徒然草紙

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『王権誕生』日本の歴史02 寺沢 薫

2020-08-23 11:41:28 | 読書
寺沢薫氏の『王権誕生』を読みました。講談社学術文庫版日本の歴史の第3巻にあたります。
 
青銅器の祀られ方を中心にして畿内に日本初の王権が誕生するまでの歴史を描いています。
 
日本の古代社会が一つにまとまっていく過程で起きたのは戦争でした。否、戦争によって特定の集団が力をもつようになっていったのです。稲作が広まり、それを支えるインフラが整備されていくにつれて、よりよい環境を求めて争いが始まります。それまで、単なる部族間の抗争にすぎなかったものが戦争という大規模な戦いに発展していったのです。
 
それにともなって銅鐸に代表される青銅器の祀られ方も変化していきます。部族内での儀式に使われていたものが敵対する相手を倒すための道具となっていったのです。具体的には青銅器のもつ呪力を利用して自らの勢力圏を防衛するため、敵対勢力との境界に銅鐸を埋めることが行われるようになりました。
 
やがて青銅器の祀りは墳丘墓にとって代わられることとなります。当時、倭国の中心勢力だった九州北部のイト倭国が後ろ盾としていた後漢王朝の衰微によって影響力をおとしていくにつれて周辺の国々が力を持ち始めたのです。
 
それらの国々は青銅器の祀りに代えて墳丘墓を作るようになりました。カミの依代として青銅器の代わりに墳丘墓を使うようになっていったのです。中国大陸からもたらされる舶来文物の象徴としての青銅器に対抗したものといえるでしょう。
 
以後、日本では墳丘墓が権力者の力を誇示するものになりました。墳丘墓に葬られる首長の神格化が進み、単なる一部族の守り神からその部族を中心とした勢力圏全体の守護神へと変貌を遂げたのでした。
 
この流れのなかで近畿圏を中心にした統一王権が誕生することとなります。
 
 
日本の王権は中心者の神格化によってなされました。この現象は世界でもほぼ共通のことでしょう。私が興味深く思ったのは、日本ではこの形式が現在もなお営々と続いていることです。新天皇の即位に際して行われる大嘗祭は古代社会で行われた儀式に則っています。
 
太古の昔に成立した儀式がそのままの形ではないにしろ残されている国は世界中にいくつあるでしょうか。しかもその国は世界の主要国家の一つなのです。
 
人によってとらえ方は様々だと思いますが、個人的にはこういった形式を残している日本国に誇りをもちたいと思います。

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