッケル鉱石を手にして帰る。
・鉱山内で死ぬ。

いずれのパターンでもヽそれをブログで報告することはかなわない。前者の場合だと、そのことをネットで発表なんかした日には、不法侵入の罪で逮捕されるだろうし、後者の場合は……、言うまでもないよね。

B案。シベリアに向かい、ノリリスクのニッケル鉱山に行く。

この場合、時間的な問題で、僕は学位をあきらめなければならないだろう。そして、立ち入り禁止区域に侵入したことで、ロシア警察に逮捕されることになるはずだ(罰としてニッケル鉱山での強制労働を命じられたりしたら笑うけど)。第一、そんなお金はない。

C案。バンを借りてフィンランド北部までドライブ。

ついでに、オーロラを拝むこともできる。ただ、この案でも学位発表会は欠席することに。あと、何回も言うけどお金がない。

正直なところ、3つのオプションのどれもが魅力的でもなければ、可能でもなかった。もう少し長生きするためにも、僕は死なずにニッケルを手に入れられる別の方法を模索することにした。

カナダ万歳! ebay 万歳!

程なく僕は、カナダの造幣局が2000年を迎える前の年に、毎月記念硬貨(25セント硬貨)を発行していたことを突き止めた。その12枚の硬貨は99.9%の純度の二ツケルでできているという。

すごく……魅力的です。その12枚のうちの11枚が揃ったセットが、eBayでたったの9.5カナダドル(約760円)で売られているのを見つけちゃったもんだからなおさらに。

ただ、これを使う場合でも、危ない橋をわたらなくちゃいけない。というのも、カナダ王室造幣局カナダ通貨法11条1項にはご丁寧にも、何人たりとも、財務大臣の許可なしに、法定通貨となっているコインを、溶かし
たり、壊したり、通貨として以外に使用したりしてはならない。

と、明記されている。その不正は意図にかかわらず罰せられるとも。

だけど、時間もお金も他のアイデアももちあわせていない僕に、他の選択肢が残されているようには思えない。ああもう、どうにでもなれ。僕がカナダに行かない限り、カナダの騎馬隊にとっ捕まえられる心配をする必要がどこにある!

というわけで、僕は手に入れたこいつらをカンカンに熱して伸線機でワイヤにした。

はい、ニッケル・ワイヤの完成!

『ゼロからトースターを作ってみた結果』(新潮文庫)トーマス・トウェイツ 著 pp.163-167

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