いつもなら素人の私が歌集を読んで思ったことを気ままに綴るのですが、今回は違います。
短歌講座の先生が上梓された歌集を講座生全員が読み、好きな10首を選歌し、講座で発表しました。
それが10/8のブログの続きというわけで、(ちょっとだけ特別版2) のはじまり、はじまりぃ……
あ、断っておきますが、この件は講座生の提案です。決して先生からの強制でも、お願いでもありません。
「どやっこのうちらの自主性は」
今回9名出席。一人10首の選歌のうち1首づつをアップしますので、お時間のある時に読んでね。
〇 ● 〇 ● ○
なみの亜子 『そこらじゅう空』 第五歌集
2021年4月20日 砂子屋書房 発行 373首(2015~2020年)
〇 ● 〇 ● ①
田の水に雨後のひかりは列ほぐし思い思いに向く苗を見す
KAWAちゃん 選…細やかな目線の情景描写がすき。
ライカの一言…きれいな並びのはずの苗がえらいこっちゃになってるぅ。光が美しい。
〇 ● 〇 ● ②
絶望の記憶は不思議な発光に白みをはなつわが脳の辺に
えっちゃん 選…あじわったものしか歌えない。
ライカの一言…例えばすごいショックを受けた時、頭が真っ白になるみたいなのかな?
〇 ● 〇 ● ③
木の橋をとんとん音たて渡りたし草のあいだを水は光りて
KUNIちゃん 選…楽しいけどサラッと柔らかく歌ってる。
ライカの一言…生き生きしてて元気な様子がうかがえる。
〇 ● 〇 ● ④
かろうじて乾けるタオルに冬風のにおいはしたりさむい白いろ
トンちゃん 選…寒くて乾きにくい感じがでてる。
ライカの一言…「さむい白いろ」のところ、わかるわかるぅ。
〇 ● 〇 ● ⑤
さよならに音量のあり 坂道を降りきったとき「うん」と言いたり
UEさん 選…坂道を降りきるまでは地獄だったのではないかな?
ライカの一言…坂道を降りきるまではずっと「さよなら」が頭に残ってたのかな?
〇 ● 〇 ● ⑥
二十七と九十三がたいせつで母は母の世に数え続ける
きょんべぇ 選…なぜ27と93が大切なのか謎です。知りたい。
亜子先生… 私も知りたいです。母はアルツハイマーでずっとこの数字を言ってました。
ライカの一言…3の倍数だけ変な声を出したりして。
〇 ● 〇 ● ⑦
山に向き犬はただしく座りおりほどけたなびく雲間の山に
TAーちゃん 選…犬がキリっとただしく座っている状況が浮かぶ。
ライカの一言…犬にも矜持があるんやろうなぁ
〇 ● 〇 ● ⑧
母逝けばむすめはむすめをやめていい時にすずしく思い出し泣く
ぴろ吉さん 選…私の母が逝った時、「むすめをやめさせられた」というか、「もうむすめでいられなくなった」という感じだった。もっとむすめでいたかったのに。
ライカの一言…ぴろ吉さんの「もっとむすめでいたかったのに」がまた、せつない。ぴろ吉さんは女性です。
〇 ● 〇 ● ⑨
気の抜けたボールひろいてその後をひろた君というボールに遊ぶ
ライカ 選…悲しく、辛い歌が多い中で、先生独特のユーモアで自分を楽しませているところが好き。関西では「拾った」ことを「ひろた」とも言います。
亜子先生…「もらった」ものを「もろたくん」とかいいます。
〇 ● 〇 ● ⑩
老い犬を川に浸からせ見るともなく見ればそこらじゅう空だらけなり
タイトルの歌。
〇 ● あとがきより(かなり省略させていただきました。)
障害を負った夫や老いた両親、大型犬二頭の世話、介護、看取り、送別でいっぱいいっぱいになった。略。
ふと気がつくと、身のまわりがなんだかすうすうしてそこらじゅうが空だ。略。
しんどい時、うたうことは、ほんのかすかでも自分が自分の感触を取り戻すことだった。くたびれ果てて心を病み、自分が生きて息をしていることに耐えられず泣いてしまう、という時にも。私に歌があったことを、……ありがたく思う。
本日もお越しいただきありがとうございました
今回は先生への理解と講座生への理解が深まったように思います
私は犬は怖いものだったのに、ちょっと見方がかわってきたかな?