(12月14日・サントリーホール)
小林愛美のショパン「ピアノ協奏曲第1番」は素晴らしかった。ショパンその人が語りかけてくるような密やかなメッセージが伝わってくる。
会場は小林人気もあり完全に満席だが、まるでショパンと自分が二人だけで向きあい会話をしているかのようなパーソナルな雰囲気が漂う。おそらく、聴衆一人一人が同じような思いを抱いて聴いていたのではないだろうか。
小林愛実の音色は何と美しいのだろう。ガラス細工のように繊細で煌めくような音。その一つ一つに命が宿り、輝いている。特に第1楽章と第2楽章が絶品だった。
モーツァルトの音楽に重なるような純粋さと哀切、真っ青に透き通った冬の日の空を思わせるものがある。
高関健と読響の演奏がまた良かった。第2楽章のファゴットも小林愛実に合せ弱音で吹くなど小林にぴたりと合せる繊細な演奏を展開した。
小林のアンコールは、先日東京芸術劇場で聴いた「反田恭平VS小林愛実」の日と同じく、ショパン「前奏曲Op.28第17番変イ長調」。
前半1曲目は高関読響によるモーツァルト「歌劇《イドメネオ》序曲」。モーツァルトにしては少し重い。
後半のプロコフィエフ「交響曲第5番」は、スコアに徹底的に忠実な高関の面目躍如たる演奏。細部まできっちりと描かれた。ただ、個人的には2020年に聴いた原田慶太楼と東響のようなプロコフィエフの音楽が持つ切れの良さ、わくわくするような高揚感が味わえなかった。高関はそれとは異なる解釈で臨んだのだろう。読響の力を最大限活用した鮮やかな演奏であったことは確かだ。
2020年9月13日原田慶太楼指揮東響 プロコフィエフ「交響曲第5番」のレヴュー
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