住友化学、1050億円下方修正 23年3月期最終損益ゼロ

住友化学の業績下方をあんまり相場全体に当てはめるのは正しくないと思う。

先週発表された住友化学の業績下方修正の金額の大きさに一部株クラがツイッターでわあわあ騒いで、すわ世界経済崩壊みたいなところまでつなげる論説を言う人もいる。
しかし、個人的には数字だけ見て、つぶさに細かい状況を見ていない浅はかな論説だと思っている。
まず、住友化学の業績を理解するにはグローバルな基礎化学品セクターの動向がどうなっているのか知っていなければいけないわけで、そこまで推察は簡単ではない。
では具体的にどういった認識をこの住友化学の下方修正から考えなければいけないのか書いていきたい。

グローバルな基礎化学品セクターというのは、他のシクリカルセクターと比べて供給の絞り込みが遅れていることを念頭に置かなければいけない。
これはここ1-2年で大きく株価が上昇した海運や石油関連、これから株価上昇がありそうな鉄鋼とは大きく異なる。
まずこうした量産型シクリカルセクターはリーマンショック前までこの世の春で、調子こいて設備投資を続けていたことに加えて、中国が過剰な投資をしてしまったために、持続不能な需要速度に合わせる形で供給を増やしてしまった。
しかし、ご存じのようにリーマンショックでこの夢を潰えてしまったために、その後は需要に対していつまでたっても過剰供給が収まらないという形で、関連商品市況はまさに地獄を見るような水準で推移し続けた。
この海運・石油・鉄鋼というのは2011-2020年の間に参加プレイヤー全員がのたうち回るレベルで赤字や低利益水準を叩き出し、企業によってはもう倒産しかないという状況にまで追い込まれた。
しかし、これによって誰も新規での設備投資をしなくなったり、あるいは古い設備をどんどんスクラップすることを進めたために緩やかに需要が増加する中で、供給が絞り込まれていった。
そして2020年から始まったコロナバブルによって一気に需給ミスマッチがプラスの方向に働き、設備投資が進まない中でそう簡単に供給は増えないだろうということで、一気に関連商品市況が上昇したことによって大きな株価上昇となった。

一方で、基礎化学品セクターは実は供給が絞り込まれていないのである。
このセクターが不思議なのは、欧州でも米国でも中東でも中国でも粛々と設備投資が進められていて、誰も設備投資を縮小させた気配がないのである。
もちろん投資規模事態を縮小させるという動きは一部見られた時期もあったが、先ほど挙げた海運・石油・鉄鋼のような強烈な絞り込みは行われなかった。
これによって、基礎化学品セクターというのは、シクリカルセクターの中でも需給ギャップはさほどないセクターとなっており、かつ足元の先進各国の強烈な金融引き締めによって需要が欧州中心に弱っていることから、基礎化学品市況が弱く推移してしまっている。
住友化学は化学セクターの中ではとりわけこの基礎化学品セクターへの事業依存度が高く、特にサウジアラビアのラービグが毎回のことながら足を引っ張る展開となり、個人的には下方修正幅の大きさは想像以上だったが、まあそりゃそうだろという感想であった。
その他住友化学は農薬セクターも市況品だし、液晶関連への利益依存度も高くてここが減速していることも業績の足を引っ張っている。
さらに子会社の住友ファーマではラツーダという米国事業の売り上げ半分以上を占めている薬が特許切れを迎える中で、まだこの穴埋めとなる薬が見つかっておらず、ここも安定収益であった医薬が落ち込む原因としても段々と逆風が強まりつつある。

そうじて言えば、住友化学の業績予想はそもそも最初からやや甘い見通しであったことは否めず、かつ化学セクターがきちんと供給絞り込みができていないという特殊要因がかなり影響していることが窺えるわけで、供給が絞り込めているセクターとそうでないセクターの状況はかなり異なると認知して投資判断をしていかなければいけないと思う。

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