KyojiOhnoのブログ

作曲家、編曲家、ピアニストそして製作会社の経営者ですが、ここでは音楽以外の社会一般のことの雑感について書きます。

「青天を衝け」最終回終了 一年間見ての感想 渋沢栄一の合本主義とSDGs

最近ネットやSNSで歴史関係の記事等が増えていることもあり、大河ドラマ、歴史ドラマに関する記事が減っていますが(汗)とりあえず今日は一「青天を衝け」の視聴者として単純に一年間見せてもらった感想を書きます。

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まあネットによくあるドラマの内容を重箱の隅をつつきまくって「あそこは史実と違う」なんて掘り出すような野暮なことはいいません(笑) 。そもそも大河ドラマは歴史のシミュレーションではないので、脚色や演出その他の要素が全くないはずなどありえないということはちょっと考えればわかるはずなので、史実と違うところを探して「知らない人が鵜呑みにしたらどうするんだ」みたいなことを言う人がいますが、あえていわしてもらえればそういう方は歴史ドラマなど見ない方がいいでしょう。永遠に「史実に完璧」なものなどあるはずがありませんから、

それでも今回の「青天を衝け」渋沢栄一が91歳という当時としては異例の長命だったこともあり、幕末だけでなく昭和初期まで入ってしまうわけで比較的確かな史料等はある方だと思います。これが戦国時代どころか平安、鎌倉時代となれば信頼できる史料を探すだけで一苦労ですからね。

それらを踏まえて申し上げますが、今回の「青天を衝け」私はドラマとしてよくできていたと思います。一回ごとのツボをきちんと押さえて人間ドラマとして描ききったと思いますので私は一年間楽しませてもらいました。しかもドラマとしてだけでなく、今の日本が必要としていること、考えなければならないことがふんだんに盛り込まれているように思いました。演出もなかなか良かったと思います。

今回の大河ドラマのポイントは主役が経済人ー実業家 であること

このようなパターンは過去あったでしょうかね?ちょっと記憶にありません。

しいて言えば昭和52年の「黄金の日々」ー呂宋助左衛門、くらいですかね?それくらいしか思いつきません。もっとも「黄金の日々」は舞台が戦国時代なので今回の「青天を衝け」とはだいぶ事情が違います。

www2.nhk.or.jp

私は一応リベラルを自認していますが、いわゆる左翼系(この言葉はネトウヨみたいなので使いたくないのですが) 経済人=悪、的なニュアンスでとらえる人には批判的です。まあ正直リベラル系にそういう人が少なくないのも事実です。実際リベラル系の活動家で経済人、事業家と席を同じくすることに抵抗を示す人間を私は知っています。しかし経済人、実業家というだけで悪、などと決めつけるのは、日本共産党共産党だから中国や旧ソ連一党独裁を支持する、と決めつける一部保守の人と本質的に変わらない気がします。

考えてみて下さい。日本共産党の志位委員長が何度も中国共産党を批判し「中国共産党共産党の名に値しない」と繰り返しいっています。では名前が同じだというだけで同類視する人が絶えません。同様にイギリスの労働党北朝鮮朝鮮労働党は同じなのか、という議論と同じです。少し考えればバカげた決めつけであることがわかります。

 

渋沢栄一についてはいろんな評価をする人がいるでしょうが、やはり利益一辺倒の実業家ではなく、私益よりも「公益」を重要視している点がポイントだと思います。渋沢栄一は一部特定の人々の利益を求める閥を成すことを嫌い、広く国民全体が豊かになる事を希求した「合本主義」を目指しました。ドラマでも何度もこの言葉が出てきました。合本主義とは公益を追及するという使命や目的を達成するのに最も適した人材と資本を集め事業を推進させるという考え方で私益のための資本の集中では無く、公益の追及、より良い社会の実現のために、資本や人材を合わせる事の重要性を説いたものということができます。

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実はこの考え方こそ今の日本に必要なものである、と考えます。なぜならこの合本主義はある意味世界で新たな経済政策としてトレンドとなりつつあるSDGsに通じるものだからです。

SDGsとはご存じの通りSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称でSDGsとは17のゴール・169のターゲットから構成されていますが、大きくわけると

1) 貧困の撲滅ー誰一人取り残されない社会

2) 持続可能で無理のない生産目標、レジリアンス

3)  安価かつ信頼できる持続可能なエネルギー政策を始め環境への配慮、有害物質の排除

4) ジェンダーおよび人種、肌の色による差別と多様性(デイバーシテイ)の推進

5)富の分配等を始め持続可能な経済システムを構築

ここで1)3)5)は私は渋沢栄一が推進しようとした合本主義に通じるものだと考えます。渋沢栄一は巨万の富を得ながら生活困窮者を救済する養育院を自費で運営していたのはドラマでも描かれたとおり。貧困を撲滅し「公益」によって誰一人取り残されない社会を目指していたと思います。

しかし日本ではいまだ「弱者切り捨て」を正当化する新自由主義が主流になっており、とりわけ経団連をはじめとする大企業の経営者はいまだに新自由主義政策を支持している向きが強い、といっていいでしょう。

それらが自民党や維新の会をはじめとする支持を支えていますが、その関係でかけ声とは裏腹に日本はSDGsの面で世界から大きく後れをとっております。

いまだ昭和の発想から抜け出せない日本の経済人が大多数、それを見ると太平洋戦争以前に生きた渋沢栄一の方がはるかに時代を先んじており、まさに渋沢の合本主義こそが日本ならではのSDGsにつながると考えるのは私だけでしょうか?

日本人同士で話しているとわからないかもしれないですが、日本の外では今ドラステイックに価値観が変化しています。

正直大多数の日本人はそれに気づいていませんし、理解もできていません。

しかし渋沢栄一の生き方はこれからの経済リベラリズムを考える際に大いに参考になるのではないかと考えます。

その意味でよくぞこのドラマを企画し、一年間続けてくれたと思います。

NHKは政治の報道に関してはいろいろ問題はありますが、ドラマ制作の方は頑張っているといっていいでしょう。

一年間楽しませていただきました。

ありがとうといいたいです。

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