「今何時」会いに行くたび尋ねらるビル壁迫る姑の病室

 

 

 

父、母、義父、義母、私の四人の親。

最後に逝ったのが義母、すなわち姑。

この人は性格は優しく、とても賢い人だった。

しかし、悲しいかな晩年は認知症になった。

施設で暮らしていたが、ときに病気になる。

その時は病院にお世話になる。

 

普段、施設には夫が面会に行く。

私が行くより嬉しいのではないかと思い、

そして母思いの夫もそうしたいようだった。

しかし、病院に行くのは私。

諸々の手続きや様子を見に行った。

 

最後に入院した時の病室の窓が残念な仕様だった。

せっかくの窓の外が隣の病棟の壁が迫る作りだった。

認知が進んでいたとはいえ、あまり光が入らず、

「今何時? 暗いから夕方?」

と聞く姑に切なくなった。

帰るまでに何度も何度も聞くのである。

私が誰だかわからないだろう姑とは

話も進まず、結局「今何時?」に終わった。

その姑も鬼籍に入って早二年経つ。

 

 

 

 

 

参加しています。
 
俳句・短歌ランキング